寺島文庫リレー塾①「新しい世界認識の視座ーーコロナ後の全体知」

寺島文庫リレー塾①「新しい世界認識の視座ーーコロナ後の全体知」。

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・専門知。総合知(専門知の集積。認識力。AI)。全体知(課題解決に必要。美意識、宗教)。

・コロナ1年3か月。政策科学になっていない。進展なし。リーダーの沈黙。コンテンツ、メッセージがない。国際連帯税(グローバル化のリスク対応)。航空連帯税(14ヵ国)、金融取引税(株0.2%。為替0.005%)。デジタル課税(仏で2019年導入)。米の保険制度で副反応100万ドル(75セント負担)。

・なぜ国産ワクチンができないのか。1992年問題。種痘の副作用をめぐって裁判で負けて行政や製薬企業は国産はやらないことになった。IPS細胞のノーベル賞再生医療に集中してしまった。ベトナム、インド、イスラエル、中国、ロシアなどはできている。日本は早くとも来年末。次の感染症のための高度安全実験施設(BSL4.。エボラ、天然痘など)は村山と建設中の長崎大のみ。世界には24ヵ国59施設(欧24、米16、他19)。日本にはあと数カ所必要。

・なぜコロナ病床は増えないのか?民間病院の団体である日本医師会は受け入れない。政治の出番のはず。ここを説明していない。沈黙。

・日本の埋没とアジアの世紀の現実化:ごまかしと断片報道という情報環境。健全な危機感がない。コロナが本質をあぶりだした。IMF世界経済見通し。2020年▲3.3%(中国∔2.3%)。2021年予測は上方修正、世界6.0%。米国6.4%。バイデンの1000日を評価。ワクチンは公約の60日1億人を達成し2億人に迫る勢い。財政出動第5弾200兆円(年収8万ドル以下に15万円支給)、コロナで650兆円投入。財源を議論。法人税増(35、21%を28%に)、株などのキャピタルゲイン課税も。日本の10万円支給は8割は貯金。赤字国債を日銀が購入。後代負担。東日本大震災も37兆円は復興特別税(25年刊禅の国民2.1%)と同じ。中国:8.4%予測。格差と貧困。6億人の貧困。

・日本:2020年▲4.8%、4月予測3.3%。2020年で2013年に戻った。2021年も水面下。日本のGDPの世界シェアは1950年3%、1988年16%、2000年14%、2020年6%、2030年4%へ。2020年:日本6%、アジア25%、米25%。貿易相手国:2020年は米14.7%、中国23.9%、アジア54.2%。大中華圏26.5%。(1990年:米27.4%、中国3.5%)。「アジアの世紀」の現実化。アジアダイナミズム。

・1900年漱石はイギリスの世紀の終りを目撃(ビクトリア女王の葬儀)。2000年:2001年の「9・11」でアメリカの世紀の終りを目撃。2010年:2011年の「3・11」東日本大震災アベノミクスという調整インフレ政策は失敗。2020年:「3・11」から10年。37兆円投入。1次産業▲34%、2次∔29%(建設・製造。ハードインフラ投資。)、3次∔6%。人と産業は戻らなかった。広域東北6県の基本構想がなかった。人口は2015年から2045年までで3割減少する。日本は戦略企画力が弱い・復興庁、デジタル庁、子ども庁。組織論は愚かな回答。

・なぜ日本は埋没したか? 2つの象徴。「MRJ国産中型ジェット機開発の挫折」。2008年から。部品などの要素は一流だが「総合エンジニアリング力」がダメだった。全体で解決していく力。米の型式証明が降りない。「国産ワクチンがつくれない。ポテンシャルはあるが完成体がつくれない。2つともパーツの積み上げだけではだめで、「全体知」が必要だ。

・DXの時代:GAFAMは2019年末の時価総額4.9兆ドル、2021年1月に7.4兆ドルに増加(アップリは2兆ドル)。BAT(バイドウ・アリババ・テンセント)は1.0兆ドルから1.6兆ドルへ。日本の日立4.2兆円、日鉄1.1、東レ1.1、重工1.0(リクルート9兆円、オリエンタルランド5.9兆円)。医療を売った東芝半導体をうればドンガらのみになる。データリズムの時代。医療・防災産業など新産業を育てる。

・産業資本主義(400年)。金融資本主義(金融ビジネス。FinTECH、仮想通貨、異常な株高)。デジタル資本主義(軍民転換から始まったIT革命。DX.GAFA.データリズム)、これに国家資本主義(過剰依存)の4つの資本主義の関係をどう考えるか。そしてニュールール(金融取引税、デジタル課税など)をどうつくるか。新しいマルクスケインズが求められている。

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午前は立川:体を整える。

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一浴一冊:・瀬戸内寂聴「寂聴 九十七歳の遺言」(朝日新書

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安部晋太郎「オレは岸信介の娘婿はじゃない。安部寛の息子なんだ」

安倍 晋太郎(あべ しんたろう、1924年大正13年)4月29日 - 1991年(平成3年)5月15日)は、日本の政治家。

終戦後、改称された東大法学部に復学、卒業して毎日新聞社に入社。1982年、総裁予備選で中曽根康弘河本敏夫に次ぐ3位。中曽根内閣で外相を務め、竹下登宮沢喜一とともに次世代のリーダーとして期待された。農林大臣、官房長官通産大臣外務大臣自民党国対委員長自民党政調会長自民党総務会長、自民党幹事長を歴任した。1987年の総裁びでは中曽根裁定で竹下に首相の座を譲る。衆議院議員安倍寛の長男。岳父に岸信介、義理の叔父は佐藤栄作、次男は安倍晋三である。

『総理になれなかった男たちーー逆説的指導者論』(小林吉弥)という面白い本がある。石田博英―「一匹狼」の限界。大野伴睦―「義理と人情」のもろさ。緒方竹虎―「未知数の魅力」の幻想。川島正次郎―「ナンバー2」の恍惚に埋没。河野一郎―敵をつくりすぎた男。椎名悦三郎―「省事」が情報を遠ざけた。灘尾弘吉―高潔「覇道」を拒否。藤山愛一郎―「下積み時代」を持たなかった。保利茂―「密室型演出者」の自覚。前尾繁三郎―「根本主義」から抜け出せず。松村謙三―反骨と進歩性は「少数派」の宿命。三木武吉―稀代の謀将は「変幻自在の処世術」。そしてトップに挙げているのは、安倍晋太郎―ついて回った「脇の甘さ」だ。「プリンスメロン」とも呼ばれる甘さを指摘している。その他、副総裁の渡辺美智雄二階堂進、総裁をつとめた河野洋平谷垣禎一などの名前が浮かんでくる。

青木理『安部三代』(朝日文庫。2019年4月刊行)を読んだ。日本の政治は、もはや『家業』と化してしまったのか」で、このルポは始まる。安部晋太郎はリベラリズム、現場主義、絶妙なバランス感覚を持っており、特に接した人が異口同音に「バランス」という言葉を使った人がらだ。最後はリクルート事件に遭遇するという不運に見舞われ、またガンという病魔に犯されて総理の座はつかめずに1991年に67歳で世を去った。「頑張ったしなぁ、ここまでこれたのになぁ」と淡々と語っていたという証言も紹介されている。

最後の「解説」で東工大教授の中島岳志は、安倍晋三のルーツをタ丹念に探った本書で、野党時代に右派イデオロギーに接近する晋三の姿を明らかにした功績を評価している。晋太郎は「オレは岸信介の娘婿はじゃない。安部寛の息子なんだ」が口癖だった。戦時中に戦争に反対した父親の寛を誇りにしていた。その志を継いだ安部晋太郎は、リベラル保守の政治家として大成していく。

中島がいう「リベラル保守」とは、寛容と自由を基盤に置き、「大切なものを守るために変わる」政治思想である。改革への可能性を掲げ、自らも変わることを恐れない立場だ。「大切なものを抱きしめる」保守でも、「自由」を標榜し革新を唱えるリベラルでもなく、寛容な保守、変化する保守とでもいうのだろうか、そのリベラル保守政治家のモデルと中島はみている。二代目の安部晋太郎はその真価を存分には発揮することはできなかったが、その政治もみたかった気もする。それは長期政権を実現した三代目の安倍晋三とは違った姿になっただろう。

 

安倍三代

安倍三代