雑誌『世界』2023年1月号ーー「戦後民主主義と安倍政治」

雑誌『世界』2023年1月号。

寺島実郎『脳力のレッスン』247「戦後民主主義と安倍政治ーー資本主義と民主主義の関係性(その5)。

以下、重要な論点。

「旧統一教会問題の本質ーー戦後日本の歪み」

  • 統一教会問題の本質は、その宗教団体の「反社会性」よりも「反日性」にある。
  • 愛国を基本理念にする保守政治が、外国の反日団体と手を携えてきた現実に衝撃を覚えざるをえない。

「戦後史の中で再考する安倍晋三

  • 原体験、、、「デモは不逞の輩」とする固定観念に陥ってしまったのが、この人物の特性といえる。
  • 「頑なさ」と「危うさ」が同居した人物(例、野上忠興安倍晋三 沈黙の仮面』小学館、2015年)
  • 大学で社会科学を学んだ人であれば少なくとも身につけるはずの「社会科学的思考」を持ち合わせていなかったことである。、、、私自身、何回か直接対話の機会を得たが、基本的文献も読んでいないという印象が強い。
  • 20代の基盤構築期に練磨なきまま「家業としての政治」に入っといえる。
  • 気付くのは、奇妙なほど「民主主義」への発言がないことである。
  • 進歩的な若手GHQスタッフによって、10日間そこそこで書き上げられたのが日本国憲法という見方を語っている。
  • 日本国憲法の内容は、ジョン・ロック『統治二論』や「米国独立宣言」、「不戦条約」(ケロッグ・ブリアン条約、パリ不戦条約)などを踏まえた正統な民主意義思想を体現するものである。
  • 安倍政治には、「戦後民主主義はバチルス(病原菌)」として切り捨てたい本音が見え隠れする。
  • 安倍政治が掲げた「日本を、とり戻す」というスローガンが、戦後民主主義を否定し、戦前の日本への回帰を目指すものであったことを示す典型的事例が2017年3月の「閣議決定」による教育勅語の「副読本化」であろう。
  • 徳目教育は大切という説明だが、教育勅語の狙いは「一旦緩急アレバ義勇公に奉ジ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ」という国民意識の形成にある。
  • 集団的自衛権の容認」も閣議決定による解釈改憲で押し切ったわけで、議会主義を空洞化させてしまったのである。
  • 戦後レジームからの脱却」を掲げていた安倍晋三という人物は、自らの死をもって戦後レジームを支えた保守政治の本質を明らかにした。そして、彼自身が戦後レジームの中核であったことを言い残して逝った。我々には、本当の意味で戦後レジームを克服して未来を拓く責任が残った。

明日は、寺島さんの新著『ダビデの星をみつめてーー体験的ユダヤネットワーク論』が届く予定。

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『戒語川柳 1』の編集作業。「はじめに」と「おわりに」を執筆。表紙も検討。

『プロフェッショナル  仕事の流儀』で「YOSHIKI」をみた。興味を持った。

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「名言との対話」12月20日藤本定義「おい哲(川上哲治監督)!うちの豊(江夏豊投手)を乱暴に使いやがって!この馬鹿野郎!」

藤本 定義(ふじもと さだよし、1904年12月20日 - 1981年2月18日)は、愛媛県松山市生まれのプロ野球監督東京巨人軍初代監督。

9シーズンで7度の優勝という巨人軍第一次黄金期を築き、1942年シーズン終了後に辞任。1946年パシフィックの監督として球界に復帰。選手の待遇改善のために日本野球選手会(現:日本プロ野球選手会)を発足させ初代会長に就任した。

1948年から1956年まで金星スターズ(1949年からは大映スターズに球団名変更)の監督。1957年から1959年阪急ブレーブス監督。1960年阪神のヘッド兼投手コーチ、1961年途中から阪神監督に就任。1962年には「打倒巨人」を掲げて1962年1964年にリーグ優勝。1968年勇退

監督としての実働期間29年は歴代最長である。通算成績は3200試合で1657勝1450敗93分。勝率.533。リーグ優勝9回。

不思議なことだが、藤本はプロ野球選手としての経験がない。東京鉄道管理局の監督時代に、向かう所敵なしだった東京巨人軍と戦い、2回とも勝利した。その手腕を見込まれて東京巨人軍の監督に招聘されたのである。

以下、藤本の言葉。

  • 「誠実、愛情、根気、この三つで選手に対峙してきた」
  • 「敵を知り、味方を知って勝つのは「一流」。敵を知り、味方を知らず勝つのは「二流」。敵も知らず、味方もしらずに勝つのは「三流」。全部しらずに負ける奴は「四流」だなあ」
  • 「30勝投手を出すのは監督の恥」。「先発ローテーション」を本格的に導入。エースの連続起用を指して「30勝投手を出すのは監督の恥」と批判した。その考えが出たのが、次の一件である。

1967年のオールスターでセ・リーグの川上監督が阪神の江夏を3連投させたため、阪神巨人戦の試合前において、阪神の藤本は巨人の川上を阪神ベンチに呼び出しものすごい剣幕で叱った。ライバル球団の監督を叱るという出来事に、名監督川上は直立不動で藤本の話を聞いていたという。江夏の回想である。このエピソードは、藤本定義という人物の愛情の深さを示すと同時に、信念をもって誰もが認める大野球人を叱ったという誠実さも感じさせる。江夏はさらに発奮しに違いない。

人物をあらわすには、その人らしいエピソードを語るのがいい。エピソードは日本語では「逸話」というが、あまり知られてはいないが、その人をよく表している短い話のことだ。この「名言との対話」でも、名言とエピソードを探して、人物の人柄を浮き上がらせようとしてきたともいえる。この点は、さらに意識していきたい。