「脳力のレッスン2」(岩波書店)---寺島実郎出版記念会

k-hisatune2008-02-07

丸の内の日本工業倶楽部で行われた寺島実郎さんの「脳力のレッスン2」の出版記念会に出席した。岩波書店の総合雑誌「世界」に連載中の作品を書籍化したものである。「脳力」(のうりき)とは、物事の本質を考え抜く力、と定義されている。
寺島さんの本は単著としては17冊目だが、いずれも密度が濃く、この本も緊張感が漲っている。

司会はNHKの木村アナ。重々しいつくりの会場は300人の、これまたマスコミ、政治、企業などの第一線で活躍中の重厚な人々で埋め尽くされていた。挨拶は、版元の岩波書店の山口社長、朝日新聞の箱島元社長、米国弁護士のアーサー・ミッチェル氏だった。箱島氏とは20代からのの付き合い、ミッチェル氏とはワシントン時代からの付き合いだ。
いくつかのキーワードを挙げてみる。虫の目と鳥の目。時間軸と空間軸。著書等身。

30分ほどの短い講演だったが、会場全体が静かに聞き入る独特の雰囲気である。以下、キーワードを少しだけ。
3位となった中国。海の中国と陸の中国の合計が日本を凌駕。人流の変化は7年間で一変。為替の魔術。中国、韓国、豪、露から日本へ。ニセコ(オーストラリア人)、苗場(ロシア人)、別府(韓国人)。空海。知的基盤の劣化を克服して、知的インフラづくりをすることが自分が集中してやるべき役割と認識。

懇親会は、野田一夫先生の挨拶、日経連の元会長の根本さんの乾杯の挨拶で始まる。
寺島さん、野田先生、沈さん、知研のメンバー、、、、。

このところ、寺島さんはあらゆる講演で「世界潮流と日本の進路を考える基本資料」という10ページほどのレジメを使う。世界情勢をみる基本的な数字の最新版を網羅したものである。

21世紀に入って7年間の世界潮流
2008年、パラダイム転換の予兆
21世紀初頭に関する5つの視点

資料
・世界情勢について--「高成長の同時化」の特徴
・米国について------「脱9・11」へのパラダイム転換
・日本について----ポテンシャルの生かし方
・アジアダイナミズム
・ユーラシアダイナミズム
・21世紀の世界潮流---日本の選択肢

「統計数値は一瞬を切り取ったものにすぎず、「行く川の水」のごとく変化している動体を便宜的に止めてみせたものである。それでも、時代の観察者は自分の足や耳目で実感した現場のフィーリングや勘のよなものを、絶えず数字で検証・確認する作業を怠ってはならない。そのための素材としての統計数値は重要であり、東洋経済新報社発行の「統計月報」などを身近に置き、暇があれば数字の変化の背景にある意味を考えている。」(「世界」2008年3月「脳力のレッスン・71」)

この本もそうだが、寺島さんは人との付き合いも、書き物も長く続けることで、現在の高みに至っていることを痛感する。