竹内宏『「元気」の経済学』を再読ーー40年前の日本の姿と現在の日本の予測。その結果は?

竹内宏『「元気」の経済学』(PHP)を再読。

1986年10月6日刊行の本だから、もう38年前だ。バブル期(1986年12月ー1991年2月)へ向かう直前である。副題は「低成長時代の新たな活力とは」だ。

著者は日本長期信用の常務取締役調査部長で、『路地裏の経済学』などの著書で有名な経済学者で、ビジネスマンに人気があった。2016年に亡くなっている。

竹内宏の日本についての問題意識と将来の見通しと解決案を眺めてみる。

  • 日本経済:1986年時点:4%という低成長。GNPは300兆円(世界GDPの16%ー1988年)1所帯当たりの平均資産額は3000万円で内訳は、土地1500万円。家900万円。金融資産600万円。国債残高は140兆円でGNPの半分、一人当たり130万円。「日本は財政破綻国になってしまう」(名目GDP591兆円。国債残高がGDPの2.64倍。GDPは世界の4%)
  • 高齢化社会:1986年時点:平均寿命は男74.5歳、女80.1歳。出生率は1.8人。65歳以上と労働力人口の比は1:7.5。2020年には1:1.5になる。「想像を絶するような高齢化社会が到来。不安で不気味な社会が近づいてくる」。(人生100年時代の掛け声)
  • 年金は月18万円。標準月給の70%。60歳以上の貯蓄は1000万。「30年後には年金は完全に破産、支給年齢は遅くなり、支給額も減るだろう」。(65歳からの支給。マクロスライド方式で支給額は徐々に減っていく)
  • 低成長で変化のない時代には、「地域のコミュニティで生きがいを見つけようとする」。高齢者の好きなのは旅行。アジア旅行が適している。

打開策の提言:ロボット。老老介護。3世代同居。親子関係を変える(教育費を出さない。住宅は子どもに月賦販売)。外国人労働者の受け入れ。出生率を高める工夫。

「以上が実施できなければ、所得の50%が税金になり、勤労意欲の減退と反乱が発生する。日本社会のモラルや特質が根本的に変わらざるを得ないかも知れない」。

元気のある国について。

  • アメリカ:左右に激しく揺れてもバラスを失しない。世界の叡智が結集するダイナミックな国。多民族国家は活力がある。(新しい技術でトップの地位を保持。2024年IMF予測:日本の7倍の経済力)
  • イギリス:ジョンブル精神は健在。しぶとい国。(GDPは米中独日印に次ぐ6位)
  • ソ連:最も工業化に成功した国。中進国となったが限界。ことによるとソ連は取り残されるかもしれない。(数年後のソ連の破綻の予言が的中。ロシアはGDP世界11位)
  • 中国:目をみはるような成長。チベットに達するには100年か200年かかるかもしれない。(世界第2位の経済大国になった。日本の4.5倍の経済規模)
  • 韓国:納期の短さと正確さが強み。日本の昭和30年代に似ている。(GDPは世界14位。一人当たりGDPは日本を越えた)

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「アクティブ・シニア」の企画。5月の「名言との対話」の人選。図解塾の準備

夜:デメケン。「アクティブ・シニア革命」打合せ。言葉の力塾の打ち合わせ。

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船戸与一 写真 に対する画像結果

船戸 与一(ふなど よいち、1944年2月8日 - 2015年4月22日)は、日本小説家。享年7
早稲田大学法学部卒業。在学中は探検部に所属。第三期生だった。アラスカのエスキモーを訪問し、本名で共著『アラスカ・エスキモー』を刊行している。 小説家の西木正明は探検部の先輩である。
出版社勤務などを経てフリーに転身し、1979年に『非合法員』で小説家デビュー。主に冒険小説の分野で高い評価を獲得している。主な受賞歴に吉川英治文学新人賞(『山猫の夏』)、日本推理作家協会賞(『伝説なき地』)、山本周五郎賞(『砂のクロニクル』)、直木三十五賞(『虹の谷の五月』)、日本冒険小説協会大賞など多数。
著書には「砂のクロニクル」「海燕ホテル・ブルー」「虹の谷の五月」「祖国よ友よ」「非合法員」「夜のオデッセイア」「群狼の島」「山猫の夏」「銃撃の宴」「神話の果て」「カルナヴァル戦記」「猛き箱舟」「伝説なき地」「メビウスの時の刻」「緑の底の底」「かくも短き眠り」「黄色い蜃気楼」「午後の行商人」「龍神龍神一三番地」「緋色の時代」「三都物語」「河畔に標なく」「降臨の群れ」「藪枯らし純次」などがある。
私が読んだ『虹の谷の五月』は、1998年から2000年までの、フィリピン人と日本人の混血の主人公が13歳から15歳までのフィリピン・セブ島を舞台にした物語だ。船戸は冷戦構造の崩壊によって物語が書きにくくなったと言い、新たな冒険小説を書こうとした。主人公を幼い少年に設定して書き終えて、小説への新たな闘志が健在であることを確認し、次のステージに向かっていく。その転機の作品に2000年の直木賞が与えられた。
船戸与一の若い人へのアドバイスがいい。

・主体的に生きてもいいけれど、何も考えずに世間が命じるままに生きてもいい。向いている仕事なんて、実はない。そんなもの、自分ではわからないんです。私だって今でも向いてないと思ってるんだから。それよりも目の前のことに誠実になることです。そこから始めたらいいんです。

・もし若いときに旅をしなかったら、くたばる前にどんな思い出話をするのか。もっと人生を楽しむことを考えたほうがいい。

早稲田大学探検部の初期メンバーの船戸与一の「旅をせよ」という発言には、探検部で鍛えらえた私は共感を覚える。冒頭の言葉では「若いとき」と言っているが、これは生涯にわたって言えることだろう。旅、特に一人旅は世界を広げる。そこで体験した驚きが人生に深みを与えてくれるのだ。旅をして、人に会い、本を読む。その繰り返しを楽しもう。 

さらに船戸は「本気のものは人を惹きつける。これは小説に限らずだと思う」という。この人の書くものはどのジャンルにも続さない、ドストエフスキーと同じ枠で語るべき作家だという評価をする人もいる。熱量が多い、本気の人なのだ。