「おとうと」−山田洋二は市川崑、吉永小百合は女・笠智衆を目指す

昨日に引き続き映画を観る。今日は日本映画で「おとうと」。原作は、幸田文
http://www.ototo-movie.jp/

日本の家族のあり方をずっとみせてきた山田洋次監督が描く可笑しくて哀しい物語。山田監督はパンフの挨拶に「家族という厄介な絆」というタイトルをつけている。「作り手と観客の間で、人々の暮らしのあり方が共有しにくくなった。だからこそ、現代の理想的なモデルを問うてみた」。
主演の姉吟子役は吉永小百合、弟役は鶴瓶で、どちらも好演している。笑いと涙の物語である。山田監督が敬愛する、同じ「おとうと」という最高傑作を残している市川崑監督に捧げる作品である。

吉永小百合は「母べえ」でも日本の母を上手に演じているが、役づくりへの取り組みについて次のように語っている。また、女・笠智衆を目指していることもわかった。
「ロケ地を歩いたり、電車に乗ったりするのは、私の役作りでいちばんのかなめかもしれません。どんな場所で、どんな風に吹かれて、どんな暮らしをしているのか、それを肌で感じるためには。その人が暮らす場所を訪ねて、見学したり、調べたりします。ぱっと役になり切れるタイプではないものですから。」
笠智衆さんを目標にすることでした。、、男女の差はありますが、笠さんならどう演じられるだろうと考えました。、、いつもその微風のような立居振舞に、すごいなと感心していました。、、笠智衆さんを目標にしている自分がいるというのは、感慨深いものがあります。

テレビでみる鶴瓶にはあまり感心はしていなかったが、今回のおとうと鉄郎の演技は見事だった。

音楽は山田洋次監督作品の常連である富田勲さんだった。鉄平にはトロンボーン、吟子にはフルートを使っている。「吟子の清純さにはフルートを、鉄郎の憎めない滑稽さにはトロンボーンの音色を」と決めた事情を述べている。映画における音楽の役割もわかるインタビューである。富田先生と久しぶりに飲みたい。
「つながった映像を観たときから、トロンボーンでいこうと決めていました。トロンボーンの持つおおらかさというのかな、優しくて滑稽な感じが鶴瓶さんのキャラクターに合う気がしたんです。しかも一部分の音じゃなく、最高音から最低音までの全部を使って、鉄郎の憎めないところを表現しようとしました。」
「吉永さんの吟子にフルートを当てるというのも無理なく出たアイデアです。ヴァイオリンだと表情が豊か過ぎちゃうし、リコーダーだと少し色が付いちゃうでしょう。吟子の清純さにはやっぱりフルートかな。トロンボーンの音色もフルートがあったから際だったのかな。」
「僕としては吟子と鉄郎の文字には書けない部分をある程度、音楽の側から表現できたかなって思っております。」
おとうと (新潮文庫)