T-Studio『名言との対話』、第32回は石川晴子先生の座右の銘「一期一会」を巡る対談。

T-Studioの久恒啓一の『名言との対話』。第32回は石川晴子先生との「座右の銘」対談の初回。テーマは石川先生の座右の銘「一期一会」を巡って。

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多摩キャンパス

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・渡辺さん:戦略会議の資料

・下井先生:学部の課題と方向について意見交換

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「名言との対話」。6月25日。尾上松緑「舞台が好きになるか、ならないか」

二代目 尾上松緑(にだいめ おのえ しょうろく、1913年大正2年)3月28日 - 1989年平成元年)6月25日)は、日本歌舞伎役者。屋号音羽屋重要無形文化財保持者(人間国宝)。日本芸術院会員。文化勲章

歌舞伎界の有名な「芸談」には、六代目尾上菊五郎『芸』と五代目中村歌右衛門『歌舞伎の型』という名著がある。尾上松緑松緑芸話』は小父の六代目尾上菊五郎、父・七世松本幸四郎、上の兄・十一世市川団十郎、中の兄・初代松本白鴎などとの交流を交えながら、「義経千本桜」「菅原伝授手習鑑」「仮名手本忠臣蔵」などの名作に関する芸談である。

松緑は意外であるが、三度軍隊に招集され、幸運にも生き延びた。悪い兵隊としてブラックリストに載っていたらしい。

1972年15歳の時、父から六代目に預けられ歌舞伎修行をする。六代目菊五郎の芸風の良き継承者となり、その薫陶を受け、恰幅のいい体つきで時代もの・世話ものを問わず立役として大いに活躍し、昭和を代表する歌舞伎役者となった。

松緑が若い頃、横山大観を招いた席で大観から「君たち、今後この人(六代目)を真似しちゃ駄目だよ。真似をしたらこの人より上へ行けっこないんだから、絶対に真似しちゃ駄目だよ」と言われ、六代目も「そりゃそうだ」と相づちを打った。松緑はこのやり取りに強い印象を持った。

松緑テレビ映画の出演、歌舞伎以外の商業演劇でも積極的に新劇俳優と共演するなど芸域は広かった。私はNHK大河ドラマでは1963年の第1作の『花の生涯』での井伊直弼役が強く記憶に残っている。井伊直弼安政の大獄を断行したことで人気がないが、この松緑主演の大河ドラマを見たことで、私自身は悪い印象を持っていない。ちなみに「一期一会」は、井伊直弼が広めた言葉である。

器用な人はいい歌舞伎役者になることができるが、不器用な人も徹底してそうならそれはそれで味が出てくる、それが芸事の難しいところだと松緑は述べている。父は自分が不器用だと知っていた。上の兄・十一世団十郎は不器用さと役者っぷりのよさを合致させ成功した。そして松緑には不器用な自分の芸を移すことをせずに、六代目へ修行に出したのだ。偉大なる凡人の父は、後のことをよく考えていたのである。松緑は舞台は苦しいが、器用・不器用に関係なく、その「舞台が好きになるか、ならないか」が勝負であり、好きなればどこまでも行けるという。何事もそうだろう。 

松緑芸話 (講談社文庫)

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