原稿書き。講演準備。ジム。

・ 原稿書き。

・講演準備。

・ジム:30mウオーキング。500mスイミング。

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「名言との対話」7月7日。流政之「西洋とは違う、東洋あるいは日本ならではの「もうひとつの彫刻」の形をとり戻したい、整えたい」

流 政之(ながれ まさゆき、1923年2月14日 - 2018年7月7日)は、日本の彫刻家作庭家

父親は政治家で立命館大学創設者の中川小十郎。流政之の経歴の中では二つのことに注目したい。京都の立命館大学で、立命館日本刀鍛錬所に出入りし、刀鍛冶桜井正幸の門をたたき、作刀、研ぎに夢中になった。そこで軍刀をつくれとの達しに抗して仕事場に火を放ったこと。もう一つはそのことがきっかけとなり海軍士官となりゼロ戦パイロットになるが、特攻出撃を待つうちに敗戦となり、倒れた墓をおこして歩く全国各地の放浪の旅にでる。その後、独学で彫刻を学ぶ。1955年の初個展のテーマは鎮魂だった。反応が冷たく、アメリカに行く。

 彫刻では、抽象、具象、石彫、木彫、コルテン鋼。そして建築から修景から作庭までという膨大な量の仕事をした。流の造形感覚の根底に影響を及ぼしたのは刀の焼き入れの仕方であり、また石を割った面を磨かずに残す「割れ肌」という手法も斬新で影響を与えた。東洋のミケランジェロ、サムライ・アーチストと呼ばれた。

 作品と同じく、人物も独特だった。司馬遼太郎は「風のような男だな、と私は思った」といい、アメリカで出会った江藤淳は「彼は戦いつづける男であった」との印象を持ち、20代から知っている瀬戸寂聴は「流れものの政やん」と流を評した。旅、酒、料理、女との出会いで、五感を鍛錬した。これがアイデアの源泉であった。直観力・洞察力・創造力・組織力・説得力にすぐれた人物であったようだ。

流政之自身の言葉を拾ってみよう。

「すべてこの世はつくるが勝ち」「質より量。たくさんの試みを行うということ。その中に可能性がある」「生涯で1万点は超えたい」「インスピレーションはじゃんじゃんわく。イライラして腹を立てると、言葉をきっかけにパッと形ができるとか」。

以上に見るように、流は質より量を重視した作家である。「受けて立つ」という人生観で、頼まれた仕事をこなしているうちに、次のように、1000以上の日本各地でみることのできる膨大な作品群、そして海外にも作品を残している。

北海道大沼の彫刻公園ストーンクレージーの森の「もどり雲」。熊本県立美術館細川コレクション永青展示室利口の「KOKEKE MUSHA」。浜松駅前の「MATAKITALA」。ながれ地蔵。ナガレバチ。MOMO。明日の肌。飛。神戸海援隊。サキモリ。波かぐら(東京海上日動火災ビル)。レリーフうみたまご。ヨカアシタ。神威流。時の扉。乱世開眼。風神。島サキモリ(彫刻公園北追岬、奥尻)回天が原(彫刻公園北追岬、奥尻)。海卵。雲の砦(北海道知事公邸)。あほんだら獅子(千里中央公園)。石神楽(香川国際交流会館).天門(神慈秀明会)。江戸っ子(浜松町貿易センタービル)。恋車社(大分県庁舎)。ピリカ(札幌JRタワー)。くぐりびす(東京海上日動火災ビル)。風の石箱(東京三菱UFJ銀行)。海外では、生まれ変わり(ジュリアード音楽院)。結ばれた二つの行方(セントルイス市立美術館)。太平洋の赤ん坊(バンク・オブ・アメリカ)。のぼり太鼓(IBM本社ロビー)、、、、、。このように並べたのは、それぞれの作品の写真が印象的だからだ。実に魅力がある。

「形はつくるものから求める人々へ手わたすことによってこそはじめて生命をつかむものである」、「海に向かってたつ彫刻は人間のためにつくるのでなく、海もまたこれを見つめる権利をもっているのである」。

日系アメリカ人のミノル・ヤマザキが設計したニューヨークの世界貿易センタービル広場に設置された流政之「雲の砦」は、予感のとおり9・11同時テロで消え去った。

制作拠点にしていた高松市のナガレスタジオは、「流政之美術館」として近々公開されるとのことだ。敷地面積は約1万9500平方メートル、建物面積は約350平方メートル。れんが造りで城塞(じょうさい)さながらの外観をしており、流作品の一つとも称される。約400点の作品がスタジオ内にあるから、一気に流の作品を堪能できるわけだ。ここは訪ねたい。

これほど「量」にこだわった彫刻家もいないだろう。95歳で亡くなるまで作品をつくり続けた。計画なしに感性にまかせて反復するうちに、ふっといい作品ができることある。頭がかすむほど数をつくるとそういうことがおこる。やはり数が大事なのだ。たくさんの試み、その中で考えていく。それが流政之という作家極道の方法論だ。「日本ならではのもう一つの彫刻」は、鍛錬によって美しい面を持つようになった「日本刀」と、石の「割れ肌」を磨かずそのまま使いという相反する方法から生まれたのだろう。 

流政之作品論集

流政之作品論集