佐藤章『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)ー3度目の政権交代へ向けての執念を描く力作

佐藤章『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)を読了。

オビに「政治ジャーナリズムの傑作」とあることに納得する420ページの力作。

佐藤章の自民党総裁選に関する動画で提供される情報の的確さと深さに刺激を受けて、毎日少しづつ読んでみた。人間関係や心理分析に走る政治ジャーナリストはよく見かけるが、このくらいのレベルの人は滅多にいないと思う。長い時間をかけて、日本政治の表と裏を追った著者の執念が感じられる。

タイトルは、マックス・ウェーバー「断じてくじけない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への「天職」を持つ」から取っている。

以下、小沢一郎の言葉のみピックアップする。

政治家の心得。

  • 物事は詰めなければダメなんです。いい加減にしていたのでは何もできないんです。そういう癖をつけないといけないと思いますね。(仕事の心得)
  • 這い上がった人はなかなか人を育てると言うことをしないんだ。権力者は絶対に後継者を作らないんだよ。(師匠の田中角栄など)
  • 心の準備ですね。しっかりした志と、何事にも動じない胆力と。千万人といえども吾征かんという心がないとね。(自民党幹事長時代に総裁就任を断った理由)

3度目の政権交代へ向けて。

  • 哲学的にはキリスト教の哲学に代わって仏教哲学が、21世紀以降の世界には適していると思います。日本では皆分け隔てなく仏様になってしまう。この発想が、僕はこれからの地球には大事なことになってくると思っている。
  • 自分自身が作ったマニフェスト(政権公約)、それを掲げて政権を任されたマニフェストについて、それが間違いだった、無理だったと言うわけですから、国民の信用を失うのはやむを得ないと思います。マニフェストを掲げて努力を続ける政治スタンス、政治姿勢を国民が期待していたんだと思います。
  • アメリカは本当は辺野古にこだわっていない。海兵隊は事実上沖縄にいない。ほんの少ししか沖縄にいないんです。それで、土地は他にもある。あんなきれいなところは埋め立てる必要はないんです。辺野古には入らないと言う意見です。日本はきちんと米国にそのことを言えなくてはならない。ただそれを言うためには、国土防衛のための軍事的な負担をしなければならない。
  • 官僚の士気の低下、倫理観の喪失、これは安倍政権の罪ですが、それだけでは留まらないかもしれない。もしかしてると全国民に影響与えているかもしれない。嘘をついても平気だと言うわけですから。上も下も倫理観をもう一度取り戻すような社会にしなければならない。5年、10年じゃとても治らないと思うが、政権交代をして、まずは政府、政治の姿勢を毅然と正すことから始めなければいけません。
  • 日本だけですよ。警察や検察がこんなに権力の走狗となっているのは。
  • アメリカと言うのは単純なところがあるから。自分の敵か味方か、と言うような一方的な結論を出すことがあるからね。だからアメリカは今も失敗の連続なんだ
  • 僕は、本気で日中関係の有効に取り組んでいますから、そういうことを知っている中国は、僕は何を言っても起こらないんです。「共産党独裁はいずれ滅びる。だからもうコペルニクス的転換をするか滅びるかどちらかしかない「とはっきり言ってます。
  • 革命的な改革を、まだ余力のあるうちにしておくべきです。本気で、自分の思惑や私利私欲を捨てて、政治改革、再建にお国や社会のため努力すべきだと思う。
  • 財源は実はいくらでもあるんだ。財務省の役人は私の前ではお金はありませんとか絶対に言わない。
  • 政策調査会は議論の余地なくいらないものなんです。与党の中に政調会なんてものがあるのおかしいんです。
  • 政権交代したら、(原発の)廃棄物処理の恒久的な方法を考えて、何兆円、何十兆円かかろうが実行しなければなりません。
  • 正当防衛、自衛のための戦力は妨げないと憲法にきちんと(と良いのではないか。しかし私は、国連中心の国際平和維持を通じて日本の平和を守ると言う考え方をとる。国連中心主義を掲げたいと思う。
  • 小選挙区の功罪を言ってくださいと聞かれれば、僕は決まって「罪なんかない。功だけだ」って答えています。
  • もう一回やろうと思ってるんです。もう一回やる、必ず。このままじゃ死ぬに死ねない。もう一度ひっくり返す。絶対にもう一度やる。もう一回舞台を回さないといけない。古い体制は一度破壊して、新しく始めなければだめなんです。何としてももう一仕事ある。何としてでもやります。やり遂げます。それで反対に自民党のほうもしっかりしてもらいたいんです。

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・「関東大震災の影響」に関する資料作成

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夜:日本未来学会セミナー「コロナ時代に希望はあるかーグレーバーからクロポトキンに遡る「相互扶助」の系譜」

報告者:小田透(静岡県立大学

  • コロナ禍で明るみにでたもの:グローバル化の進展で感染症の加速。もはやどこにも安全地帯はない。福祉国家の有効性(無料ワクチン)と国際的協力の進展(ワクチン協定COVAX)
  • 共助の必要性がでてきた。
  • デビット・クレーバー「負債論」。クロポトキン「相互扶助論」。斎藤幸平「人新世の資本論

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「名言との対話」9月24日。長新太「意味はないけれどもすごくおもしろい、ユーモアがあって子どもが本当に喜んで笑っちゃう、そういう本も重要だと思うんです」

長 新太(ちょう しんた、1927年9月24日 - 2005年6月25日)は日本の漫画家・絵本作家。

ロングスカートをテーマとした漫画でデビュー。ペンネームの長新太は、「ロングスカート」から「長」、新人の「新」、図太く行けとの願いを込めて「太」としたもので、嘱託で入った東京日日新聞からつけられたという。

1955年、小島功率いる独立漫画派に入会。イラストや絵本の仕事にスライドしていき、1958年には「ばんばれ、さるのさらんくん」で絵本作家としてもデビューしている。

長新太の作品は300冊以上あるという多作ぶりだ。そして作品は質も高い。国際的漫画家である。子どもの心は同じなのだ。

1959年 第5回文藝春秋漫画賞から、2005年んぼ日本絵本大賞まで、15の賞を受賞しているから、国内外で評価が高いことがわかる。イタリア国際漫画サロン国際漫画賞、東京イラストレイターズクラブ賞、 国際アンデルセン賞優良作品、 講談社出版文化賞絵本賞、 厚生省児童福祉文化奨励賞、絵本にっぽん大賞、小学館絵画賞、絵本にっぽん大賞、 巖谷小波文芸賞路傍の石幼少年文学賞、絵本にっぽん大賞、 産経児童出版文化賞美術賞、 日本絵本賞。

長新太は漫画作品のほか、「ユーモラスな展開と不条理な筋立て」による「絵本」と称される数多くの絵本や、児童文学の挿絵を描き、「ナンセンスの神様」の異名をとった。またエッセイなどの分野でも活躍している多彩な才能の持ち主だった。

長新太についての評判を以下に拾ってみよう。ナンセンスの神様。カラフルな色使い、少しとぼけたような表情、そして、ちょっと不思議でユーモラスな世界観。不世出のナンセンス絵本作家。ユーモアとナンセンスの王様。ナンセンス絵本の第一人者。、、、

読者の声では、子どもに超人気。親子でも十分楽しめる。1歳、2歳、から幼稚園まで。ナンセンス絵本は大人でも面白い。、、、

「絵本に新しい世界をもたらした作家です。長さん以前と長さん以後では絵本の世界は一変したと言っていいと思います」(絵本館 有川裕俊)

亡くなった直後には「飛ぶ教室」 第7号(2006年秋)で、「特集 ほぼまるごと一冊 長新太」が組まれている。また没後10年には練馬の「ちひろ美術館」、横須賀美術館で没後10年「長新太の脳内地図」展がひらかれた。これからもずっと、子どもたちを喜ばせ、笑わせつづけることだろう。そういう意味では長新太は永遠に子供たちの心の中に生きているといえるのだ。絵本作家冥利に尽きる。幸せなことである。

私自身、この人については不案内だったが、『なにをたべたかわかる?』を読んでみた。これを機会に作品に触れてみよう。