11月に『あすなろ物語』に登場する愛鷹山の山麓にある井上靖文学館を訪問した。静岡県長泉町クレマチスの丘にある。
井上靖文学館は、1973年11月25日に開館した。井上が学んだ旧制沼津中の後輩で、スルガ銀行第3代頭取の故岡野喜一郎氏が設立した。作家存命中に設立された個人文学館は珍しかった。井上は何度も訪れ読者との交流を重ねている。
文学館を設計したのは建築家・菊竹清訓だ。瀟洒で清潔な印象の、井上靖の文学作品の香りがする建物だ。代表作『あすなろ物語』の中で、主人公が詠む「寒月ガ カカレバ キミヲシノブカナ 愛鷹山ノフモトニ住マウ」という歌にちなんだ場所である。建物は自伝的小説『しろばんば』に登場する土蔵のデザインの鉄筋コンクリート二階建てである。
初版本や限定本などの希少な書籍、原稿や万年筆といった愛用品を含め、約3000点の資料を所蔵している。2021年4月に長泉町営となり、新たなスタートを切ったばかりだった。1階には映像コーナーがあり何本か見た。2階は自由に本が読めるスペース「ミュージアムライブラリー」となっている。
「養之如春」(これを養う春の如し)という色紙があった。
何事であれ、もの事を為すには、春の陽光が植物を育てるように為すべきだという意味。「これ」には何でもあてはまる。子育て、愛情、仕事、病気など、春の光が植物を育てるように為すべきだという教訓である。
「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」という井上靖の名言が今まで気に入っていたが、この人には人生に関する名言が多い。
- 借金しようが、泥棒しようが、一生涯にたくさん金をつかっちまった奴が、やはり金持ちと呼ばれるべきでしょう
- 人間はだれでも、自分の一生を成功だとは考えないまでも、失敗だとは思いたくない
- 年齢というものには元来意味はない。若い生活をしている者は若いし、老いた生活をしているものは老いている
- 万事、焦ることはない、ゆっくりやればいつか事は成る
- 人生は所詮克己の一語に尽きる
- 私が一貫して描いてきたのは『仕事に没頭する人間の孤独』ですよ
- 何でもいいから夢中になるのが、どうも、人間の生き方の中で、一番いいようだ
- これまでとまったく違った新しい人生というのは、十五年ぐらいかけてチャレンジすると、かなり達成できるものなんですよ。
井上靖の幸福論を聞こう。今日のヒント。
- 幸福は求めない方がいい。求めない眼に、求めない心に、求めない体に、求めない日々に、人間の幸福はあるようだ。
- どうやら幸福というものはひどく平凡なことの中にある。静かな眼、おだやかな心、健やかな体、平穏な日々そうした状態以外の何ものでもないらしい。
- 人間の幸せというものは、しみじみと、心の底から、ああ、いま、自分は生きているということを感じることだな。そうすれば、自分のまわりのものが、草でも、木でも、風でも、陽の光でも、みんな違ったものに見えて来る。
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明日の図解塾・課外授業「幸福論2」の準備
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19時:NPO知研の福島、猪俣さんとZOOMでの打ち合わせ。
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「名言との対話」12月7日。辻信太郎「1つの言葉をじっくり味わい、何度も繰り返して、その意味をよく理解してもらえたら、、」
辻 信太郎(つじ しんたろう、1927年12月7日 - )は、日本の実業家、作家。株式会社サンリオの創業者。
山梨県庁に勤務したあと、30代前半で「みんなが仲良く助け合って生きていける幸せな世界を作りたい」と、世界に一つだけのビジネス「ソーシャルコミュニケーションギフトカードビジネス」を創業する。
サンリオの社名はスペイン語のSan Rioに由来している。「サン」は「清らか」とか「聖なる」といった意味で、「リオ」は「河」を意味している。「聖なる河」である。山梨の王という意味だとの説もある。
自社でデザイナーを抱え、著作権も自社で保有し、独自性を発揮すべきだとして、ライセンスビジネスを目指し、「キティ」というキャラクターを世に出す。90年代半ばに、日本生まれのキャラクターであるハローキティが全国的なブームになり、2000年代には海外でも人気が爆発する。ライセンスビジネスが新たな主軸ビジネスとなった。
多摩センターにピューロランドを持つサンリオには多摩大学も縁が深く、ゼミなどでも大いに協力をしたことがある。そのサンリオは新太郎の後継者としていた息子が急逝し、創業60周年を迎えた2020年に92歳の創業者は31歳の孫に社長を交代している。
サンリオ辻信太郎『みんなのた坊の哲人訓』(株式会社サンリオ)を読んだ。「今こそ必要な100のことば」がという説明がついている。「哲学」とは「人は如何にして生きるべきか?」を考える学問だと思っている辻が海外の哲人を中心に名言を拾った豆本である。以下、私がまだ知らない言葉を中心に拾ってみた。
アイザック・アシモフ「幸運は望むものにしか訪れない
サッカレー「美しい笑いは家の中の太陽である」
アインシュタイン「大切なのは疑問を持ち続けることだ」
ゴーリキー「明日何をなすべきかを知らない人間は不幸である」
トルストイ「他人の罪は目の前にあるが、自分の罪は背後にある」
キルケゴール「根本的なことは私にとって真理であるような心理を発見することだ」
プラトン「自分に打ち勝つことは、勝利のうち最大のものである」
ダンテ「人は考えることによってではなく、行うことによって成長する」
キケロ「私は最も正しい戦争よりも最も不幸な平和を選ぶ」
シャンフォール「機会が二度扉をたtくなどとは考えるな」
ロダン「経験を賢く生かすならば、何事も無駄ではない」
エマソン「その日その日が一年中の最善の日である」
ヘラクレイトス「万物は流転する」
セネカ「どの港に向かって航海をしているかを知らなければ、どんな風も順風ではない」
ゲーテ「一人で石を持ち上げ気がなかったら、二人がかりでも持ち上がらない」
シュバイツァー「身を持って示すことがリーダーシップである」
二ーチェ「高く登ろうと思うのなら、自分を脚を使うことだ」
ソクラテス「賢者は複雑なことをシンプルに考える」
イプセン「心に残るのは、千の忠告よりひとつの行為だ」
カトー「欲しいと思うものを買うな。必要なものだけを買え」
アインシュタイン「何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない」
ロマン・ロラン「他人の後ろから行くものは、決して前進しているのではない」
ソロモン「賢者は聞き、愚者は語る」
ダンテ「汝の道を歩め、人々をしてその言うにまかせよ」
デカルト「一日を大切にせよ。その差が人生の差につながる」
ウェルギリウス「幸運は大胆な人たちに笑いかける」
アインシュタイン「私は天才ではありません。ただ、人より長くひとつのことと付き合っていただけです」
シラー「人生は退屈すれば長く、充実すれば短い」
これらを拾うなかで、短い言葉の威力を改めて感じることになった。また、言葉を選ぶことは、辻信太郎の場合も選んだ人の人生観がにじんでいることも確認できた。世界は名言でできている。