橋本大也「データサイエンティスト」−−3つの能力

橋本大也「データサイエンティスト--データ分析で会社を動かす知的仕事人」(ソフトバンク新書)。

ビッグデータ時代の主役に躍り出てきたデータサイエンティストという仕事がにわかに注目を集めている。
著者は今話題のビッグデータ分析ベンチャーのデータセクション株式会社を学生時代に起業した人である。
日本におけるビッグデータ時代の曙の様子と、そこをフィールドに新しいジャンルを切り拓こうとしている人たちの動きがよくわかる構成となっていて、優れた入門書となっている。
特に、実際にビッグデータの最前線で活躍している著者の考える、データサイエンティストに必要な3つの能力が腑に落ちた。
1・統計とITの能力
2・ビジネスの問題を発見し解決する能力
3・創造的な提案を行う能力
この3つの能力を頂点とする三角形の面積の大きい人がデータサイエンティストのいイメージだそうだ。
統計とITとマーケッティングという言い方よりも、ビジネス寄りのこの定義の方が納得性が高い。

ポイントは「関係」である。
因果関係よりも、相関関係の発見が現場では威力を発揮する。この相関関係を従来大きすぎて無理だった多量のデータを扱いながら発見し提出する新しい職種がデータサイエンティストというわけだ。

個人に関係する広告を最高のタイミングでベストのメディアを通して届ける。ワインの評価を舌でするのと同じ結論を事前に提出する。選挙の政党の獲得議席を確度高く推定する。定性データを手軽に分析できる。景気の週ベースでの予測が可能。、、、。

各章にインタビューがついている。現場で進行中のビッグデータ革命の息吹がわかる。
ヤフー株式会社事業戦略統括本部データソリューション本部長。
国立情報学研究所コンテンツ科学研究系准教授。
イー・エージェンシー取締役。
ヤフー株式会社執行役員事業戦略統括本部長。
ソフトバンクモバイル株式会社マーケッティング・コミュニケーション本部Webコミュニケーション部の部長とWeb企画課長。

「シンプルに考え、ざっくりと答えを出し、もっともらしいものを選びだす」のがデータサイエンティストの思考パターンであると述べているが、これはものごとの本質を見つめる眼を持ってるということで、仕事のできる人の条件と同じだ。

デーサイエンティストの3つの能力のうち、2番目の問題解決力はわが学部の方向と同じであり、3番目の「創造的な提案を行う能力」は図解コミュニケーションが貢献できるはずだ。来年度から始まる予定の大学院ビジネスICTコースのデータサイエンティスト養成コースでも私の講義も予定されているが、2番目と3番目、特に3番目のところを受け持ってみたい。