柳田邦男「いざ100歳まで日記」の新連載始まった。

「文藝春秋」の新年特大号を手にした。

ノンフィクション作家・柳田邦男「いざ100歳までの日記」の新連載が始まった。柳田は現在87歳。百歳を目指して一日一日をしっかりと生き、その証として2023年の誕生日の6月9日から日記を書き始めた。それを公開するのだ。

柳田が100歳になるのは12年半後だが、2022年に9万人を超えている100歳人口ををみると、「百歳という年齢が、自分にもあっけらかんとやってくるような気がする」と書いている。

宗教学者山折哲雄は「これからの執筆は文献などに依存するのでなく、これまでに学び記憶に刻まれたものをベースにするだけで十分なのです」と貴重な蔵書をすべてある大学に寄贈したことを知る。

2万数千冊の蔵書を持つ柳田邦男(1936年6月9日生まれ)は「これから十年以内に書こうと企画している作品の資料として必要な本のみを厳選して自宅に戻し、他の本はどこかに寄贈するか廃棄しようと決断した」。必要な書物以外は信州大学の図書館が独立したコーナーを用意してくれることになったようだ。

健筆の作家・柳田邦男は、97歳、つまり100歳を見据えて仕事をするつもりなのだ。私のいう「熟年期」(95歳まで)を雄々しく生きようという宣言だ。そして100歳までの日々の暮らしと仕事ぶりを「いざ100歳まで日記」として実況中継として連載してくれるのだ。

「文春」は創刊100年記念として値上げし、高いままの価格になったが、この記事を読むために買い続けることにしよう。

柳田邦男は、本も読んでいるし、JAL広報部時代には「安全」意識の高揚についてのお話を聞いている。宮城大学時代には講演にお招きし「いのち」について語っていただいたことがある。

あたらめて柳田の仕事を眺めた。1972年以降50数年で、著書83冊。共編著16冊。翻訳13冊。計112冊。これがどこまで伸びていくだろうか。

私のブログ「今日も生涯の一日なり」は2004年9月28日から毎日書き続けているのだが、考えてみればこれも「いざ100歳まで日記」かもしれない。

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「名言との対話」12月9日。夏目漱石「世の中は根気の前に頭を下げる事を知っていますが、花火の前には一瞬の記憶しか与えてくれません」

夏目 漱石(なつめ そうせき、1867年2月9日慶応3年1月5日) - 1916年大正5年)12月9日)は、日本小説家評論家英文学者

夏目漱石という明治の文豪については、本人の書いた本を読み、弟子たちが書くエッセイも読み、伝記も何冊か手にしてきた。漱石は人生と仕事に関する名言が多く、私のブログにはそれらが多くある。夏目漱石という大人物については、小論では書ききれない。ここでは、その言葉のいくつかを書くことにしよう。

「大学に職業学という講座があって、職業は学理的にどういうように発展するものである。またどういう時世にはどんな職業が自然の進化の原則として出て来るものである。と一々明細に説明してやって、例えば東京市の地図が牛込区とか小石川区とか何区とかハッキリ分かってるように、職業の分化発展の意味も区域も盛衰も一目の下にりょう然会得出来るような仕掛けにして、そうして自分の好きな所へ飛び込ましたらまことに便利じゃないかと思う」。続けて、これは空想であって、こういう講座はできないだろうが、あれば非常に経済的だろうと述べている。現在全国の大学がやっている「キャリア」」に関する科目は、漱石が空想したものが実現していると言ってもよいだろう。

そして漱石は職業について語る。道楽である間は面白いに決まっているが、その道楽が職業と変化するとたんに今まで自分本位であったはずが、一気に他人にゆだねることが多くなる。道楽は快楽をもたらすが、同じことをしているようにみえても職業となれば苦痛を伴うことになる。職業というものは、一般社会が本尊になるのだから、この本尊の鼻息をうかがいながら生活を送らざるを得ない、という見立てだ。

「牛のように図々しく進んで行くのが大事です。文壇にもっと心持の好い愉快な空気を輸入したいと思います。それから無闇にカタカナに平伏するくせをやめさせてやりたいと思います。」「則天去私」「面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ」

意外なことだが、漱石記念館は東京にはなかった。ようやく新宿区立漱石山房記念館が2017年9月にオープンした。私は漱石に影響を受けた者として10万円の寄付をした。その後、企画展にも何度か通っている。

夏目漱石周辺人物事典』という書物がある。580ページあり、漱石の親族・恩師・友人知己・教え子・門下生・同時代の文学者、138名の来歴、業績以外に、漱石との出会い、接触、交流、受けた影響、与えた影響などを記している労作である。編者の原武哲が40年間の資料収集をもとに82歳で完成させたライフワークだ。確かに根気の前には世間は頭を下げざるを得ない。

夏目漱石ほど、多くの影響を与えた人も珍しい。同時代の友人、知人、読者。漱石山脈と呼べるような優秀な多くの弟子たちの存在。今も読み継がれている小説や、書簡集。私は偉人とは影響力に大きな人であり、近代では福沢諭吉渋沢栄一を両雄と紹介してきた。これに夏目漱石を加えることにしたい。