俳句ワールドを堪能--脳活と恋愛と。

最近知り合った編集工房を主宰する谷村和典さん(俳号は鯛夢)から「俳句」の著書を2冊贈っていただいた。

石寒太・谷村鯛夢「いきいき健康「脳活俳句」入門」(ペガサス)を読了。

いきいき健康「脳活俳句」入門

いきいき健康「脳活俳句」入門

俳句は脳を活性化させるから、老後の健康維持に最適という「老快」のススメの本。

以下、気に入った俳句をピックアップ。

石寒太(「炎環」主宰)
 葉桜のまっただ中へ生還す
 見舞ひ妻桜の真下帰りけり
 生も死もたった一文字小鳥来る
 かろき子は月にあづけむ肩車

漱石漱石の俳句は好きだ)
 菫(すみれ)ほどな小さき人に生まれたし
 飯蛸の一かたまりや皿の藍
 生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉

虚子(子規の「写生」を一歩進めて俳句人口を広げた功労者)
 大勢の子を育て来し雑煮かな
 春風や闘志抱きて丘に立つ

久保田万太郎
 湯豆腐やいのちのはてのうすあかり

金子兜太(1919年生まれ。未だ現役の怪物)
 酒止めようかどの本能と遊ぼうか
 今を生きて老い思わず去年今年

 おい癌め酌みかはそうぜ秋の酒(滋酔郎:江国滋

 紅葉で神が染めたる天地かな(小林凛:小学生俳人

 熱燗の夫にも捨てし夢あらむ(西村和子)
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谷村鯛夢「胸に突き刺さる恋の句−−女性俳人 百年の愛とその軌跡」(論創社)を読了。

胸に突き刺さる恋の句―女性俳人百年の愛とその軌跡

胸に突き刺さる恋の句―女性俳人百年の愛とその軌跡

明治以降百年の女性俳人たちの詠んだ恋愛の名句で綴る女性の歴史がよくわかる快著。

以下、心を打った句をピックアップ。

我が恋は林檎の如く美しき(中川富女)
そなさんと知っての雪の礫かな(沢田はぎ女)
鳴神や、仁王の臍の紙礫(平塚らいてう
呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉(長谷川かな女)
啓蟄や走る自動車皆とまれ(かな女)
青柿落ちる女が堕ちるところまで(かな女)
短夜や乳ぜり泣く児をすてっちまをか(竹下しずの女)
花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ(杉田ひさ女)
足袋つぐやノラともならず教師妻(ひさ女)
月光にいにち死にゆくひとと寝る(橋本多佳子)
着きてすぎわかれの言葉霧の夜(多佳子)
雪はげし抱かれて息のつまりしこと(多佳子)
しゅうせん(ブランコ)は漕ぐべし愛は奪ふべし(三橋鷹女)
白露や死んでゆく日も帯締めて(鷹女)
ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜(桂信子)
羅(うすもの)や人悲します恋をして(鈴木真砂女
借財のなき身のかろさ葱鮪汁(ねぎまじる)(真砂女)
香水やその夜その時その所(武原はん)
人の手がしづかに肩へ秋日和(七菜子)
抱擁や初髪惜し気なくつぶす(品川鈴子)
水着選ぶいつしか彼の眼となって(黛まどか
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オーディブル

  • 藤本義一「言葉と文字」:一日10枚の文章と50ページの読書。
  • 永井路子「歴史をさわがせた女たち」:母系社会という視点。裏平家物語を。

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「名言との対話」5月15日。犬養毅

  • 「順境とか逆境とか、貧富とかいふことを苦にするとせぬは、畢竟目的が定まって居るか居らないかにある」
    • 1855年生まれ。36歳で衆院初当選。連続19期当選。42年間。普通選挙t議院内閣制。軍を厳しく批判。5・15事件で凶弾に倒れる。首相在任わずか5ヶ月。尾崎行雄(1858年ー1954年)とともに憲政の神様と称せられた。号は木堂。
    • 襲われた犬養首相はしばらく息があり、すぐに駆け付けた女中のテルに「今の若い者をもう一度呼んで来い、よく話して聞かせる」と強い口調で語ったと言う。「話せばわかる」というのはいかにも憲政の神様らしい言葉である。
    • 良くも悪くも、どのような環境も、目的を達成する途上にある。まず大いなる志を定めよ。