「国家の品格」(藤原正彦)と「下流社会」(三浦展)

国家の品格新潮新書


新田次郎藤原ていの次男で、大学教授の藤原正彦が書いた日本人論。講演のテープ起こしに全面的に手を入れた文章なのでわかりやすい。同じ新潮新書の養老先生の「バカの壁」と同じように、話言葉で書いてある。ふぬけた日本を叱る本。武士道が一つの鍵という見解には同意見だ。神道仏教儒教とが融合して日本人の魂ができあがっているという考え方は、100年前に新渡戸稲造が「武士道ーー日本人の魂」で指摘している。大人が時代におもねらず言うべきことを言ったという本だ。



下流社会光文社新書



日本の中流社会が崩壊し階層格差がひろがり、少ない「中の上」と多い「中の下」に分裂しつつあるというテーマを、統計を駆使して消費性向から論じた本。階層を分ける鍵は「コミュニケーション力」と言っており、私と同意見だ。買うもの、食べるもの、観るものが違う。学校が違う。交流する範囲が違う。結婚する相手の階層が固定する。階層分化が少子化の原因。数字と諧謔の利いた解説は説得力がある。