石巻市にある「石ノ森漫画館」への訪問は二度目である。もちろん、郷土が生んだ漫画家・石ノ森章太郎を記念した建物であるが、誕生の地に建つ記念館が石ノ森章太郎個人に焦点があたっているのに対し、こちらは個人はもちろんだが、漫画そのものに重点をおいてある。石巻市は漫画をキーワードとした街づくりを行っており、この漫画館はその中核施設である。
まず、アニメ映画を観たのだが、そのホールの入り口の壁に、石ノ森漫画主人公曼荼羅図が掲げてあった。石ノ森章太郎が生み出した多くの漫画の主人公たちが一枚におさまっている珍しい絵である。曼荼羅では中心は大日如来であるが、その場所にはサーボーグ007がおさまっていた。
企画展では、石ノ森章太郎の漫画物語とそれが映画になったポスターなどが並べてあった。「佐武と市捕物帳」は、佐武が三浦友和、市は梅宮辰夫である。名取裕子も出ていた。
「HOTEL」はTBSで今でもテレビドラマをやっているが、これも彼の作品だった。ビッグコミックで1984年から1998年まで連載した漫画がテレビドラマになったのである。主人公の赤川一平は高嶋政伸、支配人東堂克生は松方弘樹、大原社主は丹波哲郎というあのドラマだ。
「化粧師}(けわいし)では、菅野美穂、いしだあゆみ、田中邦衛、柴田理恵などが出演している。「化粧とは外見を装いつつ心を美しくすることなり」。
漫画家の巨匠たちの石ノ森章太郎評が面白い。
・さいとうたかお(1936年生まれ)
「お前(石ノ森)は天才、オレは職人」
「絶え間なく本を読んでいる。知識欲・探究心」
「一つ選ぶとすると、九頭竜」
・ちばてつや(1939年生まれ)
「一つ選ぶとすると、ファンタジーワールド」
・矢口高雄(1939年生まれ)
「類まれなる画質と美的センス、それが萬画を生んだ」
・里中満智子(1948年生まれ)
「創作以外の面でもマンガ界のためにひたすら尽くした人生だった」
「あらゆる分野で、自分こそは石ノ森さんの一番の友人と思っているだろう人は数え切れないほ ど居る」
文章では言葉を自由にたくさん使えるが、漫画というメディアは、少ない言葉でエキスを伝えなければならない。だから常に本質に迫るという知識の吸収の仕方をしなければならない。中途半端な理解のままでは恐くて描けないのではないだろうか。図解に似ているところがあると感じた。
石ノ森章太郎は、宇宙、自然、時代物、科学、刑事ものなど、あらゆる分野を描いている。漫画という表現手段を用いて世界を征服しようとしたのではないだろうか。
今回の発見は、「学習漫画」というジャンルがあることだった。そして各界の著名人たちが監修などの名目で力を貸しているのに感銘を受けた。入門は漫画でよいのではないか。
・「学習漫画・日本の歴史」(責任編集・考証 前東大教授笠原一男)
・マンガ・日本の歴史
・マンガ・世界の文学 「赤と黒」(里中満智子)
・MANGAゼミナール古典入門
「今昔物語」(赤塚不二夫)
・学習まんが人物館シリーズ
「日本の歴史・人物事典」(監修 笠原一男)
・まんがで学習 ことわざ事典
・学習漫画 スポーツ偏
「少年野球」投手編・守備編・
「少年サッカー」
「アスケットボール」
・学習漫画
「病院のしくみ」
「警察のしくみ」
「テレビ局のしくみ」
一口に漫画といっても実に世界が広い。
漫画界は、あらゆるものを漫画で表現し尽くそうという志を持っているとみた。