リレー講座:白井さゆり先生「最近の世界経済情勢と日本経済の見通し」。

リレー講座。白井さゆり先生(慶應義塾大学教授)。タイトル「最近の世界経済情勢と日本経済の見通し」。

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アメリカ:国内政策ーー大幅減税・歳出拡大・規制緩和で短期的には経済はいい。対外政策ーー保護貿易の強化(グローバルセーフガード・安全保障が理由で同盟国も対象・自動車関税25%で圧力)・知的財産権の保護(中国に追加関税)・一国主義(TPP・パリ条約・イラン核合意からの離脱)。慢性赤字の一位は中国(輸入5400億ドル・輸出1200億ドルで赤字は4200億ドル)。アメリカは強制的技術移転と国有企業への補助金投入に不満。中国は1100億ドルの輸入に25%の報復追加関税。12月15日、残りの1600億ドルにアメリカが関税をかけるか?知的財産権の改善と農産物(大豆など)の購入と少しづつの中国の改善で手を打つだろう。米中対立は続く。

メキシコ:関税ゼロのNAFTAからアメリカ優位(厳しい輸出条件。中国とのFTAにはアメリカの合意が必要)のUSMCAへ。2019年末から20120年年初に成立。この交渉は時間がかかった。その教訓を日米FTA交渉に生かし、大統領権限で農産物・デジタルに限った交渉が可能の分野に絞った。日米FTAアメリカが優位(TPPと日欧FTAの水準に合わせた。自動車について、日本政府は25%関税の導入は適用されなかったと言い、アメリカは当面は適用しないという。解釈が分かれている)。

アメリカの実質成長率は2000年から平均2.6%成長。日本は18年間は0.9%成長、最近6年間は1.2%成長。アメリカの個人消費は堅調。しかし設備投資に向かっていない。アメリカは減速していく。

中国:2011年からGDPは減速中でまだ下がる。製造業は弱くなってきた。金融緩和も財政拡大も抜本改革はできない。若干の通貨安にしている。香港(悪化、デモ、経済は麻痺、2019年からは減速。国際金融センターは香港は2位。1位NYC、4位シンガポール。5位上海、6位東京。国際金融センター:ニューヨーク、ロンドン、ホンコンの3都市。5位上海、6位北京、9位深センが力をつけつつある。香港の機能をロンドンが一部を担うか。

最近のテーマ(先進国共通):日本。良好な労働条件・完全雇用・人口減なのに労働人口は増加(老人・主婦のパート)。常用労働者一人あたり賃金は1.0%上昇、物価も1・0%であり、賃金は上がっていない。サービス産業を中心とした生産性が低いから賃金があげられない。米日欧は金利は短期、長期も低金利。株価・地価は上昇。過剰なリスク投資に走る傾向。不動産(オフィス・店舗・タワーマンション)の上昇。これは異常で危険だ。不動産と株のバブル現象。財政赤字250%、現代貨幣理論(MMT)は自国通貨ならデフォルトはない。日本は採用しない。景気後退時には財政投資を拡大という流れ。

現状と見通し(4-5年):成長率は下がるが備えることが重要。日本1.0%-1.1%だった。今からは0.5%くらい。アメリカは2%以上だったが、今からは1.8%に減速。中国は6%、今からは5.5%)。先進国12カ国の共通項は、高齢化。日本は設備投資でけん引してきたが、生産性は低いままだ。設備投資が減ると減少幅はもっと低くなる。政治、犯罪、経済など安定した日本社会に対し世界の評価は高い。「高齢化」は最先端技術で乗り切る。医・薬・ロボット・介護、、などで乗り切れるといい未来が待っている。「環境問題」にも企業は生き残らなければならない。乗り切るカギの一つ目は企業統治の見直し。カギの二つ目は脱炭素社会への対応。

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昼:多摩大総研ミーティング

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帰宅後:ジム2時間。ウオーキング30分、筋トレ30分。ストレッチ30分。バス。19時からは夏井いつき先生の俳句の「クレパト」。

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「名言との対話」12月12日。内藤寿七郎「育児の基本はまなかい(目と目を交わす)にある」。

内藤 寿七郎(ないとう じゅしちろう、1906年10月23日 - 2007年12月12日)は、日本の医学者小児科医
愛育病院小児科部長、日赤中央病院小児科部長などをへて、1956年愛育会研究所長兼愛育病院長となる(50歳)。1978年同院名誉院長。1984年日本小児科医会初代会長。1992年日本人初のシュバイツァー博愛賞を受賞。「育児神様」と呼ばれた。

 愛育会は1933年の皇太子誕生を祝って下賜された基金を中心に賀川豊彦らも加わって立ち上げられた。内藤は初代小児科長である。内藤は南アルプス市での診療と支援のフィールドワークと研究を両輪として活動した。脳科学の東大教授時実利彦先生と御一緒に勉強会まで開いて理論的基盤も追求している

ライフワークともいえる乳児死亡率の減少に取り組んだ。乳児死亡率は戦争末期には1000対3桁を脱し、1960年代には30.7、1970年代には1桁となった。

『内藤寿七郎物語』(丹羽洋子)は、内藤の足跡がそのまま20世紀の子ども・子育て・小児科学を語っていると言われている。聴診器を当てる前に自分の手で温めてから赤ちゃんの体に触っていたし、「さあ、みましょうね」と前ぶりなどで赤ちゃんもニコニコして泣く子はいなかったというエピソードも紹介されている。「いつも子供に信頼を込めて接することが、大切なんですよね」は内藤の心掛けだ。

膨大な著作には、「赤ちゃん」「お母さん」などの言葉を用いたタイトルも多い。『育児の原理』は、赤ちゃんを心のあたたかい人間に育てることは育児の基本であり、人間形成にとってもっとも大切なテーマです、とある。『新・育児の原理』には、育児という初めての体験に戸惑い、不安に感じる新米の親たちに向けて、60余年、赤ちゃんを見守り続け、“育児の神様”と呼ばれた小児科医師が、赤ちゃんの心と体にとって本当に大切なことをわかりやすく丁寧に綴った育児のバイブルという解説がついている

「(小児科は)年をとるとだんだん子供にかえっていくので、もっともっと子供の気持ちがわかるようになって、一生診てあげられる科であるかもしれません」という内藤にとって小児科医者は天職であった。

7番目の子どもであったこと、低体重児だったことから「寿七郎」と名ずけられた。その命名のとおり、101歳の天寿を授かった。育児の神様・内藤寿七郎は「40歳過ぎて、やっと小児科医の顔になれたのかな一」と述懐する。そして「育児の基本はまなかい(目と目を交わす)にある」とする。まなこ(眼)を交わすという意味だ。それは、教師にもいえることであり、人として生きていくうえでの大事な姿勢だろう。