図解塾のテーマは「外交」の「領土問題」でした。日本が抱える領土問題は、中国との「尖閣問題」、ロシアとの「北方領土問題」、韓国との「竹島問題」の3つです。
下記は受講生の図への私の「赤入れ」です。
以下、受講生の感想。
- 今日もありがとうございました。ちょっと人数が少なくて淋しかったけど、本当に濃い2時間でした。本題に入る前の近況についても、ブログを読んでいるので把握はしていますが改めて聞いて、こちらもわくわくするようなことばかりでした。私の方も最近ある本の書評を書くときに全体構成を図解にしたらうまくいったという話をしました。いつか、かつて「知研フォーラム」で連載されていたような本の図解読みに挑戦してみたいと思いました。大変ですが。今回の図解の課題は、寺島実郎さんの「世界を知る力」の中の対中国(尖閣問題)、対ロシア(北方領土問題)を図解にする、というのでした。私は尖閣問題の方をやりましたが、日本の主張、中国の主張、アメリカのあいまいな態度が事態をややこしくしているという構図でうまくまとめられたと思っていました。しかし、今後の方策など、一つ一つの言葉についてただ並べただけで深読みしていなかったことに気付きました。手間を惜しんで浅いものにとどまっていたことを反省しました。最後のまとめの所で、学校の歴史の勉強の話が出ました。たしかに、受験のために年号や人名を覚えたりすることが多かったような気がします。歴史も、ある事件や人物を図解してみると深く理解できると思います。来年からの高校の科目は「歴史探究」「地理探究」など「探究」がたくさん登場します。「探究」のためにぜひ図解のよさを知らせたいな、と思いました。
- 久恒先生、皆様、本日もありがとうございました。今回取り組んだ外交問題は、歴史・地理・政治・経済様々な視点の背景が絡み合っている為、門外漢の自分が単発の宿題ですべてを理解し伝えるには余りに情報過多でした。従って特に「伝えるべき」と感じた安倍外交失敗の本質、つまり「歴史及び国際環境(地理・地勢)認識の不足と、官邸主導型外交(何故外務省排除)」の部分に注力し図解に取り組みました。また「条約締結交渉の歴史」及び「北方領土(4島及び北千島列島)の地理」について理解を深める為、外務省HPを参照しました。結果わかったことは、日本の政権交代のドサクサに紛れてプーチンが仕掛けた、憲法改正という一方的な交渉幕引きにより交渉を「一本勝ち」したという事と、これを許した安倍外交の責任は重いという事でした。国際社会における「日本の沈下」が懸念されている昨今、このまま泣き寝入りすることなく、国際世論を巻き込み明確な筋道をつけていく必要がある事を痛感しました。一方、第二次大戦以降、自国に不利な定義には明言を避け長年にわたり「棚上げ状態」を維持し続けた点で、ロシアとってのグロムイコ外相の功績(なんと28年間ロシア外相に在位)の大きさと、日本が妥協した「2島」の悲しくなるほどの小ささが、併せて得られた収穫となりました(怒り)。次回も宜しくお願い致します。
- 今回もありがとうございました。むずかしい内容でしたがトライしてみて良かったです。キーワードを調べ、時系列や、関係を考えて配置し、つながらないところを調べ、図解をつくる。この作業がまさに学習でした。また、調べきれなかったところをみなさまに教えていただけて、楽しかったです。「グロムイコ」耳から離れなさそうです!すごい方ですね。図解すると興味を持てるようになる。というのを体感した講義でした。本日もありがとうございました。
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名言との対話」7月14日。福田歓一「陳腐で常識的な最小限度のたたき台が役に立つかも知れない」
福田 歓一(ふくだ かんいち、1923年7月14日 - 2007年1月7日)は、日本の政治学者。専門は、西欧政治思想史。
神戸生まれ。学徒出陣で海軍士官となり、復員後東京大学法学部卒業。南原繁から西洋政治思想を学ぶ。東京大学法学部教授、東京大学法学部長、明治学院大学教授、明治学院大学学長を歴任した。1992年から日本学士院会員。
1976年から1978年まで日本政治学会理事長を務めた。近代社会における社会契約の重要性を指摘する一方、雑誌「世界」を中心にアジア諸国の同時代的な政治変動についての論考を書いた。民主主義を尊重し憲法を擁護する立場から、1990年には天皇即位の礼に伴う大嘗祭に反対する声明を出している。
佐々木毅・加藤節編『福田歓一著作集(全10巻)』(岩波書店、1998年)がある。1巻「ホッブスにおける近代政治理論の形成」。2巻「近代政治原理成立史序説」。3巻「政治学史」。4巻「政治・政治学・政治哲学」。5巻「近代の政治思想/近代民主主義とその展望」。6巻「ルソー/ルソーを巡って」。7巻「現代政治と民主主義の原理」。8巻「アジアの解放と民主主義の条件」。9巻「人間形成と高等教育」。10巻「邂逅――研究生活の途上で」。
今回、福田歓一『近代民主主語とその展望』(岩波新書)を読んだ。1977年刊行であり、米ソ冷戦中の世界を背景としている本だ。アマゾンの紹介では、「民主主義という言葉はかつての輝きを失なってしまった感が強い。しかしそれは、体制の違いを問わず最高の価値を付与されていることに変わりはない。本書は、近代民主主義の歴史を克明にたどりつつ、その理想と現実との対抗関係を明確にし、さらに現代政治を構成する原理としての民主主義を浮き彫りにして、新たな展望を拓く」と紹介されている。
自由民主主義、共産主義的民主主義、第三世界の民主主義も含めて、17世紀以降に誕生した近代民主主義という言葉を使うのは、古代民主政治に対しては統一性と共通性があるからだ。そこには個人の人格の尊重と人間の尊厳を確認しようとする要求が根底にある。自由民主主義と共産民主主義の協力によって第二次世界大戦に勝利し、近済民主主義は普遍化したとする。
国民国家はその枠を越えた新しい統合と内部の少数派の分離独立の動きによって引き裂かれている。これを解決するには、軍備の撤廃が避けて通れない課題となると指摘する。ここが「新たな展望」にあたるのであろうか。
この点に関しては、「あとがき」で、この本のタイトルにある「展望」という言葉について説明している。prospectというより、それを得るために近代民主主義を一つのperspectiveの中において見たという。前者は見通し、予想、見込みを意味するが、後者は視点、態度、見方を意味するから、私にはタイトルの「展望」は強すぎる感じがしていたのは、正しかったのだ。
本書は個性的・独創的な論考ではなく、「陳腐で常識的な最低限度のたたたき台」と自嘲しているが、本人もいうように「近代民主主義」の共通の教科書としては意味があるだろう。