京都「風伝館」--橘川幸夫さんの基調講演の要約

メディアとコミュニティの進化:AI、出版業界、ソーシャルビジネスの未来
メディア コミュニティ AI

 

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以下、Ploud Noteによる要約。
📃 基本情報
日時: 2024-06-13 19時から
場所:京都
講師: 橘川幸夫
📝 概要
この講義では、メディアとコミュニティの進化について議論された。AIの役割、出版業界の現状と未来、ソーシャルビジネスの重要性が強調され。個人の表現と関係性の重要性、企業内コミュニティの活性化、そして新しい価値観の創造についても触れられた。
🔖 要点
1. 社会の進歩と模索
**毛沢東のゲリラ戦 **毛沢東のゲリラ戦
**都市を農村で包囲 **都市を農村で包囲しようという考え方。
**社会の進歩 **社会の進歩
**学問の領域 **学問の領域での進展
**社会の模索 **社会の模索
**10年 **社会のやり方の模索が10年かかる。


2. メディアと表現の変遷
**ミニコミ **1970年代に日本中でミニコミが一斉に出た。
**投稿欄 **ミニコミの投稿欄に投稿した経験があり、それがきっかけで出会った人々との関係が始まった。
**メディアでの出会い **現在の交友関係の90%以上がメディアを通じり合った人々である。
ミニコミの時代 ミニコミを作るために写植屋で働きながら勉強した経験がある。
マーケティング時代 80年代マーケティング広告。
**デジタル化 90年代 **1980年代から1990年代にかけてのデジタル化の進展。
**肖像画家と写真家 **肖像画家と写真家の関係性。新しい技術の導入されていく
**メディアの役割 **メディアの役割は表現の土台
**インターネットの影響 **インターネットが自由な表現を可能にしたが、メディアの本質とは異なる。
**システムとコミュニケーション **システムを作ることとコミュニケーションを作ることの両方が必要である
**出版社の変化 **昔の出版社は自分たちが作りたい本を出していたが、現在はそうではない


3. 出版業界の現状と未来
**売れる本の評価基準 **現在の出版業界では、著者のフォロワー数や過去の売上データに基づいて本の内容が決まることが多い。
**編集者のジレンマ **編集者は良い本を出したいが、売上データに基づく評価基準により、編集会議を通過しないため持ち込み原稿を受け取らない。
**シェア商店の重要性 **シェア商店は棚主が自分の売りたい本だけを売る場所であり、個人の選択が重視される。
**書店の現状 **現在の書店では、売れる本が並べられることが多く、店員が自分の売りたい本を選ぶことはほとんどない。
**本の流通システム **戦後に本を全国に配分するための社会的な仕組みが作られた。
**新刊の増加 **現在、1日に約200点の新刊が出版されており、年間では約7万点に達する。
**書店員の負担 **書店員が自分の売っている商品の内容を全て把握することは物理的に不可能である。
**組織の合理性 **組織は創業者の思いから始まるが、創業者がいなくなると組織そのものが権力を持つようになる。
**戦争と組織の命令 **戦争は組織の命令によって行われ、人々は個人的には他人を殺したいとは思っていない。
**AIの役割 **AIは個人の理想を実現するためのツールとして重要である。
**川と海の時代 **近代は川の時代であり、情報や文化が一つの海に集まることで新しい海の時代が到来する。
**産業革命と労働 **産業革命により、機械が労働を代替し、生産性が大幅に向上した。
**競争意欲 **近代の競争意欲は、山登りや探検など、生産性とは無関係な名誉を求める行動に現れる。


4. AIと知的労働の変化
登攀の楽な道から
**難しいルート **登攀ではなくもっと難しいルート。
**複雑なルート **複雑なルートを目指す時代が終わった。
**アルピス登山 **昔のアルピス登山は慎重に行う必要があったが、今では走る登山登場。
**近代の歴史 **初めは誰もやったことがないことをやる時代で、次にスピードを重視するなどプロセスが重要になった。
**AIの役割 **工業は人間を肉体労働から開放し、AI人間が知的労働から解放されることを可能にする。
**知的労働の変化 **AIの普及により、知的労働が個人の表現に変わり、個別の表現が重要になる。
**雑誌の新しい形態 **新しい雑誌は60人の記者が書く。依頼され記事ではなく個人の書きたい表現する。
**クラウドファンディング **定価を客が決められる仕組みを考えている。


5. コミュニティの協力による雑誌作成
**個々の表現 **一人一人が自分の世界を表現し、それをまとめて表現するプロセスが重要である。
**ソーシャル編集 **原稿を全員で読み、意見を出し合いながら改善していく手法。
反省と書き直し
他人の意見を聞きながら自分の文章を反省し、必要に応じて書き直す。
シミュレーション
協力して文章を作成するプロセスをシミュレーションと呼ぶ。
**新しい著者 **このプロセスを通じて新しい著者が生まれる。
**コミュニティの重要性 **コミュニティがあれば雑誌が作れるという考え方。
**責任編集 **責任編集のスタイルで年4回雑誌を発行。
**アクティブシニアのネットワーク **アクティブシニアのネットワークを作り、雑誌を発行する計画。
**月刊雑誌 **将来的には月刊雑誌を発行する予定。
**ミニコミ **市販の本とは別にミニコミを作成している。
**100万部の仕組み **100人の編集長が1万部の本を作れば100万部なるという仕組み。


6. コミュニティとメディアの進化
**編集者の重要性 **編集者は文章の質を高め、読者の視点を考慮して内容を調整する役割を持つ。
**コミュニティメディアの役割 **コミュニティメディアは、個人が選び、参加し、辞めることができる自然的なコミュニティを形成する。
**企業内コミュニティの活性化 **企業内でのコミュニティを活性化するために、社員の興味や関心を共有するメディアが必要。
**シェア書店の概念 **シェア書店は、企業や地域で本を共有し、コミュニティの活性化を図る新しい形態の書店。
**メディアの進化 **メディアは単なる情報伝達手段ではなく、コミュニティの形成や活性化に寄与するものとして進化していく。
**個人の表現と関係性 **個人の表現は関係性の中で生まれ、関係性を作ることが新しい社会を形成する鍵となる。
**企業の役割 **企業は現代社会における最大のコミュニティであり、その中での関係性が重要。
**新しい時代の到来 **古い時代が終わり、新しい時代が始まる中で、関係性を重視した社会の構築が求められている。
**メディアとアートの融合 **メディアをアート作品として捉え、創造的なプロセスを通じてコミュニティを形成する。
**知的労働の重要性 **知的労働が求められる時代において、表現の場としてのメディアの役割が重要。
**パンデミックの影響 **パンデミックが社会に与える影響として、制度や権威の疑義が生まれ、新しい価値観が形成される。
**情報の拡散と制約 **情報の拡散が進む中で、知恵のイノベーションを生むためには情報の制約が必要。
**参加型コミュニティ **参加型コミュニティは、個人が自由に参加し、関係性を築く場として機能する。
**企業の内部メディア **企業内でのメディアは、社員の関心を共有し、コミュニティを活性化するための重要なツール。
**書店の未来 **書店の役割が変わりつつあり、シェア書店や無人書店など新しい形態が登場
**地域プロバイダーの役割 **地域プロバイダーは、地域の情報を共有し、コミュニティを形成する役割を持つ。
**企業の歴史と文化 **企業の歴史や文化を理解し、共有することが社員の一体感を高める。
**メディアの多様性 **メディアは多様な形態があり、それぞれが異なる役割を果たす。
**新しい社会の構築 **新しい社会を構築するためは、関係性を重視し、個人の表現を促進することが重要。
**コミュニティの選択 **個人が自分でコミュニティを選び、参加することができる社会が求められている。


7. 企業の持続性とコミュニティ教育の重要性
**企業の持続性 **企業が400年、500年続くためには、関係性や道具が重要。
**コミュニティ教育 **学校や社員教育とは異なる、独立性を重視したコミュニティ重要。
**社会ニーズと市場ニーズ **企業は社会ニーズに応える商品を提供することが重要。
**自我の訓練 **自我の訓練が重要であり、反抗や独立性を育むことが必要とされている。
**無駄の重要性 **企業において無駄を作ることが、結果的に価値を生む。
**企業のコミュニティ化 **企業は最大のコミュニティであり、イコールを作る試みが重要
**教育の問題 **優秀な人を生成する仕組みが必要であり、それは教育の問題。
**企業のパフォーマンス **企業のパフォーマンスを上げるためには、無駄を代謝する仕組みが必要。
**コミュニティのエントロピー **コミュニティのエントロピーが破れることで進化が促進される。
**工業社会の限界 **工業社会ではエントロピーが破れず、進化が停滞する。
**周辺からの変革 **時代の変革は周辺から生まれるとされており、周辺の人から生まれる
**企業の生態圏 **企業は生態圏の無駄を活用し、状況に応じて柔軟に対応することが求められている。
**無駄の価値 **一見無駄に見えることが、実際には価値を生む力がある。
**コミュニティの構築 **企業内でコミュニティを構築し、関係性を作ることが重要
**雑誌のインパクト **現実で活動している人々が集まり雑誌を作ることで、インパクトが生まれる。


8. ソーシャルビジネスと信頼資本の重要性、新しい価値の創造と編集力の必要性
**ソーシャルビジネスの現状 **ソーシャルビジネスはまだ完全に普及していないが、世の中で増えてきている。
**信頼資本 **金融資本だけでなく、信頼資本という新しい概念が重要である。
**自己生成価値 **表現を通じて自己が生成されるという価値がある
**矛盾のコントロール **経済的な規制と自分がやりたいことの矛盾をコントロールする必要がある。
**意識と構造 **意識が構造を作り、構造が意識を作るという関係
**出版業界の変革 **従来の出版方法とは異なる新しい方法を提供する必要がある。
**編集力の重要性 **今後の社会では編集力がますます重要になる。
**大学のコンセプト **参加型社会のコンセプトを持ち、教育のフェスやフリーマーケットのようなイベントを行う。
**カオスの創造 **カオスの中から新しい創造が生まれる。
**ネット上の限界 **ネット上ではなく、実際のアート作品を作ることが重要。
**社会の感性 **社会の感性に対する主観と客観のバランスが重要。
**労働の価値 **労働の価値が組織の中で機能する商品として見られることが多い。
**自己生成と自我 **自己生成が組織の中で機能することで、自我が希薄になる可能性がある。
**新しい価値の提案 **自己生成価値や他者触発価値など、新しい価値を提案することが重要。
**社会の変革 **社会を変革するためには、命懸けで取り組む必要がある。
**出版の新しい方法 **従来の出版方法とは異なる新しい方法を提供する必要がある。

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第2部は熊野さんと橘川さんのクロストーク

懇親会では全員の自己紹介。

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午前は京都工芸繊維大学を見学

午後は臨床心理の藤原勝紀先生と奥様と過ごす。

食事の後、ご自宅へ招かれる。

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近くの川島織物文化館を見学。日本最古の企業博物館。創業者は川島甚兵衛。

詳細は別途。

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「名言との対話」6月13日。牛尾治朗「無名有力の時代を経ないで有名になるということは、最も危険なことである」

牛尾治朗(1931年2月12日-2023年6月13日)は日本の実業家。ウシオ電機株式会社創立者

兵庫県姫路市出身。旧姓第三高等学校経て東京大学法学部を卒業し、東京銀行に入行。カリフォルニア大学バークレー校大学院留学後、実家を受け継ぎ、1964年ウシオ電機を設立した。

1969年日本青年会議所会頭に就任し、規制緩和や株主尊重の路線を打ち出す。

1995年には経済同友会代表幹事に就任。政府関係の役職も多く、政治への影響力も強い経済人であった。マスコミへの登場も多く、経済界の論客であった。

以下、牛尾の発言をピックアップ

-創業時はビジネスの規模が小さくとも、一勝一勝と重ねて10年20年とすると、取引のスケールも大きくなってきます。

-スケールが大きくなったと言う事は、1つの失敗で致命的なダメージを受ける可能性も高くなった、ということである。

-経営者は不況もちろん、減益減配でさえ恐れてはならない。企業には減益になるような時期でなければ、手が打てない、やりにくいしさがいくつもある。

-運というのは、誰にも平等に巡ってきてるんですよ。その運を使うか、逃すかと言う差があるだけですね。

-いつの時代にも優れた人物は必ず出てくるものであり、見所のある人を見出し、育てていくことが上の世代の重要な役割。

牛尾治朗は「無名有力の時代を経ないで有名になるということは、最も危険なことである」という。実力の蓄積がないいうちに突然世に出ることがある。それは危険なことだ。私が学んだNPO知研では、ある講師から「40歳前に本を出していけない」と言われたことがある。「無名有力」の段階に達して初めて世に問えということだ。私40歳で初めての単著を著したが、その後の世間の反響などからみて納得できる。

早咲きは戒めなければならない。無名無力、無名有力、有名有力というように階段をのぼっていく。じっくりと力をを貯えて咲くのがいいというアドバイスである。