寺島実郎の「世界を知る力」(6月)ーー政治改革。日本再生。ロシア。

寺島実郎の「世界を知る力」(6月)。

概要:日本の政治改革の必要性と現状、国際情勢の変化について解説があった。政治資金規制の改正案、日本の政治の劣化、国会の役割、自民党の派閥解体、野党の動き、ウクライナとガザの戦争、国際刑事裁判所の動き、ユダヤ人とイスラエルの関係、キリスト教ユダヤ教の壁、日本再生の構想、アベノミクス、日本のGDPの低下、国会議員の削減、平成の市町村合併、高齢者の増加と投票率、ロシアの歴史と現状。

  1. 政治改革

着眼点①国家戦略の消失。政治家によるルール作りの限界。

着眼点②世界は戦争中。**ウクライナとガザの戦争が進行しており、国際世論が変わりつつある。国際刑事裁判所イスラエルの指導者に対して逮捕状を出す動きがある。**国際世論がイスラエルに対して厳しくなってきている。ユダヤ人がイスラエルの右派を支えている背景には歴史的な経緯がある。キリスト教ユダヤ教の壁についての理解が必要。

  • **政治資金規制の改正案 **政治資金規制の改正案がようやく出てきたが、半年間の迷走が続いた。**多くの日本人が日本の政治が劣化していると感じている。**国会は規律を正すだけでなく、国家戦略ついても議論すべきである。
  • **自民党は派閥の解体が進んでいるが、全体としては自家中毒のような状況にある。**野党も総選挙を睨んで政権に参加しようとする動きがある。**本当の意味での政治改革について真剣に考える必要がある。新しい政治改革が必要である。
  1. 日本の政治改革と再生
  • **日本再生の構想 **21世紀未来圏日本再生の構想について、岩波の雑誌「世界」に連載していた原稿を集約して本を出版した。
  • **これまでの2ヶ月で外交安全保障と経済産業について話をしてきた。本当の政治改革と日本の国家構想の議論が必要。
  • **1990年代の冷戦終結後、グローバリゼーションの時代に突入し、競争と市場主義の新自由主義が進められ、アベノミクスの金融をいじくることで経済を成長させようとする調整インフレ論と戦前回帰の「日本をとり戻す」が日本の経済に与えた影響は甚大。この間、日本のGDPは世界GDPに占める比重が18%から4%に低下。日本は一瞬だけ繫栄した奇妙な国か?
  • **政治改革の必要性 代議制民主主義、戦後民主主義を鍛え直す必要がある。2050年にかけて3割の人口減。衆院465、参院248の議員の3割215の削減で1年430億円の削減(1人2億円)。政治に緊張感を持たせる。平成の市町村合併で地方議員の数が約3万人減少したが問題はなかった。代議制民主主義には緊張感が必要であり、政治家はリーダーとしての見識を持つことが重要。
  • **国民各層が参加する広い意味での国民会議が必要 参加のプラットフォームの充実を。2050年には日本の人口の4割が高齢者になる。有権者の5割。有効投票の6割。**高齢者が社会的な意識を持つことが重要であり、高齢者の参加が求められる。
  • **戦後民主主義を成熟させる努力が必要。戦前の日本には女性の賛成権がなかったが、戦後民主主義により女性の権利が拡大したなど民主主義の大きな進展があった。

3.ロシアの政治、宗教、経済の歴史と現状

  • **チェカは革命に反対する制度を取り締まるために作られ、その後KGBとして進化し、ロシアの情報機関として重要な役割を果たしてきた。
  • **プーチンKGB出身であり、その経歴が現在のロシア政権の中核を形成している。プーチンユダヤ系のオルガルヒを排除し、経済を国営化することで国民の支持を得た。ロシア正教は政治を正当化する役割を果たし、プーチン政権を支持している。ピョートル大帝はロシアの近代化を推進した、プーチンも彼を称賛している。
  • **ロシアの近代化の問題点。ロシアは産業と技術の導入に注力し、民主主義や宗教改革には関心を示さなかった。
  • **ロシアと日本の類似点 ロシアと日本は共に欧米のようになりたくてもなれない壁があり、技術と産業の近代化に注力してきた。
  • **日露関係の現状。日本とロシアの経済関係は継続しており、日本はロシアに中古車や天然ガスを輸出している。
  • ロシア政教は政治と密接に結びついており、プーチン政権を正当化する役割を果たしている。プーチンはロシア政教を重視し、政教大国を目指す姿勢を示している。
  • **ロシアの歴史的背景。ロシアはモンゴルの占領により西欧から断絶され、ルネッサンス宗教改革に参加できなかった。プーチンはオルガルヒーを排除し、国営化を進めることで国民の支持を得ている。ロシアの民族宗教 **ロシア政教は民族宗教としての役割を果たし、政治を正当化する。ロシアは産業と技術の導入に成功したが、精神性の近代化には失敗した。プーチンKGBが生んだ怪物。専制と秩序が大事。ロシアは経済制裁と孤立の中で中国への依存を深めている。プーチンのメンターであるキリル総司教プーチン政権を正当化している。ロシアの宗教と戦争 **ロシア正教プーチンの戦争を正当化し、国民の精神的支柱となっている。ロシアの民族宗教と政治権力が一体化する危険性が見られる。ロシアは西欧の歴史的発展に参加できず、その影響が現在のロシアに続いている。
  • **日本の対ロシア戦略:日本はロシアに対して独自の長期的な戦略を持つべきであり、欧米とは異なるアプローチが必要だ。

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(PLAUDNOTEのメモを、図メモをもとに加筆修正という編集を行った。)

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「名言との対話」6月16日。梶山俊夫「何百年という、時も場所も超えて、作者と見る側とがごく自然な呼吸で、同次元で交感することができる。ぼくもそんな絵が描けたら、それが一番の理想だと思った」

梶山 俊夫(かじやま としお、1935年7月24日 - 2015年6月16日)は、日本絵本作家。享年79。

1962年、抽象画でシェル美術賞を受賞して渡欧し1年ほど滞在。再び家族での渡欧を計画中に、奈良時代の廃寺跡・国分寺跡を巡る旅で、「畑や田んぼのあぜ道を歩いている自分が、一番正直な我が身の姿」だと気づき、日本で絵を描こうと決心した。

国宝「鳥獣戯画」を見たとき、作者である鳥羽僧正が「絵巻を挟んで向こう側に座っていって、じっと見ているような気がした」。同行の福音館書店の編集者に「絵本をやってみませんか」と声をかけられ、絵本の世界に入っていく。「何百年という、時も場所も超えて、作者と見る者とがごく自然な呼吸で、同次元で交感することができる。ぼくもそんな絵が描けたら、それが一番の理想だと思った」のだ。木島始と組んで「鳥獣戯画」を絵本にしたのが、「かえるのごほうび」である。

「かぜのおまつり」でブラチスラバ世界絵本原画展で金のリンゴ賞、「いちにちにへんとおるバス」で講談社出版文化賞、「こんこんさまにさしあげそうろう」で絵本にっぽん大賞を受賞をするなど、絵本界で成功する。友人の天野祐吉は「基本的にアップもロングもない、つねに対象と一定の距離をおいて描いている」と語っている。人間味あふれる、ユーモラスな筆致は、みる者の心をほのぼのとさせる絵である。

私がみた 『白い鳥』という絵本は、文章を書いた椋鳩十大分県の九重の山々を歩いていたときに出会った一人の老婆が話をしてくれた「朝日長者」の物語を土台とした民話調のストーリーである。長者の屋敷と21の蔵、100人の家来、500人の召使がいた。長者たちは、村人をいじめたり、米でできたもちに矢をはなったりした。突然に大地がゆれて、泥水がでて、たんぼは沼地にかわった。村人は山を切り拓いて平和に暮らすというストーリーだった。

2008年に訪問した手塚治虫記念館では漫画の歴史を展示していた。鳥獣戯画が漫画の原点とされていた。北斎漫画、地獄草子、江戸時代の鳥羽絵本、明治時代のポンチ絵(日清から日露にかけて戯画錦絵を描いた浮世絵師の描いた石版刷り小型マンガ本。近代漫画の出発点)、明治の宮武外骨の「滑稽新聞」、職業漫画家第一号の北沢楽天の「東京パック」、小杉未醒の「コマ画」、そして大正時代に朝日新聞で活躍した漫画記者・岡本一平、4コマ漫画の最初の作品である「ノンキナトウサン」(報知新聞)と続く。漫画にも長い歴史と人物が連なっているのだ。その流れの中で手塚治虫という天才が花開いた。

コマわりがなく、文章もついている絵本の世界も、鳥獣戯画の流れの中にある。平安時代末期の鳥羽僧正との出会いによる影響が梶山俊夫という絵本作家を生み、その作品群が現代の子どもたちの情操に影響を与えているのである。 

白い鳥 (おはなし名作絵本 13)

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