「宮尾登美子の世界」(仙台文学館)

NHK「義経」の原本を書いた作家・宮尾登美子の人生と作品、秘蔵の品々を紹介する展示が仙台文学館で行われている。1926年(大正15年)生まれで、今なお健筆を振るう。昨年「宮尾版 平家物語」全4巻(青龍之巻・白虎野巻・朱雀之巻・玄武之巻)の完成を記念して行われた展示である。


46歳の「櫂」が太宰治賞を受賞してから作家としての人生が花開くというから遅いスタートだ。5月21日の日記には「第9回太宰治受賞の知らせ、泣く」とある。1978年には「一弦の琴」で直木賞を受賞する。

「春燈」「朱夏」「仁淀川」「寒椿」「鬼龍院花子の生涯」「「序の舞」「蔵」「伽羅の香」「天涯の花」「クレオパトラ」など女性の一生を描いた傑作が多い。


作家を志して57年、作家としては32年、下積みの無名時代が長い。

今年79歳の宮尾は生涯で三度、持ち物の全てを失っている。満州での難民せ生活、実家の戦災、故郷からの上京。波乱の人生でもある。


整然とした字で書かれ、うづ高く積まれた原稿用紙の束に驚く。いまだに万年筆による手書き原稿。こよなく着物を愛する人である宮尾登美子は着物姿の写真が多い。同時代の女流作家や女優からの手紙、そして仲代達也からの達筆の手紙も見る事ができた。


「私はいま、書きたい、書きたい、書きたい、書きたいばかり。しかし目の前には繕い物が山積みしている。あきらめるべきか?否、私は両方やる」(1947年7月4日の日記より)


東京の自宅の書斎、洞爺湖が見える北海道の別荘などの写真も興味深く見た。


その文学館で偶然、オクトパスという演劇グループが結成10周年記念の「修羅ニモマケズ」という公演をやっていた。雨が降ったので屋外から、文学館のエントランスに場所を変更したのだそうだ。「天才・宮澤賢治の作品を乱読・誤読・斜読・積ん読・熟読・夢読し、換骨奪胎・構成を繰り返すこと数秒か、数年か。賢治の生まれ変わりを自称していた石川裕人が大嘘つきの夢から醒めて、恥ずかしげも情けなく賢治さんへの謝罪をこめて書き下ろす異色の賢治ワールド」というすごい謳い文句だった。賢治役の若い役者の雰囲気が宮澤賢治の姿を髣髴とさせる。