3月14日と15日の朝刊に、イラク戦争の節目にあたっての主要五紙の社説を比較検証したものだ。主要五紙とは、朝日、毎日、読売、産経、日経の五紙である。イラク戦争で米国が泥沼に入り込みあえいでいるが、この戦争の大義は変化してきた。
最初は、「テロとの戦い」であった。そして次に「大量破壊兵器」になり、そして「イラクの民主化」と米国の戦争理由は変わって来た。
このプロセスの中で、新聞各紙の社説はどのように主張してきたのだろうか。
14日の検証報道から。
2003年3月20日の開戦日・翌日の社説。
・朝日:私たちはこの戦争を支持しない
・毎日:見切り開戦を支持できない
・読売:責任はイラクの側にある
・産経:日本は対米支援に全力をあげるべきである
・日経:米国支持の政府方針はやむをえない
2004年10月米イラク調査団の最終報告(大量破壊兵器はなかった)を受けて。
・朝日:戦争の正当性は全否定されたも同然である
・毎日:率直な反省があっていい
・読売:大量破壊兵器は見つからなかったが、脅威は間違いなく存在していた
・産経:大量破壊兵器の問題は開戦理由の一つでしかない
・日経:大量破壊兵器情報のずさん。大統領や小泉首相の対応の是非も問われるべきだ
主要五紙の論説責任者の現時点での総括も興味深い。
・朝日:開戦反対の主張は正しかったことは明らかだろう
・毎日:「見切り開戦は不支持」主張は変わらぬ
・読売:米英の武力行使を支持したのは間違っていなかった
・産経:武力行使支持は妥当だった
以上四紙については論説責任者の顔写真と総括が掲載されており、社説の主張に大きな隔たりがあるにもかかわらず、それぞれが主張の妥当性について語っている。しかし日経新聞については、論説責任者の総括は紙面に掲載されていなかったのは不思議である。
紙面の片隅に以下の注があった。
「インタビューは社説を比較した主要五紙の論説責任者に申し込みました。日本経済新聞社からは「ときどきの情勢を踏まえて議論し、誠実に、また考えを過不足なく書いてきたつもりなので、一連の社説でご判断していただきらい」(論説委員会)との回答がありました」。
日経は「米国支持の方針はやむをえない」としていたが、大量破壊兵器がなかったことがわかった時点では、「大量破壊兵器情報のずさん」を非難し、大統領や首相の対応を問題にしているから、この検証報道に対応できなかったのではないだろうか。
15日の新聞では「自衛隊派遣」に関する報道(2003年12月10日)の検証が行われている。
賛成した読売新聞と産経新聞
慎重な対応を求めた毎日新聞」
と記事があるが、日経については論評されていない。
改めて日経の社説を読んでみたが、判断を避けたという印象を持った。
この検証報道は、16日以降も続くとのことだ。
「あす以降は、言論人に自身の言論やメディアの報道ぶりを振り返ってもらう」とある。
この朝日新聞の検証報道は優れた企画である。