吉野彰の言葉

今年のノーベル化学賞は、旭化成名誉フェローの吉野彰さんが受賞した。 携帯電話パソコンなどに用いられるリチウムイオン二次電池の発明者の一だ。

文藝春秋2017年8月号に立花隆によるインタビューが載っている。リチウムイオン電池は、世界で年間10億個以上が生産・使用されている現代社会の基本的エネルギー源だ。それはすでに自動車、航空機にまで入りこんでいる。その基本特許を持っているのは旭化成である。吉野は二人の先達に影響を受けている。フロンティア電子論の提唱者で、1981年のノーベル化学賞受賞者の福井謙一。ポリアセチレンという伝導性高分子の発見者で、2000年のノーベル化学賞受賞の白川英樹。 ポリアセチレンを陰極、そしてコバルト酸リチウムを陽極にしてリチウム電池が生まれた。「自動車に乗せたエネルギー密度の高いリチウムイオン電池を社会全体で共用するクラウド充放電システムを作ればよい」と夢を語っている。

以下、吉野彰の言葉を拾ってみた。

「常にお客さまが、そして世の中がいったい何を求めているのかということを、日常生活から探り出すことと、それを達成する手段としての技術をどうやって繋げるかということです。でもその技術への繋がりは、何か新しい発見はないかと真剣に考えているときより、ヒマでボヤッといろいろなことを考えているときに、自然と浮かんでくるんですよ」。

「1995年のIT変革は情報分野で起こりました。私は、次の大きな変革はエネルギー分野で起こると思っています」。

「実際は、研究・開発のチャンスはたくさんあります。確かな目標と、たゆまぬ努力があれば未来に可能性が生まれます。私自身、これからも、第一線の研究者と同じ目線で、新しい研究分野(目標)に挑戦していきたいと思っています」。

「全英で、しぶこさんが勝たれましたよね。明るい話題で子供の人生が変わるきっかけになるといい」。

「この先10年間に起こる事を正確に洞察することは、この10年間の流れを正確に把握、総括したうえでその延長線上としてこれから先10年を見通すことである」

座右の銘は「みのるほどこうべを垂れる稲穂かな」

「今までと変わらないと思うが、私の言葉は重みを持つようになる。日本の産業が活性化するように発信していきたい」

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翌日10日の日経新聞の記事から。

「無駄なことをいっぱいしないと新しいことは生まれてこない。自分の好奇心に基づいて新しい現象を見つけることを一生懸命やることが必要」

「頭が柔らかくないといけない」「最後まであきらめない」

再生可能エネルギーの世の中をつくるため、リチウムイオン電池が環境問題に対する一つの答えになる。それが受賞対象となったと思う」

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「名言との対話」10月9日。輪島大士 「裸になったので、また裸で出直します  」

輪島 大士(わじま ひろし、1948年(昭和23年)1月11日 - 2018年(平成30年)10月8日)は、石川県七尾市出身で花籠部屋所属の大相撲力士、第54代横綱全日本プロレス所属のプロレスラー、タレント。

輪島はスーパースター、名横綱、天才力士、輪湖時代の主役、大卒初の横綱、黄金の左下手投げ、、と呼ばれたことでわかるように相撲界の至宝だった。通算で14回の優勝を果たしている。最後まで四股名は変えず、輪島で通したには珍しい。

花籠親方の長女である輪島の妻の証言を記した『真・輪島伝  番外の人』は2019年7月8日発刊の衝撃の書だ。以下、その内容。

八百長相撲の清算に使ったのです。相撲界での隠語で「チュウシャ」という。星の買取だけでなく、賞金も全て渡していたとの噂もあった。星の取引は負けて返すか、金で解決する。横綱は買取が常識だいわれている。遊びに忙しく稽古不足の真島は1場所に何番か白星を買っていたようだ。

「裸」発言は、引き継いだ花籠部屋が自身の不祥事などで消滅し裸になって、相撲界からプロレス界に転出した時の言葉である。当時はこの転身を不思議に思っていたが、裸一貫での出直しだったのだ。輪島なりの決意の言葉だが、成功はしなかった。

「番外」とは、拉致外というか、話にならないという角界の隠語である。番付けの外だから、悪い意味で使われる。実績は番付のトップだが、実像は番外だったのである。  

真・輪島伝 番外の人

真・輪島伝 番外の人