ユーチューブで「遅咲き人伝」シリーズを始めます。

「遅咲き偉人伝」をテーマとしたユーチューブ番組を作ることになりました。

月曜日の最初の打ち合わせの最中、その場で準備無しに「予告編」の動画をつくることになりました。

橘川幸夫さん「本日、20時30分に定例会があって、久恒さん、松本くん、橘川が参加。そこで久恒さんの「遅咲き偉人伝」の話になって、その場で、番組収録(笑)。シリーズの開始です。これは、老人ホームなどに提供していきたい。収録終わって一時間でYou Tubeに公開できる。私的な対話があっという間に公的メディアになる(笑)」

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  • 図解ウェブの大幅改定のミーティング。
  • NHKラジオアーカイブス「屋良朝苗」の1回目・2回目を聴いた。尊敬すべき人物。
  • 1万歩。
  • 明日の「図解塾」の準備で、「梅棹忠夫著作集」第14巻を再読。

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「名言との対話」5月10日。桑原武夫「汚い金をきれいに使うのが文化ちゅうもんや」。

桑原 武夫(くわばら たけお、1904年明治37年)5月10日 - 1988年昭和63年)4月10日)は、日本フランス文学研究者、評論家 

人文科学における共同研究の先駆的指導者。共同研究システムを発明し、日本の人文科学分野の研究における数々の業績を積みあげた。文化勲章受章。

桑原武夫『事実と創作』(講談社)から。

第一部「事実と創作」、第二部「現代日本文化の反省ーー第二芸術論」。第三部「歴史と文学」。日本文学史上で大きな論争となった「第二芸術論」については、私も中学高校時代から聞いてはいたが、その内容を知るいい機会になった。

「一句だけではその作者の優劣がわかりにくく、一流大家と素人との区別がつきかねるという事実である」。小説や近代劇と同じようにこれにも「芸術」という言葉を用いるのは言葉の濫用ではなかろうか」。「「芸」というがよい、しいて芸術の名を要求するならば、私は現代俳句を「第二芸術」と呼んで、他と区別するがよいと思う」「ものいへば唇さむし秋の風、というような精神はボクメツした方がいいと思うけれども、俳諧全体 をボクメツしろなどというのではありません」。「和歌や俳句は私には近江八景のような気がする。、、高みの見物だといわれても仕方がない。、、短歌の運命はしょせん新八景である。近ごろ短歌は読んで感動したことはない」。

俳句と短歌という日本独特の短詩について、厳しい指摘をしている桑原武は、「私をはぐらかすことなしに慰め、喜ばし、力づける 文学がほしい」という。1946年、42歳のとき雑誌『世界』に「第二芸術論」を発表した。それはトルストイミケランジェロなどが代表する本物の芸術を第一芸術と呼び、俳句などを第二芸術と呼んだものだった。これに対し高浜虚子などは「芸術として認めれたのだから、第二でもいいじゃないか」と開き直った。29歳の俳人角川源義は、激しく反論している。地下の力こそ俳句の生命であり、庶民の娯楽こそ俳句の宿命であり、娯楽に文学意識などない。遊びの文芸というなら、漱石の「猫」は遊びの文学だ。芸術に第一も、第二もないという趣旨であった。

私小説を嫌い、短編を嫌い、主張なき抒情を嫌う桑原は「歴史を深めるものは小説だ」。「ある大作家に興味をもったら、その全集を全部読んでみること、これは是非すすめたい」。「偉大な人間とは最大の影響力をもつ人間だといってもいい」。「多産性こそ大芸術家の特性であって、寡作を誇りとする名人気質はつまらぬものである」という主張をしている。『事実と創作』を読むと、敢闘精神にあふれた若き桑原武夫の像が浮かんでくる。

「一生では足りない。十生生きたい」、といったスタンダール、そして鉄斎の80歳からの勉強ぶりをあげている。プルーデルは晩成で、彼の真に個性的な作品は41歳からはじまるとする。日本人で評価するのは、漱石、啄木、鉄斎、柳田、玉堂、白石、百合子などである。

「独創は情報の交錯から生まれる」 という信念の持ち主の桑原は、フランス文学を対象とした共同研究を指導したことはよく知られている。この本でも、各研究者が孤立しているかぎり、学問の孤立化は避けがたいから、「日本フランス文学会」のごときものの設立を計画していると語る。思想やその地盤としての社会の理解をしながら西洋を日本趣味をもって味わおうとする。それは各分野の専門家を集めた総合研究の試みであった。

桑原武夫は相手にしゃべらせ、誤っているところは、穏やかに諭すという度量と、自らの力が充実している年代に、後進を指導、育成することで人は育つという考えで、前代未聞の共同研究を成功させている。その結果、梅棹忠夫梅原猛上山春平鶴見俊輔多田道太郎ら多くの文化人の育ての親となったのであるから、その影響力はきわめて大きいものがある。

桑原武夫には名言も多いが、「汚い金をきれいに使うのが文化ちゅうもんや」を採りたい。金を集めるのは難しい。しかし金を使うのはさらに難しい。優れた事業家が絵画などの芸術品を集めてコレクションを楽しむのは、贅沢でもあるが、金の使い方という意味では優れている。そういうコレクションが美術館に育ち、多くの人の目を楽しせている。文化人は経営者に金を使わせることができれば、社会に大いに貢献できる。そのときの殺し文句がこれだった。