リレー講座:柯隆先生(東京財団主席研究員)「米中貿易戦争の政治経済学とチャイナリスクの制度分析」。

リレー講座。柯 隆先生(東京財団主席研究員)「米中貿易戦争の政治経済学とチャイナリスクの制度分析」。

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・中国建国70周年式典の軍事パレード:兵器は使えないおもちゃ。指導者たちは暗い顔。

・香港のトラブル:中国からの逃亡犯の引き渡し条例への講義。恣意的な運用拡大を恐れている。自由と法の秩序を守るために立ち上がった。1984年の中英の共同声明「50年間は一国二制度」。これは守られるはずがない。憲法すら守らない国だ。スコットランドのような連邦制にすべきだった・香港の中国化は進む。5番目の直轄地に。いずれ沈静化する。移民となって英連邦にいくだろう。国際金融センターはシンガポールに移る。英語、法の秩序、自由なマーケット、金融エリートの存在が条件。

アメリカとの同盟と経済の結びつきが深い中国。日本は悩ましい。米中貿易不均衡は産業構造の問題であり解決しない。貿易戦争の本質はハイテク戦争であり、覇権争いで長期化する。第五世代「5G」を巡る戦い。4G時代はスーパーコンピュータが情報処理していた。5G時代は、データ集のスピードが速くなる。その情報を処理するのは量子コンピュータ。日独米印中が先行しているが中国は国家プロジェクトであり完成形に近い。5Gと量子コンピュータの結合でアメリカの軍事情報のセキュリティが解読される恐怖。

・中国はどうなる?:物価と失業率が同時に上昇中。食品価格は8%上昇、とくに穀物。25%の関税。豚の飼料代、トンコレラによる殺処分、豚肉は半減。工場の海外移転で数千万人が失業。失業率は10%以上だ。自動車2018年マイナス2.8%、2019年1-8月マイナス13%。実態はゼロ成長かマイナス成長! 金融政策はとれない、財政政策も税収はマイナス30%で財源がなく公共工事もできなお。有効な手がない。

・アリババのジャック・マーやレノボのトップが引退。共産党による統制の強化の進行。中国指導部の「強制ひながら発展させる」という「チャンレンジ」はどうなるか?

・日本は?難しい立ち位置。日本には国際戦略がない。シンクタンクもない。人材を育てる教育機関に問題がある。教区改革をやらなければだめだ。日本の学生は動物園の動物、米中の学生はサファリパークの猛獣。

旭硝子(AGC)の例。4Gのアンテナは200m。5Gは200m。ビルや車のガラスに1枚のガラスをつけて間にアンテナを設置するという高付加価値戦略。人材育成!

・中国とどう向き合うか? 日本は理、中国は情。かみ合わない。日本人はものづくりに情熱。中国人は販売に熱心。

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多摩大総研ミーティング:道の駅、財団、城南信金、ブルー・グリーン賞、企業訪問、

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「名言との対話」10月10日。佐々淳行「危機管理のノウハウ」

佐々 淳行(さっさ あつゆき、1930年12月11日 - 2018年10月10日)は、日本の警察防衛官僚危機管理評論家

警視庁入庁。1969年の東大安田講堂事件、1972年のあさま山荘事件、1975年のひめゆりの塔事件等で主要な役割を果たす。1977年防衛庁に出向。1986年防衛施設庁長官。同年初代内閣安全保障室長になり、中曽根・竹下・宇野の3代の総理に仕えた。退官後は政界進出を勧められたが、危機管理をライフワークとしてフリーで活動した。

年譜をたどってみると、日本を震撼させたあらゆる事件と危機に立ち会っていることがわかる。佐々には「事件を呼ぶ男」「さすらいのガンマン」「ダーティー・ハリー」「縦社会を横に生きた男」などの異名がある。その仕事ぶりが見えるような異名だ。

生涯の師であった後藤田正晴には「後藤田五訓」というは官僚に対する訓示がある。どの仕事にも当てはまるものだ。1.出身がどの省庁であれ、省益を忘れ、国益を想え 2.悪い、本当の事実を報告せよ 3.勇気を以って意見具申せよ 4.自分の仕事でないと言うなかれ 5.決定が下ったら従い、命令は実行せよ。こういった訓示を実行したのが佐々である。その後藤田は佐々を「血刀下げて裸馬に乗って単身敵陣に斬り込んでいく奴」と評価してている。

佐々の代表作『危機管理のノウハウ』三部作(PHP)は、危機管理のバイブルだ。1979年のPart1「信頼されるリーダーの条件」。1980年のPart2「80年代・闘うリーダーの条件」。1981年のPart3「危機に強いリーダーの条件」。事故やハイジャックなど危機にあう可能性がある航空会社にいた私ももちろん読んでいる。そして佐々の講演会にもでかけて具体的で急所を突いた話に感銘を受けたことを思い出す。仙台時代には東北新幹線でおみかけし、挨拶し相手をしてもらったことがある。同じ成蹊高校出身の先輩として野田一夫先生のことが話題になった。

 佐々淳行は「危機管理」という日本語の創造者だ。湾岸危機の際にマスコミが常用し日本語になった。改めて『新・危機管理のノウハウ』という本を読んでみた。

 湾岸戦争では、本来「危急存亡」の問題を「損得勘定」ではかり「危機管理」ならぬ「管理危機」におちいったのではないかと述べている。危機管理(クライシス・マネジメント)における管理危機(マネジメント・クライシス)だ。自己管理できない組織は危機管理はできない。油断、驕り、沈黙、本末転倒、、によって危機が一層深まる。

 自己管理できないリーダーは組織管理ができない。よく管理された組織なしでは危機管理はできない。自己管理とは、まず日常の体の健康管理、そして平時は意図的悲観論者としてふるまい、非常時には意図的楽観者であろうとする自己統制できる心の健康管理のことだ。私たちも健全な肉体と健全な精神を維持する努力を続けたいものである。

 この本の中に「異常なし」という定期報告についての記述がある。自動的に報告が定点観測のようにあがってくる態勢が重要ということだ。部下や現場からの定期的な報告に接する中で危機の接近を感じ取りながら、危機管理が管理危機にならないように早め早めに手を打っていくこともリーダーの役割だ。この点は組織運営のキモでもある。