「1億ドルの男」松坂大輔が大リーグ・レッドソックスの一員として初登板を勝利で飾った。
多彩な球種、伸びのある速球、配球の素晴らしさ、華麗なマウンドさばき。人なつっこい笑顔が印象に残る素晴らしいデビューである。西武時代の松坂にはあまり関心はなかったが、海を渡った大リーガー松坂のファンとなることにした。「大リーグのマウンドに立つことは、夢ではなく目標だった」と語る松坂は、インタビューでもコメントがなかなかいい。今年はまず20勝投手となると予想しておこう。
私は打者では松井秀樹のファンである。日本ではあれほど敬遠フォアボール責めにあってもたった一つの失投を見逃さずホームランにする精神力、そして淡々と振り返る語り口に感心している。「心が変われば人格が変わる。人格が変われば環境が変わる。環境が変われば運命が変わる」という言葉を座右の銘としている松井の冷静なコメントも興味深い。松井の年俸は渡米直後から倍増して15億円である。
ゴルフでは今年は宮里藍ちゃんはアメリカツアーで優勝するだろう。20歳過ぎの藍ちゃんの賞金は軽く1億円を越しているし、今後どこまで伸ばしてくるか見ものである。藍ちゃんのコメントを聞いていると頭がいいなあと感心することも多い。プロテニスプレーヤー然り。
2005年11月現在の数字で少し古いが、ゴルフの尾崎将司は生涯賞金26億円、岡本綾子の生涯賞金が8億円、そして野球の日本最高年俸が6億円の佐々木、5億円の清原。タイガー・ウッズの昨年の獲得賞金は6億弱で生涯(現在29歳)で47億円。日本の丸山茂樹(35歳)は2億円。
比べてみると、やはり、メジャーの年俸は高く、夢がある。
スポーツの世界には国境はない。
また、アートの世界も世界で通用する演奏家、アーティストも多くなっている。
実業の世界はどうか。日本でも証券会社、コンサルティングファームなど外資系企業に勤める人たちの収入は、日本のサラリーマンと比べると雲泥の差である。私の親戚にも中央官庁をさっさと辞めて外資系企業に転職した20代の若者がいるが、都内のど真ん中に高額の賃料を払って住んでいる。「仕事も面白いし待遇も抜群」だそうだ。
グローバル化した職業では、サラリーも世界標準になっているということである。世界のトップクラスが集い競う職業では、今後もプロフェッショナルの価値は上昇しつづけるだろう。そして誰でもできる仕事は多数の競争者の中で、賃金には下降圧力がかかっていくことになる。そういう2極化が進行している。
国内市場で飯を食っている業界では、当然のことながら国内スタンダードに引っ張られるから、価値を生み出す能力ほどの差はでない。しかしここでもIT化の進行に伴って、掛け替えのない能力を持った人の価値は上がり、技術の蓄積のない者には厳しい世界となりつつある。
いわゆる格差の進行である。
大学での新学期が始まって学生と接する機会が増えてきたが、大リーガー松坂大輔投手の初勝利の話題によって、若者を取り巻く環境の変化と進むべき方向について改めて考えさせられらた。