「梅棹忠夫 語る」−和辻哲郎・芥川龍之介・丸山真男をばっさり

梅棹忠夫 語る」(聞き手 小山修三)という日経プレミアシリーズの新書を読んだら、私の名前が出てきて驚いた。

「説明するのに図示というのは非常に大事なこと。絵で描いてわかるように示す。久恒啓一という人が図解法をやっているけど、図解法は何にでも使える。」

この本には、梅棹忠夫先生の本音が随所に出てきたとても面白かった。

  • わたしはある意味で不勉強でよかったのだと思う。あまり他人の書いたものを一所懸命、読んでいない。一応読んでいるけれど、それほど没入することがない。自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の頭で考える。これが大事や。
  • 「フロンティア」というものは間違いなく興奮する。
  • わたしのは文明論ですよ。世相論とちがう。世相時評論とちがう。、、だいたい時評をやるからおかしくなるんです。
  • 要するに、わたしは自分で見たものしか信用しないし、他人の繰り返しはできないのや。
  • 複文というのはわかりにくい。単文の連続で書かんと。
  • 文章で一番大事なことは、わかるということ。自分もわからないくせに、そのわからない言葉を使う。それは、かざってるからや。
  • 「分類するな、配列せよ」。機械的に配列や。それでいったらいいんや。大事なのは検索。
  • 「思いつきこそ独創や。思いつきがないものは、要するに本の引用、ひともまねということやないか」
  • 学問とは、ひとの本を読んで引用することだと思っている人が多い。
  • わたしの人生を決定してるのは、モチーフは遊びや、プレイや。
  • 学問から思想は出てこない。思想から学問はあるな。
  • なぜ自分のオリジナルの観察を大事にしないのか。
  • わたしは若い人には、本質論をやれと言いたい。
  • わたしは基本的にプレイボーイなんや。
  • 一番ちがうところは、マルクスには「べき」がある。わたしには「べき」がない。
  • だいたい漢字信仰は江戸時代や。江戸時代の日本のインテリは全部、中国かぶれ。
  • 世界の四大文明というけれど、なぜそこに縄文をいれないのか。、、、どうして考古学者はああバカなんや?
  • 「供給してみい、そうしたら需要がでてくる」。
  • 振り返るとわたしは、チャンスはわりに着実につかんでる。
  • 決断ということはひじょうに大事や名。決断して実行する。
  • わたしは基本的に老荘の徒やから、ニヒリズムがある。
  • 明るいペシミストや。
  • いいリーダーの条件とは、フォロワーシップを経験し理解することやろな、
  • フォロワーシップとは盲従ではない。自分の意志や判断は持つけれども、隊長にはしたがう。
  • 隊長は「わしが、わしが」でなくて、押されてなるものや。

この本には、著名な学者に対する辛辣な批評が載っている。これが実に愉快だ。

  • 和辻(哲郎)さんという人は、大学者にはちがいない。ただ、「風土」はまちがいだらけの本だと思う。
  • 和辻っていう人は、ほんまに大スカタン。どうしてあんなまちがいが起こったのか。
  • 芥川龍之介の作品はおもしろいけれど、紀行文はまったくつまらん。
  • 丸山真男さんが京大に講演に来られたとき、途中で席立って出てしまって、、)ああ。「こんなあほらしいもん、ただのマルクスの亜流やないか」って。、、おもしろい人やったね。でも、話はつまらん(笑)。あんなものは、理論的にただマルクスを日本に適用しただけのことで、何の独創もない。