宇沢弘文「社会的共通資本」(岩波新書)

すう宇沢弘文「社会的共通資本」(岩波新書)を読了。

話題になった社会的今共通資本とは、自然環境、社会的インフラ、制度資本の3つ。制度資本は、教育、医療、金融、司法、行政などをさす。
本の学校教育の現場の荒廃は、教育というもっとも大事な社会的共通資本を官僚的に管理したり、反社会的な考えにもとづいて粗末に取り扱ってきた結果として起こってきたものだ。このような論法で、経済学の碩学宇沢弘文は、社会を切っていく。
有名な宇沢理論の概要を知ることができた。

社会的共通資本 (岩波新書)

社会的共通資本 (岩波新書)

以下、宇沢弘文(1928-2014年)の主張。

  • 農の営みは重要であり、農村は社会的共通資本と考えるべきである。専業農家への所得補償をすべきだ。
  • 都市については、ル・コルビュジェの「輝ける都市」は人間は主体性を持たないロボットに過ぎないとして反対する。それに対して「最適都市」という概念を提唱する。
  • 自動車の社会的費用:需要調整のために価格に社会的費用に見合う額を賦課金として上乗せする。公害と環境破壊に伴う社会的費用を計測すべきである。
  • ル・コルビュジェに反対したジェイコブスの考え:街路の幅を狭くして曲らせる。古い建物を残す開発。都市の各地区は二つ以上の機能を持たせる。人口密度を高く計画する。歩くことが前提。舗道と車道の分離。
  • 学校教育:能力を育てることと人格的諸条件を身につけるにが教育の役割。出発点は言語と数学。読み書き算盤。アメリカの平等主義的な教育制度は、矛盾、不平等を拡大再生産した。大学の運営も利潤追求の下に置かれた。大学は第一は研究、教育は副次的。大学という聖なる素書記がビジネスマンという俗世界によって管理・運営されるようになった。自主性の確保が重要な課題だ。日本は第二臨調を契機として教育の効率化を推進するようになった。大学の自由の全面的喪失という結果になるのではないかと恐れる。
  • 医療:経済を医療に合わせるのが社会的共通資本の考え方だ。日本は医療最適性と経営的最適性のかい離。需要面からは優れている。独立採算の原則は妥当ではない。
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午前中は新宿でN出版社の編集長と新企画の打ち合わせ。河合先生が同席。
最初の単行本を出した出版社なので懐かしい。
新たな展開が始まる。

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命日

  • 大塩平八郎:四海困窮せば天禄永く絶えん、小人に国家を治めしめば災害並び到ると・・
  • 島木赤彦:隣室に書よむ子らの声きけば 心に沁みて生きたかりけり。 
  • 豊田章一郎天地人知仁勇
  • 河盛好蔵:人をほめるのはそんなにやさしことではない。少なくとも悪口を言うよりは難しい。悪口はいくらでも実感をこめることができるが、ほめ言葉に実感をこめ ることは、しばしばこちらの自尊心と衝突するからだ。      
  • ガガーリン地球は青かった

誕生日

  • 佐藤栄作
    • 問題は何といっても一つ一つ対策を立てて実効あらしめる事、議論ではない。
    • 60歳を過ぎなければ、人の上には立てない。
  • 遠藤周作
    • 私は地方の町に行くと、必ずその町の役場にや山城の跡はありませんかと問い合わせることにしている。その山城をめぐる攻防戦や、そこに拠った一族の歴史をあとで調べることにしている。その結果、それらの場所が私だけの名所旧跡になる。
    • 今ふりかえってみると、まずしいながら私だけの作風をやっとつかむことができたのは50歳になってからである。
  • 田辺聖子:幸福な人は自慢屋であり、教訓家になることが多い。偶然の結果、健康や成功に恵まれたにすぎないのに、自分の能力のせいだと過信する。
  • 赤瀬川原平:アバウトは健康にいい。