映画「柘榴坂の仇討」

久しぶりに映画「柘榴坂の仇討」を観る。

監督は「沈まぬ太陽」などの若松節朗監督。
原作は浅田次郎
キャストは、中井貴一阿部寛広末涼子中村吉右衛門、、。

五郎治殿御始末 (新潮文庫)

五郎治殿御始末 (新潮文庫)

桜田門外の変」で警護役の主人公は敬愛する主君・井伊直弼を襲われ、一人生き残り仇を討つことを課される。大老を暗殺し生き残った水戸浪士は身を隠し孤独な生活を送っている。この二人の出会いと対決を心優しい女たちとともに描く。幕末の安政7年1860年と明治5−6年1872年ー1873年の二つの時代の風景の中で主人公たちが行き来する。最後の言葉と剣による長く息詰まる対決の中で、主人公は上司が命じる仇討の理屈から、抗議の声も聞き届けよという主君の思想に一気に転換する、このところの理論は原作の見事さでもある。
綿雪の降雪の中で、寒椿の花が「ひたむきに生きよ」と命じている。仇討を行おうとするサムライは直弼の籠のそばで13年立ち尽くし、また長い間、仇を討たれようとするサムライは椿の垣根のきわに座りつづけていたのだ。

原作ではその後の主人公は「この先はの、俥でも引こうと思う」「新橋のステンショを根城にする俥引きが、古俥を一輌調達してくれるそうだ。、、」となっている。この俥引きが仇である。

侍としての誇りと覚悟という矜持をもってグローバル時代の波の中で己の運命に向き合う名もなきサムライたちの物語。ひたむきに生きる日本人としての生き方を確認する映画だ。
道義的義務という「義」と、それに抗議する「情」の絡み合った名画となっている。

  • 浅田次郎「私は小説でもエッセイでも必ず書き終えたものを音読して、読者が読みやすいように句読点や改行の場所などをチェックしていく、、50枚だと30分」くらいかかる、、、その30分に映像を加味していくと、ちょうど90分くらいの長さにはなるのかもしれません。」(確かに原作の言葉に映像が挟まっているという感じの映画になっている)
  • 若松節朗監督「世直しの映画を作りませんか?」
  • 中井貴一「日本人の持つDNAとして、そこにこだわって演じたい」「僕は”日本”というものにこだわった方がいいんじゃないかと思うようになりました。また、そういう人間を育てていくことが、これから日本人が世界で生き残っていく一番近道なのかもしれません。」

井伊直弼という人物にも興味がでてきた。1815-1860年。享年46歳。
32歳で兄の死去に伴って世継ぎとなり、藩主の死去によって36歳で藩主となる。1858年安政5年に大老に就任。通商条約を迫るアメリカに対処するため、強いリーダーシップを発揮する。条約締結に際し天皇の勅許を得ようとするが、調印推進派により調印がなされてしまう。このため反対派からの非難にあうが、関係者を弾圧する。これが安政の大獄である。安政7年1860年には恨みを買って桜田門外で暗殺される。風流人で、時代を代表する茶人でもあった。