われら戦後世代の「坂の上の雲」--ある団塊人の思考の軌跡(寺島実郎著・PHP新書)

先日、東京で寺島実郎さんと三井物産のレストランで二人で昼食を摂ったときに、その場でサインをしてくれたこの新著をもらった。寺島さんは言うまでもなく、硬派論壇の第一人者で財団法人日本総合研究所の会長で、本業の三井物産ではこの春に常務執行役員にもなっている人物である。昭和22年生れの団塊世代に属している。


「この本は一人の戦後生まれの日本人の三十五年間にわたる思考の軌跡である」という重い言葉が最初の扉に記されている。この書は四章と終章とで構成されていて、学生時代(24歳)から今日(58歳)までの団塊世代論を時系列で並べたもので、実に読み応えがある。


第一章  (1971年5月--全共闘運動の余燼くすぶるキャンパスにて)同人誌「心の竹」 24歳

       政治的想像力から政治的構想力へ


第二章  (1980年5月--社会参加して十年の団塊の世代として)「中央公論」  33歳

       われら戦後世代の「坂の上の雲


第三章  (1991年3月--ニューヨークに駐在して四年目)「地球儀を手に考えるアメリカ」43歳

       米国との位置関係


第四章  (1999年9月--十年の米国駐在を経て東京に立ち)「Voice」 52歳

       戦後世代の責任と使命


第五章  (2006年3月--2007年問題を前にして)「世界」 58歳

       団塊の世代の正念場


私自身は、1980年5月に、中央公論の論文を読んで衝撃を受け、その2年後に寺島本人と遭遇する機会があった。三章、四章の論考はもちろん読んでいるが、今回改めてほぼ10年毎に発表された論考を時系列で読んでみて、問題解決に向けての執念とも言うべき持続力と、内容の驚くべき密度の濃さに深い感銘を受けた。この書は第一級の書籍であることは間違いない。


きちんとした書評を書くつもりだが、この快著は団塊の世代だけでなく、あらゆる世代の日本人に読んでもらいと思う。