連載「団塊坊ちゃん青春記」第17話----泥棒と一緒に寝た話1

サラリーマン一年生の頃の話です。


二、三日、友人の所を泊り歩いた揚句、夕方近くに部屋に帰ってみますと、「あなたが久恒さんですか?」と警察官が私の部屋の前に待っていて聞くのです。何事だろうと思っていると「あんた、泥棒が入りましたよ。」と云います。


兎に角、部屋の中を見ようと警官と一緒に、六畳の間に入りました。「どうです。この荒されようは。あんたの部屋が一番ひどく荒されたんですよ」と同情の面持です。私は「いや、全く変わっておりません。出た時のままです。」と云うと、「そんなことはないでしよう。だって背広も小銭もなげ散らかしてますよ」「いえ、私は汚く暮してますので。」「ウーン」とその警官は、うなったっきりです。入社して一年ですし、盗まれるような物はまるっきりありませんし、私自身は平気でした。


しかも、この警官の様子と私の態度の対照がわれながらおかしくて、一人でニヤニヤしていますと、指紋までとられてしまいました。又、その警官は、私に興味を持ったのか「あなたは。一体どちらへお勤めなんですか?」と聞く。勤め先を言うと、ますますけげんな顔をするといった具合なんです。


一体、私の所へ入った泥棒はどういう気持だったのでしようか。後から聞いた噂によると、そのつかまった泥棒が「しまった、先客がいた」と口走ったということです。



泥棒君にこわされた部屋の鍵をとり替えるのも面倒と、それから一週間、鍵もかけずに出勤です。ある明方、そう午前四時頃だったと思います。見知らぬ若い男が、私の部屋に入ってくるのに気がつきました。その男は、ズボンをはいていないのです。「寒い、寒い」と口走りながら、私の寝ている布団の中に入って来ました。

                          (明日に続く、、、、)