榊原英資--「世界同時不況」

今週の多摩大学リレー講座は、榊原英資氏の講義。

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  • アメリカ連銀総裁を18年間つとめたグリーンスパンの議会証言では、今回の危機は100年に1−2回のスケール(1929年の大恐慌と同じかその次)、とってきた政策(市場原理主義の流れ)にかなりの間違いがあった、と総括している。
  • 2006年までに何が起こったか。規制緩和金融工学。英国ビッグバン(完全な規制撤廃)により英国銀行はすべて外国に買収された。米国は州の垣根を取り払い州を跨って業務ができるようになった。インベストバンク(投資銀行。株式発行による資金調達。」公的規制はない)とコマーシャルバンク(商業銀行。預金による資金調達。中央銀行の管理下)の垣根の撤廃が起こった。。そしてデリバティブ証券化などの新手法によって金融セクターが巨大になった。リスク分散という理論は、リスク無しとなって、結果として管理ができなくなった。住宅価格上昇が前提のサブプライムローン(2割)は、価格下落によって破綻を招きどの証券も信用できないという状況になり、少しでもサブプライムが入っていると暴落した。金優バブルが猛烈な勢いで弾けてしまった。
  • 日本の銀行は不良債権処理が2004年までかかりインベストはやっていなかったため傷は浅かった。だから危機感はない。
  • 欧米の銀行は必死。米国は全銀行に公的資金投入、欧州諸国ま同じような状態。
  • ほとんどつぶれたが、インベストバンクで残ったモルガンスタンレーとゴールドマンサックスはコマーシャル銀行になった。
  • 56兆ドル(6000兆ドル)のCDS残高という大問題があり、金融危機はまだ2合目、3合目だ。AIGCDS最大の売り手だったから破たんさせられなかった。
  • 1929年の大恐慌時と違い、今は世界の中央銀行同士の協調体制がある
  • 不動産下落、株暴落によって銀行の自己資本の減少が起こり、信用収縮が起こり金を貸さなくなって、企業に影響が出ている。米国の消費者が消費しなくなった。生活態度が変わった。世界同時不況。
  • 外国人が日本株を売ったことにより間接的打撃が日本にあった。
  • 麻生内閣の財政5兆円、事業規模20兆円の追加経済対策の財源の2兆円は、特別会計準備金(埋蔵金)は国債の償還に使うという法律の改正が必要なため使えないだろう。また全戸への金の配布は一時的な所得であるため貯金や借金返済にまわるため、この埋蔵金が使えても景気浮揚効果はない。
  • 今起こっていることは構造不況。違った生活パターンが必要。
  • エネルギー不足と食糧不足になる。エネリギに関しては、原子力発電に力を注ぐこと、太陽光・風力発電技術に力を注ぐこと、中東・アフリカなど資源国との友好関係を築くことが必要。食糧不足に関しては、食糧増産による自給率の向上(現在40%)が必要。地方や農業に資金投入を。この二つの不足に中長期的観点から財政資金を投入すべきである。
  • 日本は相対的・比較的に傷が少ない。これはチャンスでもある。しかし輸出の減少、円高などの間接的影響はある。
  • 金融危機、世界同時不況は2010年まで2年は続く。世の中が変わった。悪いシナリオで対応すべきである。
  • 日本人は外国株を買うのではなく日本株を買うべきだ。日本のよいものを評価すべきだ。
  • 円の独歩高だが、今の円ドルレート(97円)、円ポンドレート(160円)では介入はできない。今までが極端な円安だった。