ヴォーゲル「現代中国の父・とう小平」の「序文とまえがき」から

エズラ・F・ヴォーゲル「現代中国の父 とう小平」を読み始めた。
この著者は1979年に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で日本のベストセラーとなった人である。
この書も中国で60万部を突破したベストセラーだ。

ヴォーゲルは2000年に70歳の誕生日を迎え、ハーバード大学での講義から引退する。
しかし研究から引退するつもりはなかった。ライシャワー教授に影響を受けたヴォーゲルは、アジアをアメリカ国民に説明する使命があると考える。そして中国の台頭という課題に立ち向かうことにする。
毛沢東以降の中国の構造改革を主導した人物・とう小平に焦点を当てた研究を開始する。5年で終わる予定が、10年に伸びた。つまり、ヴォーゲルは70代を中国の蠟小平研究に費やしたことになる。

とう小平は文字の記録を残さなかった。会談や会議では原稿を使わなかった。自伝を書かないと決めていた。あまり話さず、内容にも慎重を期していた。

こういう対象であったから、執筆には困難さがあり、時間がかかった。ヴォーゲルは7年以上かけて中国で12か月を過ごしている。
家族や同僚、同僚の家族と会って中国語でインタビューし、様々の内実や具体的な話を聞いた。
陳毅、葉剣英など革命第一世代の子どもたち、江沢民、銭其深、中国の研究者、天安門事件の学生リーダー・王丹、シンガポルのリー・クアンユー、ゴー・チョクトン、ゴー・ケンスイ、オーストラリアのホーク、日本の中曽根康弘加藤紘一田中明彦、アメリカのキッシンジャー、カーター、ブレジンスキー、アーマコスト、そしてハーバードの同僚教授たち、、、と物凄く広い資料収集と証言収集をしている。

また、機密情報の漏えいを防ぐために、CIAによる査読も済ませている。微妙な仕事であることがわかる。

ここまで徹底した取材と、機密漏えいへの配慮をしてできた本であることに驚く。
今から読んでいくが、現代中国の核心に触れることになるとの予感がする。

70歳からのヴォーゲルの生き方と仕事に感銘を受ける。

そういえば、JAL時代に野田一夫先生と知り合って食事をしていた時に、ヴォーゲルに紹介するよと言われた。野田先生が電話をかけると本人は香港にいた。わたしも電話口に出た記憶がある。

今日の収穫