東京の「企業ミュージアム」から。

2005年から続けている「人物記念館の旅」は、2020年はコロナ禍で、わずか18館にとどまったものの、942館まで積み上がってきました。

当面の大目標である1000館に向けて、気分を一新し東京の「企業ミュージアム」を中心にめぐることにしたいと思います。

こういった企業ミュージアムは、整備された施設と展示が多く、また昨年訪問した帝国データバンク史料館、日銀貨幣博物館、世界のカバン博物館、カルタ館にみるように、必ず歴史のコーナーがあり創業者の苦難の道が展示されています。

企業ミュージアムも「人物記念館の旅」の範疇ととらえ、日本経済についても考える機会としたいと思います。

まずは、東京の「企業ミュージアム」42館から。墨田区、港区、千代田区に多いことがわかりました。

東京の美術館の人物展。11。

企業博物館事典

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  • 発売日: 1997/11/01
  • メディア: 単行本
 
全国企業博物館ガイド行きたい! 企業ミュージアム (イカロス・ムック)

全国企業博物館ガイド

  • メディア: 単行本
 

 

「名言との対話」3月26日。山崎正和「国語教育こそ愛国教育である」

山崎 正和(やまざき まさかず、1934年昭和9年〉3月26日 - 2020年令和2年〉8月19日)は、日本劇作家評論家演劇研究者。

京都大学文学部哲学科卒。1963年、『世阿弥』 で第9回岸田戯曲賞受賞。 1964年からエール大留学に留学。関西大教授、大阪大教授などを経て、2000年亜細亜大学学長。文化功労者、文化勲章受章。日本芸術院会員。

野望と夏草』 (1970) 、『実朝出帆』 (73) などの史劇、『劇的なる精神』 (66) に始る評論活動も多彩に展開した。著書に『劇的なる日本人』 (71) 、読売文学賞受賞の『鴎外 闘う家長』 (72) 、『不機嫌の時代』 (76) 、『柔らかい個人主義の誕生』 (84) などがある。

文化的保守主義を標榜し、」1990年代には、「脱亜入洋」(洋=オセアニア)論を提唱した。 「人生10年先送り」論。定年退職年齢を70歳まで延長し、大学卒業者の就職年齢を30歳前後まで遅らせる「人生10年先送り」論を提唱した。

深い学識と広い視野から生れる文明への鋭い洞察の持ち主で、マスメディアの寵児だった。梅棹忠夫などそうそうたる文化人との対談も多かった。

発刊当時に話題になった『柔らかい個人主義』は私も読んでいる。成熟した個人主義に基づく近代社会の構築を提唱しており、企業メセナボランティアの概念を日本に普及させた当事者の一人だ。阪神・淡路大震災で活躍した市民ボランティアを、強制も束縛もない緩やかなネットワーク活動であり、「現代日本個人主義の成熟を示した」と分析し、「柔らかい個人主義」の実現と高く評価した。

山崎正和「柔らかい個人主義」や蝋山晶一の「強い、安定した、自由な個人」は形成されたのだろうか。コロナ禍でインフラとなったZOOMでは、世代間交流と異空間交流が活発になった。その可能性を拓くことになるかもしれない。

今回、山崎正和『文明としての教育』(新潮新書)を読んだ。中央教育審議会会長による教育論で興味深く読んだ。

  • 教育とは、経験の仕方や経験の方法論を教えるものです。
  • 教室は経験の場ではなくて、練習の場なのです。
  • 身を修めるを趣旨とする「生涯学習」は、「平板な繰り返しの日常をあえて価値的な登り坂として受け止める思想」だ。
  • 義務教育は、必要な知識と思考能力を与え、自分で自分の意欲と可能性を発見する準備をさせることにある。個人の自己実現を援けるサービス。
  • プラトンの人生5段階説(初めは読む・書く・算術を学ぶ少年期、最終は哲人)。孔子は6段階説(立志から)。世阿弥の三段階説(若年の初心、時々の初心、老後の初心)。受け身ではなく、覚悟を決めて生きこなすものとしている。
  • アテネ初等教育は「読み・書き・算術」。中等教育はの主眼は、音楽(祭典用)、体育(防衛用)。兵役を終えた後の高等教育では、弁論術、修辞学、数学、哲学を学ぶ。この段階では自発的な学びとなる。

 そして「国語教育こそが実は愛国教育なのだ」と言い、そのためには朗読と暗唱が不可欠とする。そして戯曲こそ作家が推敲を重ねた書き言葉であり、役者が身に着ける話し言葉だとする。その主張の焦点は「国語教育」の重視にあった。

2020年8月に亡くなったが、今回のコロナを目撃しており、「今回の経験が伝統的な日本の世界観、現実を無常と見る感受性の復活に繋がってほしい」と語っている点も見逃せない視点だ。 

文明としての教育 (新潮新書)

文明としての教育 (新潮新書)

  • 作者:山崎 正和
  • 発売日: 2007/12/01
  • メディア: 新書
 
 

 

 

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