ユーチューブ『遅咲き偉人伝』 ーー 19人目は日本画家で103歳の長寿だった「片岡球子」編。

ユーチューブ『遅咲き偉人伝』

19人目は日本画家の「片岡球子」編。

https://www.youtube.com/watch?v=fc3rHs-kNoM

  • 「最初は下手でも結構。でも絶対に止めないで続けること。やれば必ず芽が出ます。」
    • 103歳という長寿の画家・片岡球子は1月16日に天寿を全うした。鮮烈な色彩、大胆な造形、力強い筆致、自由奔放さ、そういった形容がこの人にはふさわしい。
    • 球子は30代の頃に小林古径から「あなたはゲテモノに違いない。しかしゲテモノと本物の差は紙一重。どこまでも描いてゆきなさい」と言われた。ゲテモノとは下手物のことで、風変わりな珍奇なものを意味する。「落選の神様」と自らを自嘲していた球子は、作風を変えずに絵を描き続ける。そして独特の画風を完成させる。私は富士山を描いた賑やかな絵が気に入っている。
    • 2008年に亡くなっているから、同時代の画家という感じがするが、同じ1905年生れを挙げてみよう。福田赳夫大河内一男田辺茂一阿部定臼井吉見サルトル入江相政水谷八重子円地文子平林たい子入江泰吉、浪越徳次郎、島田正吾、、、。既に皆歴史上の人物として記憶にある人たちだ。生きた時代が違う感がある。生年よりも没年が大事なのだ。
    • 球子の年譜を眺めてみると、やはり長寿の凄味を感じる。68歳で愛知県立芸術大学を定年となってからも35年の現役であった。最高峰である文化勲章をもらってからもなお20年近くの人生があった。その間、第一線の画家として仕事に立ち向かう。定年を機に始めた教官と卒業生の会での法隆寺金堂壁画模写も約20年かけて完成させていることに驚く。始めたものは「絶対に止めないで続けること」という片岡球子のアドバイスは重みがある。

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今日の川柳

 お天道様 聞かなくなったね いつからか

 品格へ 年季を積んで いぶし銀

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「名言との対話」10月22日。佐藤武夫「鳴き竜」

佐藤 武夫(さとう たけお、1899年10月22日 - 1972年4月11日)は、日本建築家建築音響工学の先駆者

愛知県名古屋市出身。旧制岩国中学から早稲田大学で学び、卒業後の1924年に母校の助教授に就任。初代学長の大隈重信を顕彰し、今では早稲田のシンボルになっている大隈講堂の設計を任された恩師:佐藤功一のもとで、建築の音響についての研究を行った。その過程で、解明されていなかった日光東照宮の薬師堂の「鳴き竜」現象を科学的に解明することができた。

1935年、音響の研究で博士号。1938年、教授。1945年、設計事務所を創立。1951年に退職。建築における音響学の開拓者となった。1957年、日本建築学会会長。

藤武夫は劇場やホールのパフォーマンスを見聞きする場所であるオーディトリウムの第一人者。市庁舎、市民会館、公会堂などの公的施設を多く担当している。「塔の佐藤」と呼ばれるほど、塔を多用した。

「鳴き竜」は400年前に建設された日光東照宮が有名で、竜の前に立って拍子を打つと、他の場所とは違って、反響音が竜の鳴き声に聞こえるという現象である。天井を平板でなく、凹凸をつけると、周波数の違う音が乱反射し、周辺で聞く音でなく、独特の音となって、残響となる。こういった不思議な現象は、日光東照宮以外にも、高幡不動尊大日堂(東京)、大徳寺(京都)、妙見寺(長野)など10カ所ほど知られている。江戸時代には「むくり」と呼ばれる凹凸をつけて泣き竜を演出する技術が確立されていたのであろう。この現象を音響的観点から科学的に解明したのが佐藤である。1963年に日光の亡き竜が消失したとき、佐藤は復元を指導し、再生させている。

建物内、および建物外の間での、音の伝播について取り扱うのが、建築音響工学である。構造材・壁・床・天井の材質の選択方法や、内装に反射板や吸音板・サウンドトラップなどを用い、音場(音の響き方など)の制御を行うのだ。防音や遮音に貢献するが、コンサートホール、劇場、映画館などの設計に応用されている。音響を大事にする演奏家がホールにこだわるのだが、それは建築音響工学の技術によるものなのだ。わたしたちはその恩恵を受けているのである。

ここで思い出すのは、北京の天壇である。私は親しかったシンセサイザー富田勲先生の原点は、子ども頃に聞いた「天壇」での不思議な音だと何度か直接聞いている。皇帝がに対して祭祀(祭天)を行った宗教的な施設(祭壇)で、明の永楽帝が建設した。ここで不思議な音を聞いたことがきっかけとなって、富田サウンドが生まれたのだ。

藤武夫はこういった新分野の建築音響工学のパイオニアだった。フロンティアの開拓者である。どの分野にしろ、フロンティアに足を踏む入れると、そこには興奮が待っている。その面白さが開拓者にはある。今後、各地を旅行する際に「鳴き竜」を聞ける寺を意識してみよう。まずは、高幡不動からだ。