「図解・卒論の書き方」

大学生の卒業論文や大学院生の修士論文を指導して数年になる。始まった当初は、「卒論はどうやって書くのですか?」という問を毎年、ゼミの学生から投げかけられてきた。その都度「さあ、卒論を書いた経験がないからなあ」といって学生たちを笑わせてきた。私の大学時代は卒論を書かなくても卒業できたので、私自身は安易な方向に流れてしまったのだ。

さて、私のゼミ生の卒論のテーマ選びについては、2つの方向がある。

一つは、ゼミで行ったプロジェクトに関するテーマです。顧客満足ゼミと称している私のゼミでは地域の課題をテーマに具体的な構想を練り上げるということが求められる。市町村合併仙台七夕祭り、宮城県知事選、雪印乳業再建、宮城スタジアム問題、、、、。こういったプロジェクトを達成した学生たちは、本で読んだ知識にとらわれず、自らかかわった独自の情報に対する確信を持って卒論のテーマとすることができる。

もう一つは、就職する業界や企業に関する論文だ。やはりこれからの人生をゆだねる仕事に関する関心は、卒論に取り組む時期になるといやおうなく高まってくる。飲食業界、流通業界、コンピュータ業界、印刷業界、水産業界、、、、。

一期生の卒論指導では、私自身も初めての取り組みであり、学生と一緒に悪戦苦闘して、何とか7本の論文が出来上がった。

そして2年目に、ある学生が自分が取り組もうとする課題について図解を提出してきた。その学生の描いてきた図には、問題設定、方法、事例調査、文献調査、解決のための提言といった項目が、未熟な段階ではあったが、図示されていた。そのとき「そうだ!卒論指導も図解でやろう」と思いたった。

それ以来私のゼミでは、まずテーマを決める、そしてその後しばらくは学生一人一人が描いてきた図解を題材に全員で議論を重ねる、全体図と各章の図解数枚を完成させる、そしてようやく論文を書き始めるという段階を踏むようになった。

図解の段階できちんとした論理構造と、各章ごとの関係、資料の使い方などがクリヤーになっている場合には、学生たちは長い論文も途中で迷うことなくスムーズに書き上げることができている。逆に甘い図解しか描けなかった学生は、途中で何度も迷い、苦しみ、テーマ変更に逃げ込みたくなる、ということがわかってきた。

卒論を書くには、前半の図解を描く段階と後半の文章を書く段階があるが、明らかに前半の段階での詰めが大事ということだ。もう4年もやっているので、こういった方法で完成した卒論は40本に上っている。このスタイルが確定してからは、締め切り前に書き上げる学生も多くなり、落ちこぼれ気味の学生に対するケアが十分にできるようになってきた。