寺島実郎の「世界を知る力」ーー世界経済と日本の家計の現状。ロシアとどう向き合うか。

東京MXテレビ寺島実郎の「世界を知る力」。

経済:世を経(おさめ)、民を済(すくう)。民を救うために様々な公的対策を行うこと。中国の古典から。

世界経済と日本経済。

  • IMFの世界経済予測:世界同時好況の3年間。2020年はコロナ禍により▲3.3%成長。2021年は1月予測は5.5%だったが、4月予測は6.0%と強気になっている。
  • 主たる原因はアメリカが2020年▲3.5%で、予測が1月5.1%から6.4%になったこと。バイデン大統領はワクチンの接種もすでに60日間で目標の1億人を突破(100日の予定だった)。4月末までに2億回の目標を設定。年収864万円以下には15万円の給付を行う。200兆円(1.9兆ドル)のインフラ投資の財政出動で累計648兆兆円(6兆ドル)とアクセルは全開。
  • 日本は2020年▲4.8%でこれは2013-2014年の規模。1月予測は3.1%、4月は3.3%。となっているが、それでもまだ水面下。
  • 中国は2020年2.3%とプラスで、1月予測は8.1%、4月はさらに加速し8.4%。インドは4月予測で12.5%、アセアンは4.9%。アジアの世紀が進行中。アジアとの貿易で日本経済は支えられている。
  • 日米の違いに注目。アメリカの政策は機動力と柔軟性がある。1:財政出動の財源については法人税を21%から28%に引き揚げ、15年で275兆円を収入を見込む。日本は赤字国債を日銀が青天井で引き受けており、後続世代の借金にしているだけだ。2:中央銀行は景気がよくなると金利を上昇させ(5%台)、悪くなるとゼロ金利(2008年12月)に下げる、またあげていたが、コロナで下げた、という柔軟性と機動力がある。日本はゼロ金利が10年以上続き、2016年1月からはマイナス金利の状態。
  • 実体経済の悪さと株高(米33800ドル4月9日。日29708円4月9日)という不自然さ。不安材料がでてきた。投資会社アルケガスの破綻で日米欧の金融が大きな損失をこうむっている。レバレッジ投資、き過ぎたマネーゲーム、資本主義のゆがみ。

日本経済「家計」。

  • 家計:勤労者(現役)世帯の可処分所得は、2010年43.0万円、2015年42.7万、2019年47.7万。2020ねんは49.9万(10万円給付を除けば47.1万)。ピークは1997年の49.7万円。
  • 全国全世帯の家計消費支出では2020年は月27.8万円、ピークは1993年(20年近く前)の33.5万円。2000年から2020年の20年間では、年間47.3万円ダウン。衣は▲47.1%、食は8.6%、住は▲11.3%。小遣い・交際費は▲49.0%で34673円で20年前と比べ年間で▲41.6万円(最大の減少)。光熱・通信13.4%。教育・娯楽は▲28.0%で月▲15499円で年▲18.6万円。衣のユニクロ、住のニトリが独り勝ちだから寡占化で衣と住の分野はさらに厳しい。日本人は学ばなくなった、学べなくなった。シケてしまった。そして内向きになった。
  • 消費支出の中身の推移:食の分野のプラスは調理食、肉類、お菓子、飲料。マイナスは外食と魚介類。コントラスト。食生活も変化している。増えたトップ3分野は諸雑費(どうでもいいもの。雑費貧乏)4152円増加、通信3958円増加(価格は4分の1に値下がりだがスマホ需要が大きく増加)、自動車関連(地方は2台、モールへ)3312円増加。一方で医療や健康(サプリ)は増えているのをみると賢くなっているともいえる。努力して情報に接することが必要だ。内向きから賢くへ。

全体知への接近:番組では過去3回は中国を語った。武力衝突の可能性のある尖閣問題は「世界」5月号に書いた。今回からの3回は北方領土問題をめぐるロシアとの向き合い方がテーマ。今回は前提としての日露関係の歴史。

  • 日本人は1853年のペリーの浦賀来航で近代が始まったと考えいるが、「北の黒船」が先にやってきている。半世紀前の1792年にラックスマン根室へ。函館への回航させ、長崎の通行許可証を発行。9ヶ月滞在した。漂流民であった大黒屋光太夫(1783年に漂流)を連れてきた。光太夫エカテリーナ二世と面会。ロシア語をマスターし44歳で帰国。老中は松平定信。一時金30両を与えられ、月3両の手当をもらい、千代田区番町に住み78歳まで生きた。聞き書き「北瑳聞略」。
  • 1785年には林子平が「蝦夷国全図」という北海道の概念図、1798年には近藤重蔵が択捉を調査、「大日本恵土呂府」の標識を建てた。1800年伊能忠敬が日本地図を完成。
  • 1804年にはレザノフが長崎にあらわれる。6か月間留め置きで、通行証を取り上げられる。仙台石巻の漁師4人(1793年に漂流)を連れてきた。世界一周を初めてした日本人だ。アレクサンドル一世と面会。聞き書き「環海異聞」。情報は受け手の能力に比してしか伝わらない。レザノフは択捉で略奪行為を働き警戒された。1806年に津軽藩南部藩に守備の要請。1807年幕府の直轄地天領にする。1821年松前藩に返却。1860年ロシアが清国と結んだ北京条約でウスリー川東岸を割譲させ、ウラジオストック(東を攻めよ)を建設。北海道と極東ロシアは双生児、どちらも移民で成立。近代史はロシアと向き合った100年だった(司馬遼太郎)。
  • ロシアが東へ向かう理由:ピョートル大帝ロマノフ王朝の中興の祖)は1697年3月から18月間欧州視察を行った。4か月間オランダ東インド会社で造船術を学ぶ。1703年サンクトベルクの建設を開始(1792-1918年のロマノフ王朝の首都)。1705年日本語学校を創設。漂流民の大坂出身の伝兵衛(1701年)を教師にした。1754年日本語学校イルクーツクに移転。13世紀から15世紀にかけてモンゴルに支配された「タタールのくびき」から、東方に巻き返し。
  • 日本の動向:ラックスマンとレザノフの間の1800年八王子千人同心100人(家康が武田軍団を郷氏にした。100人10組の大軍団)が蝦夷地へ入植。原半左エ門。苫小牧50人、白糠50人。ロシア対策の開拓だった。

(異次元の高齢化:工業化を経て脱工業化時代の高齢化。カセギとツトメのツトメの貢献する仕事。子育て、子ども食堂、教育などで貢献を)

ビデオ収録していました。1回目のメモをつくり、聴き直しながら赤でメモの数字や事実を正確にし、その結果を改めて以上の文章を修正するという作業を行ってみました。緊張して番組を聞くのより、この方法の方が理解が正確で深くなります。ZOOMなどの動画で学ぶのと同じです。

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八王子の万葉公園で万葉歌碑。

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八王子城跡を訪ねました。小田原城を本拠とした北条早雲のひ孫世代の北条氏照が16世紀末に築いた城。秀吉傘下の前田利家上杉景勝の連合軍に攻められ1590年に落城した。氏照は小田原城で兄の氏政と籠城していたが、秀吉から切腹を命じられる。家康に与えらえた関東は、八王子千人同心がまもることになった。

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曳橋をとおり、御主殿跡(居館)を往復。この雄大な山城はそれから400年間にわたり打ち捨てられていたが、約400年後に発掘整備された。まだ再建途中。

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昼食は「ゆずや」(てんぷら)。

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「名言との対話」4月18日。サミュエル・ハンチントンアメリカが唯一の超大国としての支配的な地位を失いそうだと見れば、日本は中国と手を結ぶ可能性が高い」

サミュエル・フィリップス・ハンティントン(Samuel Phillips Huntington、1927年4月18日 - 2008年12月24日[1])は、アメリカ合衆国国際政治学者

コロンビア大学戦争と平和」研究所副所長を経てハーバード大学教授。1986年から1987年まで、アメリカ政治学会会長を務めた。研究領域は政軍関係論、比較政治学国際政治学などに及び、軍事的プロフェッショナリズム発展途上国における民主化、冷戦後の世界秩序での文明の衝突の研究業績を残している。キッシンジャーと並ぶ学界の大立者であり、その影響力は大きい。著著『文明の衝突』は世界的ベストセラーになった。

2000年の発行のサミュエル・ハンチントン文明の衝突と21世紀の日本』(集英社新書)を、20年後の現在の時点で読むことになった。以下、ハンチントンの分析と結論。

2000年からの10年、20年で真の多極体制になるまでは、アメリカが唯一の超大国の座を維持するだろう。しかしアメリカは世界の唯一の超大国として負担を担うより、世界の大国の一つとなる方が得るもには大きい。

中国は今後10年続く高度成長と国内の団結が維持できれば、自然に覇権を目指すことになり、独断的な役割を演じるだろう。

日本文明は中国文明から派生して誕生した独特の文明だ。他の社会と文化を共有しない孤立国である。日本の戦略は一貫して「追随」だ。20世紀は大英帝国ファシズムのドイツ、アメリカと同盟を結んで一時的な破綻もあったが、その戦略で成功してきた。日本は中国の台頭と超大国アメリカのどちらを選択するだろうか。

日本はバランスと追随の間で揺れるだろうが、結論は先延ばしにするだろう。アメリカが決意を公約しなければ中国に順応するだろう。日本の戦略は常に最強国との協調だったからだ。アメリカが支配的な地位を失いそうになれば、日本は中国と手を結ぶ可能性が高くなる。アメリカ、中国、日本の三角関係が東アジアの政治の核心だ。

さて、巻末の「解題」は中西輝政が書いているが、ハンチントンの分析を是としながらも、中国は大きな変動に直面し、分裂という体質の爆弾を抱えている特質が浮上し、21世紀の超大国に座を現実のものにする可能性はまずないと考えている。

この本が世に出てから20年経った2021年現在では、アメリカの力には陰りがみえ、中国経済は大発展をとげ、日本を抜き去りアメリカと肩を並べる日も近い国になっている。日本はハンチントンのいうように、頭はアメリカ、体は中国というまた裂き状態が強くなりつある。ハンチントン中西輝政のどちらの予想が正しいのか、しだいに明らかになってくるだろう。

文明の衝突と21世紀の日本 (集英社新書)