新刊『平成時代の366名言集』(e-book選書)。NHKラジオ「聞き逃し配信」。「幻冬舎オンライン」の連載。今日のヒント「諭吉」。

ディスカバーe-book選書第7弾『平成時代の366名言集』が本日リリースされました。

「一年366日、一日ごとに、その日に亡くなった平成の著名人が遺した名言を紹介する。そこには私たちと変わらない、特別でない日常と仕事の積み重ねをみることができる。生き方を学び、人生に目的とやりがいを見出す名言大全!」

「まえがき」から。

私の「名言」シリーズは、2017年の「偉人の命日366名言集」、2018年の「偉人の誕生日366名言集」に続いて、3冊目になります。

今回は時代も平成から令和に変わる時期でもあり、個人として平成を送るという意味合いから、平成の30年に亡くなった人物を取り上げることにしました。当初予想した通り、対象期間が短いことから難航したのですが、何とか完遂できました。

取り上げた人物にはまだ時間がたっていないこともあって、私が訪問し続けている人物記念館がある人はほとんどいません。そのため自伝、伝記を中心とした書籍を中心に、毎日のように資料を読む込む日々が続きました。巻末の参考文献が膨大なのはこのためです。

また、過去の2冊は近代中心ではあっても、よく知られている著名人が多く、毎日の人選にはそれほど苦労はなく、その人とどう向き合うかが主要なテーマでした。しかし、平時時代に亡くなった人に絞ると、人選自体に困難がありました。そのため私自身も名前も聞いたことのない人を選ぶことになる。そして芸能も含め全く知識のない分野もその都度、強制的に勉強するはめになりました。そのことで、近年にも偉い人がずいぶん存在したこともわかり、知らなかったことに恥ずかしくなったことも度々でした。その結果、少しは教養が身についた気もしています。2019年にも、「平成編」を毎日、継続中です。この「修行」は人選も含め、今年はさらに困難な旅となっています。

「人の偉さは人に与える影響力の総量で決まる」という、人物記念館の旅から得た結論からいえば、取り上げた人物たちはやはり「偉い人」です。周囲に深く、同時代に広く、そして長く影響を与えた人たちです。

この書には「人生が豊かになる一日一言」というサブタイトルがついていますが、この言葉は書いている私自身の感慨でもあります。毎日の早朝の彼らとの対話の時間は、至福の時間でした。この習慣はずっと続けていきたいと思っています。

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NHKラジオ「聞き逃し配信」を聴きながらウオーキング。1万2千歩。

  • 「NHKアーカイブス」の「声で綴る昭和人物誌」開高健1・2。先週は「佐治敬三」1・2を聴いた。
  • 朗読「半七捕物帳」「奥女中」1・2。シャーロックホームズの世界を江戸を舞台に日本的に展開した岡本綺堂の名作。20年の間、書き続けたシリーズ。
  • 古典講読「王朝日記の世界2」「紫式部日記」は宮廷生活がテーマのエッセイであり実に面白い。

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幻冬舎オンライン」の連載13回目。

50歳から仕事も人生もうまくいく!「人生鳥瞰図」の描き方(幻冬舎ゴールドオンライン) - Yahoo!ニュース

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今日のヒント「幸福」。

福沢諭吉「人は老しても無病なる限りはただ安閑としてはいられず、私も今の通りに健全なる間は身にかなうだけの力を尽くすつもりです」(『福翁自伝』の「老余の半生」の最後)

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「名言との対話」11月30日。小宮隆太郎「結婚とはお互いの運命を背負い合うことだ。相手の身に起きたことは良きことも苦しいことも自分の運命と考え、ともに喜び、ともに負担に耐えていかなければならない」

小宮 隆太郎(こみや りゅうたろう、旧字体小宮 隆太郞1928年昭和3年)11月30日 - )は、日本経済学者

京都生まれ。小宮が属す経済学・商学分野の学士院会員は現員13名でそのトップに名前がある。その紹介を以下の通り。

小宮隆太郎氏は国際経済学、日本経済研究および現代中国経済研究の3つの分野を中心に優れた業績を挙げ経済学の発達に大きな刺激を与えるとともに、日本経済の海外への紹介に寄与しました。同氏の分析の特徴は、各分野で常識とされてきた命題を批判的に検討し、その誤りを指摘、問題提起を行うという点であり、経済成長と国際収支、昭和47-8年のインフレーションと通貨当局の責任、直接投資と経営資源の関係の分析等はその例です」と紹介されている。小宮隆太郎は1990年に学士会会員。1996年、文化功労者。2002年、文化勲章を授与されている。

1961年、33歳で刊行した最初の著作『アメリカンライフ』を読んだ。この経済学の泰斗の専門書は読んだことはないが、ハーバード大学での3年間過ごしたアメリカでの生活で見聞きしたことを、記憶を頼りに思い出しながら書いているこの本は気楽に読めた。鋭い観察眼は、「商業」「パーティ」「デイト」「階級」「人種」アメリカ社会のさまざまな面に及んでいる。若い経済学徒のアメリカ見聞記、印象記である。

以下、面白かったところなどをあげてみる。

都心から車で1時間くらいまでの郊外に住むサバーバナイトが増えている。百貨店での8割は女物。ハンコはまったく無駄だ。日本の銀行は生産性が低い、商業も低い。アメリカ人は道徳水準が高い。「大百科辞典」のセールスマンが最も悪質。

パーティは夫婦単位が基本。ビジネスは時間厳守だが、パーティは遅れていくのが適当。アメリカ社会は移動が激しいので交際範囲を広めるためにパーティがある。同じ階級で頻繁に招き招かれる。孤独のあらわれだ。

すべての階級がデイトを通じて結婚相手をみつける。カレッジでは平日は勉学、週末はデイト。完全競争であるため、才能と魅力を備えた女性から相手が決まっていく。日本のお見合いという不完全競争にもいいところがある。互いに相手を大切にしないと逃げられる恐れがある。

アメリカは階級なき社会ではない。機会均等というのはヨーロッパと比較しての話。日本と比べると、人種差別も含め階級差別が複雑な形で存在する。北欧系プロテスタントが上位。アングロサクソン、次がフランス・オランダ・ドイツ系、その次がスカンジナビア系。遅れてやってきたアイルランド人とイタリア、ポーランド系のカトリックが続く。その下が黒人で、さらにプエルトリカン。

上流階級ではクラブが重要。ソーシャル・クライマーは嫌われる。上流になるまでには3代はかかる。有名な私立大学は閉鎖的で貴族的。寄付が多く財政は豊か。税制の問題もあり遺産の3分の1から半分ほどは学校、病院、美術館などの寄付するのが普通。名前を冠した建物はいわばお墓だ。女子大がさらに裕福なのは財産を相続した未亡人の寄付があるから。

下層から出発し、団結力が強く、急速な成功をおさめ中流以上ののし上がったユダヤ人には警戒。実力で勝負できる専門的職業である医者、弁護士、大学教授、新聞記者、映画監督、芸術家にはユダヤ人が多い。ノーベル賞受賞にユダヤ人が多い。

1956年から1959年ころのアメリカ人の生活が描かれている。私が読んだ岩波新書は1961年の初刷りで、1967年には第10刷りとなっているから、相当広く読まれている。当時のアメリカ観に影響を与えただろう。

アメリカは社会の変化は激しいが、階級、人種、そして社交に関する社会構造そのものはあまり変わってはいないように思える。「アメリカン・ライフ」は、半世紀以上たった現在でもアメリカを理解する基本書だと言ってもいい。

「結婚とはお互いの運命を背負い合うことだ、、、」は、教え子から仲人を頼まれ、また祝宴に招かれたときに、東大教授・小宮隆太郎若い人たちに伝えてきた言葉である。同感だ。夫婦は運命共同体だ。この本の「はしがき」の最後には、「この本を、アメリカ生活での苦労をともにした私の妻に捧げる」とある。本日の誕生日で93歳。