充実!ーー吉田健一・吉野せい。大谷翔平。司馬遼太郎。磯田直道。遠藤周作。チャップリン。高橋源一郎。坂上香。逢坂冬馬。


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午前:ブログで神奈川近代文学館の「吉田健一」の訪問と読書のまとめ。ヨガ講座1時間でカラダを整える。「名言との対話」は吉野せいを書く。メジャー大谷2本を楽しむ。

午後:NHKBS:「菜の花忌シンポジウム」(司馬遼太郎の命日2月12日)、テーマは「『胡蝶の夢』ーー新型コロナ禍を考える」、磯田直道の発言、「コレカから 百年経って またコロナ」(見ながら、川柳がひとつ)。NHK「こころの時代」の「遠藤周作没後25年 遺作『深い河』をたどる「後編 宗教の壁を超える 玉ねぎ」(再放送)。散歩で「後ろ姿探検隊」。青空カフェでコーヒーと鯛焼き。風呂で大野裕之チャプリン 作品と生涯』を読む。

夕刻から:5月分の「名言との対話」の人選と選書。深呼吸学部に参加。聞き逃し配信で昨日の「高橋源一郎飛ぶ教室」の坂上香『プリズン・サークル』、本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』の著者の逢坂冬馬インタビューを聴きながら就寝。

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「名言との対話」4月16日。チャールズ・チャップリン「(あなたの最高傑作は?)次の作です」

サー・チャールズ・スペンサー・チャップリンSir Charles Spencer ChaplinKBE1889年4月16日 - 1977年12月25日)は、イギリス出身の映画俳優映画監督脚本家映画プロデューサー作曲家

2018年にチャップリン『独裁者』をDVDで観た。特に印象に残ったシーンは、以下の二つ。世界征服を夢見て風船の地球儀で遊ぶ独裁者ヒットラーの姿、そしてもう一つは、最後の6分間の感動的な演説だ。ロシアのウクライナ進攻でチャップリンの演説は、価値が高まったのではないか。

申し訳ないが、私は皇帝などなりたくない。 それは私には関わりのないことだ。 誰も支配も征服もしたくない。できることなら皆を助けたい、ユダヤ人も、ユダヤ人以外も、黒人も、白人も。私たちは皆、助け合いたいのだ。 人間とはそういうものなんだ。 私たちは皆、他人の不幸ではなく、お互いの幸福と寄り添って生きたいのだ。 私たちは憎み合ったり、見下し合ったりなどしたくないのだ。

この世界には、全人類が暮らせるだけの場所があり、大地は豊かで、皆に恵みを与えてくれる。 人生の生き方は自由で美しい。 しかし、私たちは生き方を見失ってしまったのだ。 欲が人の魂を毒し、憎しみと共に世界を閉鎖し、不幸、惨劇へと私たちを行進させた。

私たちはスピードを開発したが、それによって自分自身を孤立させた。 ゆとりを与えてくれる機械により、貧困を作り上げた。

知識は私たちを皮肉にし、知恵は私たちを冷たく、薄情にした。 私たちは考え過ぎで、感じなさ過ぎる。 機械よりも、私たちには人類愛が必要なのだ。 賢さよりも、優しさや思いやりが必要なのだ。 そういう感情なしには、世の中は暴力で満ち、全てが失われてしまう。

飛行機やラジオが私たちの距離を縮めてくれた。 そんな発明の本質は人間の良心に呼びかけ、世界がひとつになることを呼びかける。

今も、私の声は世界中の何百万人もの人々のもとに、絶望した男性達、女性達、子供達、罪のない人達を拷問し、投獄する組織の犠牲者のもとに届いている。

私の声が聞こえる人達に言う、「絶望してはいけない」。 私たちに覆いかぶさっている不幸は、単に過ぎ去る欲であり、人間の進歩を恐れる者の嫌悪なのだ。 憎しみは消え去り、独裁者たちは死に絶え、人々から奪いとられた権力は、人々のもとに返されるだろう。 決して人間が永遠には生きることがないように、自由も滅びることもない。

兵士たちよ。 獣たちに身を託してはいけない。 君たちを見下し、奴隷にし、人生を操る者たちは、君たちが何をし、何を考え、何を感じるかを指図し、そして、君たちを仕込み、食べ物を制限する者たちは、君たちを家畜として、単なるコマとして扱うのだ。

そんな自然に反する者たち、機械のマインド、機械の心を持った機械人間たちに、身を託してはいけない。 君たちは機械じゃない。 君たちは家畜じゃない。 君たちは人間だ。 君たちは心に人類愛を持った人間だ。 憎んではいけない。 愛されない者だけが憎むのだ。 愛されず、自然に反する者だけだ。 

兵士よ。 奴隷を作るために闘うな。 自由のために闘え。 『ルカによる福音書』の17章に、「神の国は人間の中にある」と書かれている。 一人の人間ではなく、一部の人間でもなく、全ての人間の中なのだ。 君たちの中になんだ。

君たち、人々は、機械を作り上げる力、幸福を作り上げる力があるんだ。 君たち、人々は人生を自由に、美しいものに、この人生を素晴らしい冒険にする力を持っているんだ。

だから、民主国家の名のもとに、その力を使おうではないか。 皆でひとつになろう。 新しい世界のために、皆が雇用の機会を与えられる、君たちが未来を与えられる、老後に安定を与えてくれる、常識のある世界のために闘おう。

そんな約束をしながら獣たちも権力を伸ばしてきたが、奴らを嘘をつく。 約束を果たさない。 これからも果たしはしないだろう。 独裁者たちは自分たちを自由し、人々を奴隷にする。

今こそ、約束を実現させるために闘おう。 世界を自由にするために、国境のバリアを失くすために、憎しみと耐え切れない苦しみと一緒に貪欲を失くすために闘おう。

理性のある世界のために、科学と進歩が全人類の幸福へと導いてくれる世界のために闘おう。 兵士たちよ。 民主国家の名のもとに、皆でひとつになろう。 

ハンナ 聞こえるかい
元気をお出し

ご覧 暗い雲が消え去った 太陽が輝いてる
明るい光がさし始めた
新しい世界が開けてきた
人類は貧欲と憎悪と暴力を克服したのだ

人間の魂は翼を与えられていた やっと飛び始めた
虹の中に飛び始めた 希望に輝く未来に向かって
輝かしい未来が君にも私にもやって来る 我々すべてに!
ハンナ 元気をお出し!

 2017年発刊の大野裕之チャップリン 作品とその生涯』(中公文庫)を読んだ。

チャップリンは日本びいきであった。それは秘書の高野虎市の影響だった。1961年まで合計4度日本を訪れている。1932年の最初の訪問では、5・15事件に遭遇しチャップリン自身も命を狙われている。予定を変えて相撲見物をしていた後、銀座で休憩していた時に、事件を知っている。チャップリンのトレードマークであるステッキは、滋賀県産の根竹で出来たものだ。

日本人はチャップリンびいきだった。しかし軍国主義の時代になると、評価は急落する。室生犀星は「時代遅れ」、伊丹万作は「感傷派代表」、高見順は『独裁者』を見て、「天につばする」と批判した。彼らは、時代の流れとチャップリンの偉大さを見誤っていたのだ。

チャップリンとトヒットラーは1889年4月の同年同月生まれである。喜劇王と独裁者。どちらもヒゲがトレードマークだ。何より大事なのは個人の自由であると考えていチャップリンは独裁者にたち向かった。結果として、チャップリンは笑いが困難に立ち向かう武器であることを証明したのである。

80歳の誕生日に報道陣をシャットアウトした。スイスの新聞は「沈黙を守るのは仕方がない。81本の彼の映画のうち76本が無声映画なのだから」と粋な解釈をした。世界の喜劇王には味方が多かったことがわかるエピソードだ。

「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である。」「人生に必要なものは、勇気と想像力。それと、ほんの少しのお金です。」「下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。」

人を笑わせることは難しい。自身が滑稽な人は喜劇役者にはなれない。改めて考えるとチャップリンもそうだが、日本人でも三木のり平も、榎本健一も、藤田まことも、植木ひとしも、実像は滑稽な人ではなかった。人間通でなければ、喜劇役者にはなれない。

「あなたの最高の傑作は?」という問いにチャプリンは「次の作品です」と答えた。常に次の仕事を自身の最高にしようとしていた。この心がけは見習いたい。実績を積むと、心が緩んで仕事が雑になる人が多いが、この人は手を抜かず、今まで身につけた経験と知恵を総動員して、最高のパフォーマンスをあげようとした。これに「世界の」という形容詞をつけられるほどの偉大さの源がある。