「フューチャリスト宣言」(梅田望夫・茂木健一郎)---これは「回天

梅田望夫茂木健一郎の共著「フューチャリスト宣言」(ちくま新書)を一気に読んでみて明るい未来を創りだそうとしている革命家をフューチャリストと呼んでいるように感じた。

ウェブ人間論」で対談した若い作家・平野啓一郎とは違った個性が際立っている脳研究を本籍とする茂木健一郎(1962年生まれ)との相性もいいようで、梅田望夫(1960年)の発言はいつも以上に知的刺激に満ちている。

今回はどのような未来が視野に入ってくるのかという観点もあったが、フューチャリストたらんとする同世代の二人の日々の生活のライフスタイルに興味を持って読み進んだ。
仕事上ではネット世界にどっぷりとつかりながらリアル世界ではクオリア(質感)の高い生活をしようとしているシリコンバレー在住の梅田望夫の日常には、これからの生き方の一つの方向が鮮明に見てとれる。若い人だけにとどまらず現在世界を生きている知的生活を志そうとする人が関心を持つべき生き方である。

リアル世界で一流の人に会い続け既存メディアでも発言し影響を与えていながら、ネット世界でも毎日1万人以上が訪問するブログを書き続けているタフな茂木健一郎という生き方も興味深い。茂木はリアル世界にやや重点を置きながら、らせん状に成長しようとする戦略をとっているように見える。この人物の本をいくつか眺めてみたことがあり、高い知性の持ち主であることはわかったが何を主張しているのかはよくわからなかった。今回、梅田との対談を読んで彼の考えていること、やろうとしていることがよくわかった。

リアル世界とネット世界の双方を視界に置きながら、右足と左足のどちらかにあるいは両方に等分に体重をかけるかが、今後の生き方のありようだということが見えてくる本である。

万国の労働者に革命を呼びかけたマルクスエンゲルスの「共産党宣言」にならって、タイトルを「フューチャリスト宣言」にしたのだろうか。
世界の進む方向を示し、若い世代の人生と生き方に大きな影響を与える思想を明快に語ったこの本は、新時代の革命へ向けての檄文である。

(「回天」とは明治維新で志半ばに倒れた志士・清河八郎の革命思想をあらわした言葉)


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以下はフューチャリストたちの日常のライフスタイルに関する部分のピックアップである。
参考にしたい。

梅田望夫
・1994年にインターネットの時代が到来
・メールよりブログのコメントやトラックバックのほうが気になります
・アンリかではほとんどネットの脳内空間だけで暮らしている。2002年からアメリカの国内線の飛行機には一度も乗っていない。どこまでネットで代替できるかという人体実験を5年くらい続けている。
・家かオフィスにいて、ネットに一日8-10時間費やしている。あとは考え事をしたり本を読んでいる。
・「この人たちは大事だな」という人をネット上で発見してブログやサイトを巡回する。日本語と絵意義でネット上に500人くらいの友だちや仲間(アメリカ人が多い)がいるような感じ。そして意味あるものを選び出して分類する
・「はてなグループ」という共有空間を10個くらい持っている。500人のブログの中で関連があると思ったら、URLを特定のグループに放り込む。ブログとグループが同時並行的に進む。
・朝は4時か5時におきる。8時までには昔だったら丸一日かけてしていた仕事が終わっていると感じることが多い。
・自分のリアルライフはクオリア(茂木のいう心のなかで感じるさまざまな質感)の世界。ネット側でものすごく効率のいい生き方をして早く切り上げて、リアルで過ごす時間が長くなる。
・ネットの付き合い方がその人の個性
・ネット時代のリテラシーというのは感情の技術です
・リアルタイムに、ブログとユーチューブとこれからの新サービスを組み亜悪と一日で教材ができる。大学で講義するエネルギーがもったいない。
・リアルとネットという二つの世界での生計の立て方、知的満足のしかたを組み合わせて戦略的に考えていく
・世の中雄を俯瞰して理解したい。たくさんの分野に興味があって、関係性に興味がある。俯瞰してものを見て全体の構造をはっきりさせたいという志向がある人はこれからの時代は有利になる。総合する視点。
・ネットへの興味とリアル世界での満足度は反比例する
・自分の著書についての感想は2万近く読んで1万くらい記録してある
・サンプルでなく全数でいくことにすごい時間的投資をしている
・ブログを書くのは修行
・ネットベンチャーなど採用するときにその人のブログを重視する
・会議でもネット上で議論をやりつくして、それでもできないことおwリアルの会議でやると、とんでもなく生産性の高い会議になる


茂木健一郎
・ホームページを立ち上げたのが1997年
・ウイキペディアのヘビーユーザーです
・いろんな人と会って刺激を受けて朝から晩までずっと仕事をしている。
・出張の気晴らしは、ユーチューブ
SNSの中途半端な感じには拒否感がある。
・自分のブログのコメントには返事は出さない
・7対3の3がウェヴ世界の人格ということはある。ヒット数はグーグル上に現れる時価総額だ。
・「クオリア日記」は一日1万2千から3千のアクセス
・英語のブログを11月から始めた。小林秀雄本居宣長などについて書きながら英語世界の偶有性に身をさらす
・インターねと時代には、古典的な教養というものが復活するんじゃないか
・警戒心を解くというのが、ネットで生きるための大切な知恵だ
・自己紹介は「僕の名前をグーグルで検索してください」といえばいい
・ブログ上に音声ファイルをアップしている
・日本の競争原理は、論文を点数化して何点以上だと教授昇進といった内規。アメリカのテニュア(終身教授資格)は「それまで誰も手をつけていない分野を切り拓いたかどうか」だ