富田勲・源氏物語芸術祭2011--電子楽器と人形舞による新世界

午前は大学で入試パンフレット用の取材を受ける。
社会で活躍している教授ということで何人かが取り上げられるという企画で、小論文の樋口裕一先生と図解の私との対談という趣向である。
一時間強の対談だったが、聴き手が上手だったので、気も持ちよく主張や授業の様子を説明できた。樋口先生との対談は、ダイヤモンド社の「図解VS文章」や中公新書ラクレの「対話力」や、対談講演などでよくやっているが、今回もなかなか面白かった。この内容もパンフで少し載せるのは惜しい。

終了後、秘書の近藤さんや学長室の高野課長と仕事をこなす。

それから新宿に出てJR本社に向かう。途中、学長から電話。
総勢120名の受講生に対して3時間半の講演と実習を行うセミナー。

終了後、湘南新宿ラインで横浜、そして横浜みらいホールの大ホールへ。
富田勲源氏物語芸術祭2011--電子楽器演奏と人形舞でつづる、富田勲による源氏物語の新世界」を堪能する。
「自分の中にオーケストラを持っている」という橘ゆりの電子オルガンの素晴らしいソロ演奏。
文楽や人形劇とは異なる独自の絢爛たる舞台である「人形舞」で、時には黒子、時には人形の相手役となりながら独特の美的世界を展開している注目のホリ・ヒロシ
そして、富田音楽の集大成ともいえる「源氏物語幻想交響曲絵巻」を完成した富田勲

「序の曲」「桜の季節、王宮の日々」「北山の寺院--美しい童女・若紫」「葵の上--六条御息所--生霊」「浮船」「出家の笛」「再び訪れる春」「終曲 平家の世へ」。

この三者のコラボレーションで、驚くべき幻想的な舞台が現出した。怖くなるほどの交響曲の凄さを一人で演奏する音楽と、人の感情を見事にあらわす大型の人形の舞の素晴らしさに大ホールの人たちはは息をのみながらの観賞となった。

第二部は、「謹訳源氏物語」全10巻のうち7巻まで完成させた林望(リンボー)先生の「今を生きる--そして源氏物語」というテーマの講演。だった。

  • 源氏物語には、エロスとしての生々しい恋物語、コミカルなユーモア小説、恐怖のスリラー小説、という面がある多面体の作品。そしてそれ以上に、人間の生き方をありのまま、生命の実相を描た小説だ。
  • 理想の男に関わった女たちの物語だ。幸福な人は一人もいない。悪人も一人もいない。誰もが思い当る節のあらゆる不幸が散りばめられている。
  • 実に正確に書かれている作品。形容詞もそうだ。「ろうたし」(いたわりたくなるようなけなげさ、よわよわしさ)、「うるわし」(完全無欠、やや批判的な意味も)、「うつくし」(かわいい、大事に思う)、「なまめかし」(生身のうつくしさ、清潔さ)。どの時代にも変わらない「もののあはれ」を描いている。

以上を話したうえで、源氏物語の原文を見ながら林望先生の訳を重ねて聴くという趣向で、リアリティを感じながら源氏の世界を垣間見ることができた。

終了後、招待していただいた富田勲先生を囲んで仲間と一緒に記念撮影することができた。