電子書籍の発刊ですーー『図で考える人は仕事ができる』(ディスカバー21社)

電子書籍e-book選書の第6弾を発刊です。11月は5冊でした。12月も続きます。

2002年に日本経済新聞社から出した私の代表作を電子書籍化したものです。

[久恒啓一]の図で考える人は仕事ができる (ディスカヴァーebook選書)

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物ごとを図示すると、今まで見えなかったことや全体像が驚くほどよくわかる図解思考。複雑な問題も明快にし、企画作りなどにも力を発揮する発想術。マルと矢印だけでできる簡単な使い方や仕事への効用を説いた異色の本」。

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今日のヒント。伊原西鶴『日本永代蔵』

人は十三才迄は、わきまへなく、それより廿四五までは、親のさしつを受け、其後は我と世をかせぎ、四十五迄に、一生の家をかため、遊楽する事に極まれり。

(江戸時代の幸せな人生のモデル)

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「名言との対話」12月13日。仲代達矢無名塾

仲代 達矢(なかだい たつや、1932年12月13日‐ )は、日本の俳優、無名塾主宰。

東京都目黒区生まれ。小学2年生で父が死去する。小学校は3つ、工業学校2つを経て、高校定時制を卒業。中学校用務員、競馬場の用務員、ボクシングの3回戦ボーイなどを経て1952年俳優座4期生となる。

1955年の『新劇』新人演技賞から始まって、2007年文化功労者、2013年朝日賞、2015年文化勲章を含め、2019年の東京国際映画祭特別功労賞まで40本の賞を受賞している、日本を代表する名優である。

芸名の達矢は、射手座生まれであることから的に達する矢のごとくと名付けられた。映画では、『人間の条件』『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』『華麗なる一族』『不毛地帯』『金環食』などで主役や準主役を演じている。テレビでは、NHK大河ドラマだけでも『新・平家物語』『秀吉』『風林火山』などがある。いずれも名演技で記憶に残る俳優である。

俳優としての実力は申し分ないが、私が注目しているのは、1975年に妻の宮崎恭子と創立した「無名塾」である。「素敵な次代の役者を育てたい」と世田谷で半世紀近く開いている俳優養成のための私塾だ。無名という言葉には、「無名に戻ったつもりで修行に帰ってこられる場所、「壁にぶつかった時に、原点に帰れる場所」という願いを込めている。俳優業は生涯修行なのだ。無名塾の塾規には「道場においては」、「時間厳守」、「禁酒禁煙」などの心得が掲示されている。俳優道を学ぶ「道場」なのである。ここで育った人は俳優や演出家として活躍している。役所広司もその一人だ。

2007年3月に夏に迎える父の七周忌のことを考えながら、たまたま衛星放送のチャンネルを回していたら、藤沢周平原作の小説をドラマ化した「清三衛門残日録」にあたった。父がこのシリーズをよく見ていたことを思い出しながら仲代達矢のいぶし銀の演技に痺れたことを思い出した。残日とは「日残りて昏るるに未だ遠し」という意味だが、この言葉は過去と未来をつなぐ時間と現在の空間を取り込んでいて、味わい深い響きを持っている。

ふと父が私たち3人の子供に残したメッセージは何だったのだろうかと考え込んだ。いくつか思い出したのだが、その一つは「歴史と地理」という言葉だった。どのようなものも歴史軸(タテ軸)の中で深くとらえ、地理軸(ヨコ軸)の中で広くとらえる必要がある、と父が語っていた。学生の時代にはよくわからなかったが、そのメッセージの意味に気がつくようになった。

「塾」という言葉で思い出すのは、脚本家の倉本聰が脚本家や俳優を育てようとする、北海道で開いている富良野塾だ。塾、私塾という言葉には「志」が感じられる。

さて、「無名」である。毛沢東は創造的な仕事をする条件として「若い・貧乏・無名」をあげている。トーマス・マンは「無名と貧乏の歳月は長ければ長いほどよい」としている。洋の東西を問わず同じなのは面白い。仲代達矢の「俳優道」にも無名という原点を忘れるなというメッセージが込められているように思う。「無名塾」出身であれば、常に原点を問いかけられている感じがするだろう。まことに深いネーミングである。

                      (参照:無名塾のホームページ)