沖縄は誰のものか--沖縄タイムスの長元専任論説委員

18日の沖縄タイムスの長元朝浩専任論説委員の講義。
1950年沖縄県生まれ。東京外国語大学中退。東京都庁を経て、74年沖縄タイムス入社。編集委員、学芸部長、九州大学助教授(1999年4月〜2000年3月、出向)、編集局長、東京支社長、取締役論説委員長などを経て現職。

  • 沖縄は東アジアの国際関係にストレートに影響を与えた。あるいは翻弄されてきた。受動性と能動性。バランス感覚。
  • 1609年の薩摩進攻からもずっと中国と日本との立ち位置に悩んできた。日清戦争の前は中国にシンパシーを感じる人が多かった。沖縄の徴兵忌避率は高かった。
  • 翁長知事の語る言葉に注目し、その思いや意図を推し量ることが大事だ。
  • 官房長官との会談では「魂の飢餓感」という言葉を初めて使った。中谷防衛大臣との会談では「政府は沖縄を領土としてしか見ていないのではないか」と語った。
  • 「領土としてしか見ていない」
    • 1879年(明治12年)の「琉球処分」は本土側の見方であるとし、最近沖縄では「琉球併合」と呼んでいる。戦前の旧制高校では「琉球征伐」という言葉が使われていた。
    • 歴史学者の比嘉春潮は、沖縄は長男(1879年)、台湾(1895年)は次男(、韓国は三男(1910年)と嘆いている。
    • 中国の海禁政策冊封態勢で、琉球朝貢の3倍の恩賜を与えられた。この物品を使って周辺諸国と貿易を行った。
    • 琉球処分時には宗主国・中国とは揉めた。日本はこの時、中国での日本の欧米並みの通商権を得る条件として、沖縄本島は日本領、宮古八重山先島諸島は中国領とする分島増約案を出す。琉球亡命者の請願の影響もありこの案は正式調印はされなかった。
    • 第二次大戦の沖縄戦では、本土決戦に向けての時間稼ぎで持久戦を命令された。4月1日水際で戦わずに上陸させた。当時の島田知事は抗戦を主張した。日本軍の南部後退に伴い住民も道連れとなり大きな犠牲となった。1945年6月23日牛島司令官(第32軍)は「悠久の大義に生きよ」と訓示し自決。後はバラバラになった。
    • 近衛首相がソ連に和平の仲介を頼んだが、この時の案では、日本固有の四島を残すが、後は(含む沖縄)は放棄するということになっていた。
    • 1947年の天皇メッセージ「米国による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」「日本の主権を残したままで長期租借によるべき」「手続きは米国と日本との二国間条約によるべき」。
    • 沖縄は大日本帝国の南門で、国防上重要という視点。今も変わらない。翁長知事の「領土としてみていない」発言はこのことを指している。
  • 「魂の飢餓感」
    • 無主権状態
    • 1945年衆議院選挙法改正(婦人参政権、)では沖縄県民の選挙権は停止になり代表者を出せなかった。
    • 1946年日本国憲法の制定時には沖縄代表は不在であった。
    • 1947年から1972年まで沖縄には日本国憲法は適用されなかった。高等弁務官による施政。1968年本土復帰を前にして主席を選んだが、自治は無かった。
    • 憲法上の基本的人権自治権。拷問は禁じられているが、米軍が人民党員らを拷問にかけている。
    • 自分たちのことを自分で決められない。自主決定権。民意の変化があり、知事選(10万票差の圧勝)、衆院選(4人とも辺野古反対)となった。民主国家ならリセットすべきだ。
    • 世論、安保法制、原発などで政府は1か月の中断で誠意をみせた。台風でなかなかすすまない時期。
    • 翁長知事は国連で訴える。第三者委員会の「瑕疵がある」との結論を踏まえ取り消し処分を行う。これは裁判になる。
  • かつての自民党政府には、戦争経験者がいて話が伝わり易かった。また国民の統合を大事にしており富の分散にも心を砕いた。
  • 安倍政権:中国の軍事大国化に対抗して軍事大国へ。日本会議という協力な保守団体、幸福の科学、在日特会などが大同団結して、沖縄の不沈空母化をすすめている。
  • 日中関係:嫌中感情と反日感情
    • 米中関係にはコントロールチャネルがいくつかある。戦略対話。経済、安保。
    • 3・11テロで観光客が減った。火の粉が降りかかるのは沖縄。
    • 当事者間では脅威のレベルを減らす努力。平和のリアリズム。バランスの取れた見方。
    • ネットではデマが氾濫。「基地は北海道が一位」「普天間は田んぼの中だった」「沖縄は基地で食べている」、、、。
  • 尖閣」:まず日本が防衛。海上自衛隊、警察、海上保安庁。米軍ではない。アメリカは人も住んでいない尖閣になぜ軍が出動するかという考え。
  • 沖縄問題は重層化。沖縄学の父・伊波普猷は「沖縄歴史物語」で、日本の帝国主義と中国の夢の真ん中に沖縄があるという。
  • 沖縄の経済自立:3K構造(公共・基地・観光)。ANA物流拠点24時間。コールセンター。クルーズ船。アジアマーケット。バイオ・IT。非正規雇用は全国一。結婚は二極化。離婚率は高い。シングルマザー、母子家庭、子どもの貧困。安定しているのは地主・公務員・電力銀行マスコミ。大学進学率は一番低い。富の格差の進行。帰化人の多い久米村。中国の印象は悪い、社会主義時代はよかったが、資本主義的になってからは警戒感が強い。
  • 沖縄独立運動:日本の独立が先。常識に帰れ。
  • 米軍は快適。日本予算。
  • 辺野古は米軍がいなくなったら、国有地になっているので自衛隊が使うだろう。
  • 沖縄問題は複雑怪奇!
                                              • -

高校野球の決勝で東海大相模高校が、激戦の上、仙台育英を撃破。素晴らしい試合。こういう若い人がいるということに勇気づけられる。