「だまされない力」とは「疑う力」だった。それは「問う、そして学ぶ」ということ。
佐高信・前川喜平『だまされない力』(平凡社新書。2025年9月12日刊)を読了。
以下の違いは何かを問う。
- 教育と学問:教え育てる「教育」は教える側からの視点。問う、そして学ぶ「学問」は学ぶ側からの視点。福沢諭吉の『学問のすすめ』に着目。
- 経験と体験:体験とはある出来事を自分の身で実際にやってみたことで個別、具体の一次体験。経験とは 積み重ねで得た知識で抽象度が高い。個々の体験を蓄積し抽象度をあげた経験に昇華していくべきということだろう。
- 修身と道徳:戦前の「修身」は「筆頭科目」で校長らが教えていた。初期は誠実・勤労・倹約・孝行。1930年代以降は皇室尊崇・忠君愛国・滅私奉公など。訓話・朗読・暗唱・唱和が中心。儒教の教え(大学の「修身・斉家・治国・平天下」)に由来。「道徳」は、日本の小・中学校に設けられた「特別の教科」(2018〈小〉/2019〈中〉開始)。「よりよく生きようとする道徳性」を育むことを目標に、価値を押し付けず自ら考え議論する学びを重視。
- 司馬遼太郎と藤沢周平:司馬遼太郎は国家・時代のダイナミズムを描く「大河の歴史小説」。藤沢周平は小さな藩と市井の暮らしを描く「抒情的な時代小説」。上からの司馬史観、下からの藤沢語り。両方ともいいというのはおかしいという説もあるが、私はどちらも好きだ。
- 日本国憲法と大日本帝国憲法と自由民主党憲法草案:図解で比較してみよう。
以下を問い、改めて学ぶ。
- 出生率:合計特殊出生率「女性(15-49歳)が一生に産む平均子ども数を表す期間指標」。5歳の幅の統計を合計した数値。2024年1.20。2024年1.15。2024年の出生数は68万人、半分の34万人の女性が1.15の割合で子どもを産むとすると30年後の2055年は出生数は39万人。60年後の2085年はその半分の女性20万人が1.15の子ども23万人を生む。90年後はその半分の女性が12万人が1.15の14万人。120年後はその半分の7万人の1.15は8万人。150年後は9万人。180年後は5万人。210年後は3万人。240年後は2万人の出生数となっていく。このままいくと500年後から800年後には日本人は日本列島にいなくなる。
- カルト:高度な統制や不当な影響を用いてメンバーを従わせる高コントロール集団。具体的な行為は詐欺、脅迫、監禁、違法な勧誘など。
- 法華経:大乗仏教を代表する経典の一つ。人間やあらゆる衆生が仏となり得るという普遍的救済を中心思想。
- 百尺竿頭に一歩を進む:禅語で「すでに到達した極点に安住せず、さらに一歩踏み出して既存の枠や執着を超える」という意味。現状維持や到達感への執着を断ち、未知へ身を投じる決断を指す。
ーーーーーーーー
今日の収穫
中村哲「(日本国憲法というのは)戦闘員200万人、非戦闘員100万人、戦争で亡くなった約300万人の人々の「位牌」」
ーーーーーーーー
本日
・「アクティブ・シニア革命」の送付:生田君、佐藤元信君。
・散髪:店主から散髪屋の盛衰について聞く。土平日より土日の昼前後がいい。
・机上の片づけを少々
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「名言との対話」10月26日 岡崎久彦 「戦略が良ければ、戦術の失敗は挽回できますが、戦略が悪いと、戦術的に成功すればするほど傷が深くなります」
岡崎 久彦(おかざき ひさひこ、1930年(昭和5年)4月8日―2014年(平成26年)10月26日)は、日本の元外交官、評論家。享年84。
東京大学法学部在学中に外交官試験に合格し、外務省に入省。ケンブリッジ大学経済学部卒業。外務省情報調査局長、在サウジアラビア大使、在タイ大使などを歴任。作家・外交評論家としても活躍した。祖父の岡崎邦輔は、陸奥宗光の従弟にあたる。岡崎の大作『陸奥宗光』は、まさに書くべき作品だったのだろう。
1977年、長坂覚の筆名で著した『隣の国で考えたこと』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。1981年、『国家と情報』でサントリー学芸賞を受賞。第11回正論大賞も受賞。『戦略的思考とは何か』(中央公論社〈中公新書〉、1983年、改版2019年)、『情報・戦略論ノート』(PHP研究所、1984年/PHP文庫、1988年)などを著し、外交論の論客として知られた。
話題になった岡崎久彦『戦略的思考とは何か』を読んで、私は目が開かれた思いがしたことがある。国家戦略の欠如を憂えた著者は、歴史と地政学を入口に日本の戦略的環境を解明し、その歩むべき道を示した。情報の役割を重視し、冷静かつ現実的な分析に徹した国家戦略論の名著だ。日本という国は、20世紀の前半は英国、後半はアメリカと、アングロサクソンとの同盟で栄えた国だ。その路線から外れたときに悲劇が起こる。だから、アングロサクソンとの協調で進むべきだという結論だった。
岡崎久彦『繁栄と衰退と』は、「オランダ史に日本が見える」が副題だ。17世紀オランダの経済的繁栄と、その繁栄に嫉妬した英国との関係が描かれている。17世紀オランダという貿易立国の歴史は、現在の日本への教訓に満ちている。私は寺島実郎『17世紀オランダ論』と併読しているので、この本はじっくりと読んでおくべき本であることがわかる。
韓国との関係については、「日本人の側から考える場合、何よりも大事なのは、韓国の歴史、人種、言語、政治、経済、社会について、真に偏見のない、曇りのない眼で見るよう努力することでありましょう」(『隣の国で考えたこと』)と語っている。
良質の情報と正確な情勢判断は、戦略的思考の基礎だ。国も組織も、その盛衰は個々の戦術よりも大きな戦略に左右される。大戦略は哲学から出てくる。ずっと大事にしてきた「哲学、戦略、戦術、戦闘」いう段階を踏まえて進んでいこう。

