府中市美術館で開催中の「棟方志功展」(連作と大作)ーー「わたくしの願所にひとツひとツ願かけの印札を納めていくということ、それがこの柵の本心なのです」

府中市美術館で開催中の「棟方志功展」をみた。

連作と大作の展覧会だ。1942年、初の随筆集「板散華」で自身の木版画を「板画」と呼ぶと宣言する。板の声を聞き、板の性質に寄り添い、板の中から生まれた絵画だ。棟方にはひとつの主題を数点から数十点に及ぶ画面で展開した組作品が多い。

同じ時期に棟方は「柵」という言葉を使う。四国巡礼が首に下げる廻札を意味。ひとツひとツ、自分の願いと信念を寺に納める。「わたくしの願所にひとツひとツ願かけの印札を納めていくということ、それがこの柵の本心なのです」。生涯を通じて制作され続ける連続体と考えていたのであろう。

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星座の花嫁:蔵書票には「棟方野人蔵書」とある。

ヴェニスの生誕:堀口大学の詩集の別冊。裸婦。

大和し美し:詩人・佐藤一英の神話に取材した長編の倭建命の生涯を描く。長大すぎるとして展覧会会場で拒否されそうになるが、浜田庄司柳宗悦のとりなしで2段掛けでの展示が許可。文字と絵が一体。民芸運動に影響を受ける。版画巻。絵巻物。板画巻。20面。

二菩薩釈迦十大弟子

華厳譜:仏教の独自解釈。

東北鬼門譜:佐藤が書いた東北の飢饉の詞「鬼門ーある巫女の呪文」。日本列島の鬼門に位置する東北の宿命と苦難を仏の力によって打ち払う。

観音経曼荼羅:33面。菩薩が33の姿に身を変えて衆生を救う。

空海頌(そらうみのたたえ):佐藤一英の連作詩。54柵。

運命頌:ベートーベンの第五「運命」。大原総一郎。ビニロンの工業化を祝う。

かきるい頌:保田與重郎の短歌。短歌と版画。

鐘渓頌:河井寛次郎の窯の名前。

女人観世音板画巻:岡本かの子「女人ぼさつ」、1952年第2回オルガノ国際版画ビエンナーレ優秀賞。世界進出のきっかけ。

花矢の柵:アイヌの祭に想い。青森県庁舎の吹抜けロビーの正面玄関の真上。

華狩頌:弓や鉄砲を持たずに、心で花を狩る。

海山の柵:八甲田山から太平洋と日本海を一望する雄大な景色に感動。

大世界の柵 坤 人類から神々へ:棟方最大の作品。倉敷国際ホテルの開業。大原総一郎。

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ジム:ウオーキング30分中心。

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「名言との対話」望月百合子「自由で平和な社会、その中で女性が、伸びやかに才能を発揮でき、集える場の創造」

望月 百合子(もちづき ゆりこ、1900年明治33年)9月5日 - 2001年平成13年)6月9日)は、日本評論家

山梨県出身。読売新聞社に入社し婦人記者となる。1921年(大正10年)よりパリのソルボンヌ大学にに国費留学、作家アナーキストである石川三四郎の影響を受け、1925年大正14年)3月の帰国後はアナーキストとして活動した。

『女人芸術』『黒色戦線』をはじめ、高群逸枝平塚らいてう等とともに『婦人戦線』創刊に参加。女性解放、人間解放をテーマとした評論をはじめ、翻訳、エッセイなどを発表。1938(昭和13)年、旧満州へ渡り、満州新聞のジャーナリストとして約10年間を過ごす。結婚。この間、女性教育にも積極的に携わり、大陸文化学園、丁香女塾を開校。敗戦後も現地に留まり、1948年(昭和23年)に中国・北京経由で引き揚げた。

戦後は翻訳に専念した。1988年(昭和63年)には山梨県立文学館建設懇話会委員長に就任し、山梨県立文学館設立にも携わる。1994年には現在の富士川町に所在する大法師公園における竹久夢二歌碑設立にも尽力している。1999年には、山梨県南巨摩郡鰍沢町(現・富士川町)に「望月百合子記念館」が開館した。ここも訪問しよう。

大正時代から断髪洋装の新聞記者として活躍した望月百合子は2001年に100歳で亡くなった。翌年の2002年には「すべての女性の幸福と人間としての平等、平和な世界」の実現のために活動した望月百合子の遺志を継ぐために、NPO法人現代女性文化研究所がつくられている。毎年6月には望月百合子忌が開催されている。また2019年5月25日現在、会報は52号に達しているというから活動は活発だ。今年は7月半ばまで文京区立千石図書館では「社会運動家 望月百合子の生涯」展が開催中である。

19世紀の最後の1900年という明治時代に生まれ、大正、昭和、戦後、平成と、21世紀の最初の2001年まで、足掛け3世紀にわたって100年の人生を生きた百寿者・望月百合子は、女性の幸福と平和のために戦った。その影響力は生きている間だけでなく、今もなお続いている。その精神は死んではいない。望月百合子の信念と情熱の松明は、次の世代に引き継がれている。