『「図解の技術」大全』の刊行に、ようやく目途が立った。

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(後姿探検隊)

今日は、出版社の編集者と会って、進行中の企画について、じっくりと相談をした。

2020年から『図解コミュニケーション全集』の刊行を続けてきた。第8巻まで刊行済みで、現在第9巻を編集中だ。

並行して、『「図解の技術」大全』』の執筆を継続してきた。本日、編集者に第3章までの修正加筆した原稿を手交した。残りの4章、5章の完成にかかる。これでようやく目途がたった。10月刊行予定でスケジュールを組んだ。

400ページに近い大作になる。これを『全集』の総集編の第10巻とすることにしたい。

全10巻の『全集』と総集編の大作『大全』で、「図解」というライフワークがひとつ完成することになる。

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  • NHKアーカイブス「昭和人物史」の「永井荷風」の①②を聴く。永井荷風の華麗な生い立ち、銀行を含む職業遍歴、そして38歳から亡くなる前日まで42年間にわたって書き続けた『断腸亭日乗』という日記の意義。この放送に刺激を受けて、荷風の言葉を拾ってみた。「世間のつまらぬ不平や不愉快を忘れるには学問に遊ぶのが第一の方法である」「休戦の祝宴を張り皆々酔うて寝に就きぬ」「もし今日の東京に果たして都会美なるものがあり得るとすれば、私はその第一の要素をば樹木と水流に俟つものと断言する」
  • NHKラジオ深夜便の聞き逃し配信で「帚木逢生」(精神科医・作家)のインタビューを聴く。この人は1947年生まれ。東大の仏文を出てTBSに入社。すぐに辞めて故郷に帰り九大医学部を卒業して精神科の医者になる。以降、作家と医者の二刀流で生きてきた人。その二つは実は一つであった。「ネガティブ・ケイパビリティ」ということを説明していた。答えの出ない事態に耐える力 が重要だと力説。「仕事の中身を変えるのが骨休め」とも。以前読了した『日御子』。2-3世紀の弥摩大国と漢・魏・晋と韓半島との交流と女王・日御子の物語。通訳を家業とする使譯の「あずみ」一族の代代が語り部となって物語が展開する。一族の教え「人を裏切らない」「人を恨まず、戦いを挑まない」「良い習慣は才能を超える」、「仕事の中身を変えるのが骨休め」を軸に展開する。鉄、倭国、那国と奴国、金印、生口、氷室、紙、文字、人と人を結ぶ、天と人を結ぶ日御子、人の人たる土台、親魏倭王、戦いへの備えと交易は裏表、玄学、、、。

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「名言との対話」5月14日。河合雅雄「サルまで立ち返って人間性の根源を調べにゃならん」

河合 雅雄(かわい まさを1924年大正13年)1月2日 - 2021年令和3年)5月14日)は、日本の霊長類学者、児童文学作家理学博士。享年97。

兵庫県丹波篠山市出身。旧制新潟高校から京都大学理学部動物学科御卒。日本モンキーセンター所長。朝日賞、紫綬褒章などを受賞している。

日本における「サル学」の創始者たる今西錦司に学生時代から師事し、宮崎県の幸島の野生のニホンザルを研究した。それぞれのサルの顔と覚え、名前を付けて、戸籍をつくる。餌づけに成功し個体を観察することによって、社会の存在を確認した。ある若いサルが芋を海水できれいに洗って食べるという行動をした。それがすべての猿の行動、もっと言うと文化になっていくことを発見するなど、徹底したフィールドワークはに基づいた日本の「サル学」は世界の注目を浴びた。

河合は日本の「サル学」の道を切りひらいた霊長類研究の世界的権威となっていく。この辺りのことは、私は「梅棹忠夫著作集」第7巻「日本研究」の「高崎山」をワクワクイしながら読んでいる。

NHKテレビ「100年インタビュー」で河合雅雄は、3つの要件を持つサルが人間であると喝破していた。一つは日本足歩行。二つ目は社会集団の単位は家族(日本の発見。父親の存在)。三つ目はコミュニケーション(言葉)。サルと違って、人間には「父親」が存在する。その役割は、守る、経済、養育であるとし、男女が共同して養育にあたることが特長だと語っている。

日本では猿は人間にとって身近で親しい存在だが、西洋では単なる動物として研究対象にしている。日本ではサルと人間は地続きである点が西洋とは違う。そういう関係が、独特の「サル学」を生んだのである。

河合雅雄は、霊長類学者である一方で、草山万兎(くさやま・まと)というペンネームを持つ児童文学者で、童話を書く作家でもあった。「霊長類学」という科学の研究をする一方で、人間には「創造する力」があることを証明したいとのことで二刀流の生活を送っている。

河合隼雄という有名な臨床心理学者は弟である。調べてみると、河合兄弟は男ばかりの6人兄弟だった。長男は外科医、次男は内科医、三男の雅雄は霊長類学者、四男は歯科医、五男の隼雄が臨床心理学者、六男は脳神経学者。この兄弟が、人間の肉体と精神と脳の世界に挑む風景は壮観である。互いに「人間」についての情報を交換しあったのだろう。

河合雅雄は戦争が終わって、どうして人間はこんな愚かなことを繰り返すのかと考える。人間とは何か、それを根源から調べよう。それには大本から、つまりサルを対象にしようと考えたのだ。「サルまで立ち返って人間性の根源を調べにゃならん」、それが河合雅雄の人間研究の動機だった。