蓮実重彦「伯爵夫人」(新潮社)を読了。
- 作者: 蓮實重彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/06/22
- メディア: 単行本
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「エロスX戦争Xサスペンス 世界の均衡を揺るがす文学的事件!」とオビにあるように、元東大総長が書いた衝撃の書だ。三島由紀夫賞の受賞にふさわしいと思う。
以下、受賞の記者会見。
https://www.youtube.com/watch?v=YGrkC0NvBFA
5月に都内で開かれた受賞記者会見で80才の蓮實は「まったく喜んではおりません。はた迷惑な話だと思っております」と受賞の感想を不愉快そうに述べ、報道陣からの質問には「馬鹿な質問はやめていただけますか」などと切り返す場面もあり、会見場は異例の重苦しい雰囲気に包まれた。
「お読みになってくださったんでしょうか?」
という記者に対する質問は強烈だ。
記者たちの無教養がさらされた。
最後のページが「帝國・米英に宣戦を布告す」という、夕刊の一面で終わっている。
この物語は昭和の戦争の前夜が舞台である。
三島由紀夫や吉田健一と思しき人物もわずかだが登場する。
エロスの小説、純文学の小説、あるいは教養小説でもある。
仕掛けの多い作品だ。
女性に人気があるだろう、と蓮見は語っている。
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今日の収穫
- 黒田博樹の座右の銘「雪に耐えて梅花麗し」
- マイケル・ジョーダン「今日が最後の試合だったら、お前は何をするんだ」
「名言との対話」3月23日。内村鑑三。
- 「最大遺物とは何であるか。、、人間が後世に遺すことにできる、ソウして誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば「勇ましい高尚なる生涯」であると思います。」
- 内村 鑑三(うちむら かんぞう、万延2年2月13日(1861年3月23日)- 昭和5年(1930年)3月28日)は、日本のキリスト教思想家・文学者・伝道者・聖書学者。福音主義信仰と時事社会批判に基づく日本独自のいわゆる無教会主義を唱えた。
- 「少しなりともこの世の中を善くして往きたいです。この世の中にわれわれのMementoを遺して逝きたい。」
- 「私はまだ一つ遺すものを持っています。何であるかというと、私の思想です。、、、私は青年を薫陶して私の思想を若い人に注いで、そうしてその人をして私の事業をなさしめることができる。、、著述をするということと学生を教えるということであります。」
- 「、、来年またふたたびどこかでお目にかかるときまでには少なくとも幾何の遺物を貯えておきたい。、、、この心掛けをもってわれわれが毎年毎日進みましたならば、われわれの生涯はけっして五十年や六十年の生涯にはあらずして、実に水の辺に植えたる樹にようなもので、だんだんと芽を萌き枝を生じてゆくものであると思います。」
- 「アノ人はこの世に活きているあいだは真面目なる生涯を送った人であるといわれるだけのことを後世の人に遺したいと思います。」
- 棒との言葉を含めて以上の言葉は、「内村鑑三「後世への最大遺物」(岩波文庫)にあるものだ。箱根のキリスト教夏季学校での講話である。人は生涯において何を遺すべきか。金か、事業か、人か、さもなくば高尚なる人生を、と内村は言う。生き方の指針として心を打つ。