『合意術ーー「深掘り型」問題解決のすすめ』(e-book選書の第8弾)

e-book選書の第8弾(ディスカバー21社)。『合意術ーー「深掘り型」問題解決のすすめ』。2005年に日経新聞から刊行した著書の電子版です。

以下、読者へのメッセージ。

評価より評判。安全より安心。定量より定性。文章より図解。説得より納得。理論より方法。勉強より実行。構造より関係。本社より現場。宣伝より広報。知識より知恵。世界より日本。中央より地域。

左側が20世紀型価値観、右側が21世紀型価値観というように理解してみると、私たちが直面している価値観の転換の本質が浮かび上がってくるような気がします。「合意」は、明らかに21世紀型の言葉群で支えられています。

企業経営や社内業務をはじめ、政治、行政、あるいは司法、教育と、あらゆるところで合意にかかわる問題が山積みになっています。問題解決のために合意に絡むさまざまな場面に首を突っ込んでみると、当事者のほとんどが合意形成に関する方法論を持ち合わせていないという現実にぶつかります。
この本は、数字という定量情報よりもデコボコ・ゴツゴツ・バラバラして扱いにくい定性情報(苦情・意見・思いつきなど、、、、)を大切にしようという提案、そしてそういう定性情報を図解という考え方と手法で整理するというプロセスを一緒にたどることによって、合意への道が開けるという新しい考え方を提案しています。

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川柳がひとつできました。「ユニクロと スシローニトリ 衣食住」

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今日のヒント。日経新聞文化欄。211216。

・「七福神」:日本固有の神は恵比寿だけ、仏教由来は大黒天、毘沙門天、弁才(財)天。中国の禅僧の布袋、道教由来の福禄寿と寿老人。(江戸中期に確定。ごった煮)

赤松良子「友人との交流で気持ちを切り替え、大きな論文を執筆し、、、職場の外に目を向けることで気持ちのバランスをとり、このピンチを切り抜けることができたのだと思う」

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「名言との対話」12月16日。戸川猪佐武「人間を描く」

戸川 猪佐武(とがわ いさむ、1923年12月16日 - 1983年3月19日)は、日本の政治評論家・作家。

神奈川県平塚市出身。父親は小説家で元平塚市市長の戸川貞雄、弟は小説家の菊村到。である。1947年に読売新聞へ入社。政治部記者。1962年に読売新聞を退社して政治評論家に転じる。

実録政治小説小説吉田学校』全八巻はベストセラーとなって戸川の地位を確立させた。後にこれらを更に掘り下げた『小説吉田茂』と『小説三木武吉』なども執筆している。 政治記者として権力の中枢に肉薄し続けた経験とそこで築いた信用と人的ネットワークによって得た膨大な情報を使って書いた。「小説」と銘打っているが、実際は史実を克明に追ったノンフィクションである。

『小説 三木武吉』(角川文庫)を読んだ。三木武吉香川県高松の生まれ。早稲田を卒業。衆議院議員を長く勤め、第二次大戦後は日本自由党の結成に参画した。後に日本民主党を結成し、悲願である鳩山一郎内閣の実現に尽力する。その後は、社会党の右派左派の合同に対抗して、保守合同である自由民主党の結成を推進した党人政治家だ。

「小説」という冠がついているが、ノンフィクションであるという印象を持った。その筆致は、主人公の政治家の「人間」そのものを理解し描く。その人間が政治行動を描く。三木武吉という政治家の魅力が存分に描かれている。戸川は一番好きな政治家が吉田茂の天敵であった生粋の政党人・三木武吉だった。

巨魁、逆手に取る名人、魔力的な説得力、策士、ヤジ将軍、政界の大狸、など三木武吉をあらわす言葉は多い。三木には実現すべき「正義」があり、そのために手段があると考えていたのである。鳩山一郎の総理と保守合同が彼の正義であった。

戸川猪佐武の代表作は『小説吉田学校』全8巻である。この大部の小説の後に、『小説吉田茂』を書き、そして最後に『小説三木武吉』を書いた。吉田茂鳩山一郎池田勇人佐藤栄作田中角栄三木武夫福田赳夫大平正芳鈴木善幸まで10代の総理の時代。戦前戦後からバブル崩壊の前までの迫真の日本政治史であり、多くの読者を得たベストセラーとなった。

戸川の娘と私はJALの入社同期であり、仲間と一緒に平塚の自宅へ伺ったことがある。お父さんは動物文学で有名な戸川幸夫と聞いていたが、表札には「戸川 猪佐武」と書いてあった。「お父さんは政治評論家ですか」と聞いたら「父をご存じ?」との答えがあって、しばらくして本人が現れ、懇談したことがある。田中角栄のことが話題になった。

政治は一寸先は闇であるとはよくいわれるが、病気、死去などで状況が一変するドラマであることが、戸川猪佐武の名文章でよくわかる。鳩山一郎脳出血緒方竹虎の急性心臓衰弱による突然の死、大平正芳の外遊による過労がたたった死。、、、

戸川猪佐武は表面にあらわれた政治行動を記すのではなく、権力を持つ、持とうとする人間を見つめ、人間を描く。そのことによって、修羅場、失意、策謀、決起、雌伏、闘争などの政治行動がはじめてわかるという考えだった。『小説三木武吉』を読んで、その考えに納得した。

畢竟の大河小説『小説吉田学校』は、後に映画化される。吉田茂には森繁久彌鳩山一郎には芦田伸介、以下当代の名優たちがずらっと並んでいる。三木武吉の役は、戸川猪佐武の推薦で若山富三郎が演じている。この映画の試写会を見た原作者の戸川猪佐武は、その夜に急逝する。戸川猪佐武自身の生と死もひとつのドラマであった。