「名言との対話」4月ーーー見田宗介から渡辺淳一までだれを選ぶか。

もうすぐ、春の桜の景色を楽しめる季節だ。

4月の「名言との対話」の候補者。愉しみだ。

見田宗介。大川ミサヲ。奥田耕己。三好徹。田村正和。国重淳史。橋田寿賀子相沢英之畑正憲白川義員曙太郎原田明夫京唄子ひろさちや。藤子不二夫A。宇田理。富岡多恵子ケーシー高峰植田康夫周富徳屋山太郎大林宣彦。樋口俊夫。モンキー・パンチ佐川満男吉武輝子小池滋村上和雄。トニ・ブザン。三国連太郎愛川欽也。山本正。三重野康柳生博。村田昭治。小池一夫。渡部晶一。吉武輝子?。島田陽子椎名武雄。田中カ子。米倉健司。竹内均。フジコヘミング。加瀬邦彦。江尻宏一郎。笠谷幸生岡本行夫田端義夫桂由美戸川昌子谷桃子。大原れいこ。朝丘雪路星野富弘。柳時機。牧伸二立花隆。竹内宏。渡辺淳一

「楽しい」と「愉しい」の違い?

楽しい:ウキウキとしたポジティブな状態。スポーツは楽しい。

愉しい:心が満たされている状態。穏やかで心地よい。読書は愉しい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

undefined

「名言との対話」3月21日 吉沢久子「歳をとって初めて出会う自分が面白くてたまらない」

吉沢久子(よしざわ ひさこ、1918年1月21日 - 2019年3月21日)は、日本の評論家・随筆家である。享年101。

15歳から働き始め、事務員、速記者などを経て、文芸評論家・古谷綱武の秘書を務める。その後、10歳年上の古谷と30歳で結婚。家庭生活での見聞や日常の暮らしの問題点、食文化などについて提案するようになり、家事評論家第一号として執筆や講演、ラジオ、テレビなどで活躍した。夫、姑と死別した後、66歳から一人暮らしを始め、35年後の101歳で大往生した「センテナリアン(100歳以上の長寿者)」である。

『101歳。ひとり暮らしの心得』(中公文庫)を読んだ。

この本には、夫や姑の影響が色濃く感じられる内容が多く登場する。1984年に没した夫の古谷綱武は、1936年から1978年まで間断なく著書を刊行し続けた文芸評論家で、テレビでもよく見かけたニュースキャスター・古谷綱正は弟である。

夫からは「人の欠点は、見えても見るな。いいところだけを見るようにしろ」「できる範囲でスポンサーになって、若い人から教えてもらおうという気持ちが大事なんだ」「美しいものを見逃すな」といった教えを受けた。夫は吉沢にとって、先生のような存在だったのだろう。

また、姑から学んだのは「おしゃれ」と「身だしなみ」だ。90歳を過ぎてもフォークとナイフを使い、ボリュームたっぷりのタンシチューを楽しむ姑の姿勢は、吉沢に多くの影響を与えた。「おしゃれ」はお出かけの時の格好、「身だしなみ」は日常生活でのきちんとした態度を指すという。吉沢久子は秘書時代に、文化学院、東京栄養学院、東京学院で学んだ経歴を持つ。これらを振り返ると、彼女は生涯にわたって学び続けた人だったことがわかる。

人生100年時代を迎え、高齢になった吉沢久子にはさらに多くのファンが付いた。その著作の量は圧倒的である。1953年、35歳の時から2018年、100歳の時まで、実に65年間にわたり著書を刊行し続けた。そして、100歳を迎えた2018年には、過去の著作の再編集も含むが、以下のように7冊もの本を出版している。
『春夏秋冬しあわせを呼ぶ生き方』(海竜社)、『今日を悔いなく幸せに』(中公文庫)、『100歳。今日も楽しい 達人吉沢久子』(主婦の友社)、『100歳のほんとうの幸福』(PHP研究所)、『100歳の100の知恵』(中央公論新社)、『吉沢久子100歳のおいしい台所』(集英社文庫)、『楽しく百歳、元気のコツ』(新日本出版社)。

66歳で一人暮らしを始めてから35年間の老後を生きた吉沢は、101歳で出版した著書の中で、生きがいは「日本人の生活史」について学び、それをまとめることだと語っている。彼女はいつまでもテーマを持ち続けていたのだ。

彼女の提案する「暮らし十訓」には「しないこと十訓」が挙げられている。
「愚痴は言わない。世間体は考えない。義理の付き合いはしない。人間関係は腹八分目。人と自分を比べない。相手に多くを望まない。悪口や噂話はしない。プライドを傷つけない。金銭の借り貸しはしない。人に口出しをしない。」
こうした十訓は、吉沢がいかに周囲に愛される老人であったかを物語っている。

夫・古谷綱武は晩年に「歳をとって初めて出会う自分が面白くてたまらない」と語っていたそうだ。吉沢も同じ心境だったのだろう。未知の世界を生きる「未知の自分」という存在を面白がりながら、彼女は人生を楽しんだのだ。