「友愛」って、「You & I」(ユー・アンド・アイ)のことでは?

9月号の「Voice」に鳩山由紀夫の「私の政治哲学」という論文が掲載されている。ニューヨークタイムスが「反米宣言」であるとしたというニュースが話題になったが、今回たまたま内容を読んでみたが、そういうトーンは全くなかった。

基本的には、政治哲学である「友愛」を詳しく説いた論文である。この言葉が今後さまざまな場面で使われることになるだろうから、本人の言葉を読んでみた。以下は、その要旨。

  • 「友愛」は、フランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」の博愛=フラタナティ(fraternite)のことを指す。
  • 鳩山一郎が「EUの父」クーデンホフ・カレルギーの著書を翻訳したとき、フラタナティを友愛と訳した。
  • カレルギー「友愛が伴わなければ、自由は無政府状態の混乱を招き、平等は暴政を招く」
  • 友愛は左右の全体主義との激しい戦いをさせる戦闘の理論だった。
  • 鳩山一郎は、社共両党と対抗し、吉田官僚政治を倒す、党人派鳩山政権を打ち立てる旗印として「友愛」を掲げた。
  • 自由は弱肉強食の放埒に陥りやすく、平等は悪平等に堕落しかねない。その両者のゆきすぎを克服するが友愛だ。
  • 「友愛」とは「君は君、我は我也、されど仲良き」(武者小路実篤)のような姿勢で臨むことだ。
  • 全体主義国家の終焉にあたり、「友愛」を「自立と共生の原理」ち再定義した。
  • 「友愛」は、現時点では、グローバル化する現代資本主義の行き過ぎを正し、伝統の中で培われていた国民経済との調整を目指す理念であるといえる。
  • 「小さな中央政府・国会と、大きな権限をもた効率的な地方政府」による「地方分権地域主権国家」の実現。
  • 「友愛主義の政治的必須条件は連邦組織であって、それは実に、個人から国家をつくり上げる有機的方法なのである。人間から宇宙に至る道は同心円を通じて導かれる。そなわち人間が家族をつくり、家族が自治体(コミューン)をつくり、自治体が郡(カントン)をつくり、郡が州(ステイト)をつくり、州が大陸をつくり、大陸が地球をつくり、地球が太陽系をつくり、」太陽系が宇宙をつくり出すのである」(クーデンホフ・カレルギー)
  • EUの掲げる「補完性の原理」に立脚した「地域主権国家」
  • アメリカと中国の狭間で、政治的経済的自立を維持し、国益を守っていく。
  • 新たな国際協力の枠組みの構築が必要。「アジア共通通貨」の実現で経済的統合をめざし、その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みの創出に努力していく。

85年前に「汎ヨーロッパ」という著書を刊行し汎ヨーロッパ運動の提唱者となったクーデンホフ・カレルギー、その著書を翻訳出版し「友愛」を掲げて党人派政権を樹立した鳩山一郎、この延長線上に鳩山由紀夫は「友愛」を現代にふさわしく衣替えした。

これで、鳩山さんのいう「友愛」を理解したが、さて、「友愛」を英語に直すとき、どういう言葉を使うのだろうか。国連での演説では「ユーアイ」と言っていたような気がするが、「君は君、我は我也、されど仲良き」という姿勢だとすれば、「You & I」というのはどうだろうか?