午後:上野。
- 国立西洋美術館の「松方コレクション展」。松方コレクションは3000点。フランスから買い戻した浮世絵8000点を加えると、1万点を超える規模。これは1916年から1927年までのわずか10年ほどの期間。作品160点と歴史資料。時代の波に翻弄された松方コレクションの100年におよぶ軌跡をたどる企画展。国立西洋美術館開館60周年記念企画。
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午前:総研:授業準備、講演準備など。八木哲郎さんから電話あり。
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「名言との対話」7月24日。犬養道子「自分のいらないものを人さまにあげても、差し上げたことにはならないのよ」
犬養 道子(いぬかい みちこ、1921年4月20日 - 2017年7月24日)は、日本の評論家で小説家である。クリスチャン。
犬養毅首相の孫。1948年渡米。その後ボストン、パリで哲学、聖書学を学ぶ。1952年ネーデルランド放送局客員。1957年に帰国しNHKのニュース解説員となる。1959年『婦人公論』誌の特派員として渡欧。1964年ハーバード大学ラドクリフ研究室の研究員となる。1986年犬養道子基金を設立。96歳で没。
私のブログの中で、犬養道子の名前が出てくる。
岩波文庫創刊80年記念の臨時増刊号「図書」は「私の三冊」がテーマで、興味を持って読んだ。岩波文庫のうち今日なお心に残る書物は何かを、書名と短評を各界の識者に問うた結果を並べた特集号である。232人が答えを寄せている。この時、犬養道子は『文学に現はれたる我が国民の思想の研究』を挙げていた。
NHKラジオアーカイブ「声でつづる昭和人物史」をよく聴いている。昭和を専門とする保阪正康が解説する番組だ。犬養毅の「新内閣の責務」という本人の肉声を聴いた。5・15事件の直前の覚悟を感じる演説だった。満州事変の解決と不況の克服を約束している。このため軍部からの暗殺も覚悟していたという犬養毅の淡々とした姿と、軍部による暗殺で「ほっとした」という家族の声も紹介されている。道子の家庭教師だった石井桃子は、すぐに駆けつけている。
多摩センターの多摩美術大学美術館で「没後50年 大拙と松ヶ岡文庫」展をみた。NHK「婦人の時間 この人この道」(1964年5月14日)という30分番組が放映されていた。94歳の鈴木大拙の語りをじっくりと聞くことができた。インタビュアーは、若き日の犬養道子だった。犬養道子のライフワークは「聖書研究」であり、『聖書を旅する』全10巻がある。宗教を論じる鈴木大拙のインタビュアーとして適任だったのだろう。
犬養道子はイエズス会の難民支援組織と連携しながら、息の長い難民支援事業を世界各地で展開した。難民を支援する場合、物が余っている平和な先進国で勝手に考えて、支援物資を送ることを戒めている。冒頭の言葉は、相手が求めているものをよく理解して援助を行うことの重要性を述べたものだ。国内の災害への援助の場合も、いまだに聞く言葉だ。これを機会に評価の高い犬養道子の『心の座標軸』を読むことにしたい。
出典『心豊かで生き方上手になる名言集』