昭和史研究家・保阪正康の「歴史探偵・半藤一利論」

f:id:k-hisatune:20210215053113j:image

文芸春秋』3月号。「芥川賞発表」と「コロナ第三波 失敗の本質」、そして「追悼 半藤一利」が掲載されています。歴史探偵・半藤は「文芸春秋」の編集長をつとめた人。『昭和史』はオーディオブックで聞きましたし、エピソード満載の『清張さんと司馬さん』なども楽しんだし、映画『日本の一番長い日』も見ています。

文藝春秋2021年3月号 (第164回芥川龍之介賞受賞作 宇佐見りん「推し、燃ゆ」 全文掲載)

「追悼!半藤一利」から。今日の状況への警鐘も。

保阪正康:9歳年下。徹底したリアリズム。証言の垂れ流しをするな。怒りをもって昭和史を検証した。イデオロギー色がなかった。陸海軍の上層部を取材、保坂は中佐以下を取材。嶋田繁太郎軍令部総長天皇に上奏する資料を部下に改ざんさせていた。証言の真贋を見極める眼。1割は事実をありのままに。1割は意図的に嘘をいう。8割は誇張と矮小化。瀬島隆三は意図的かつ巧妙に歪曲した論を吐く。人間観察力の勝負。真理は細部に宿る。玉音放送までにもっと大がかりなクーデター計画があった可能性。今の日本は歴史の教訓をまったく学んでいない。

磯田尚道:40歳年下。歴史とは人間学。歴史探偵(安吾から借り受け)。場合分けと説明。都合の良い自己欺瞞と危うい前提。

f:id:k-hisatune:20210215053116j:image

ーーーーーーーーーーー

渋沢栄一。NHK大河ドラマ『青天を衝け』が始まりました。「日本資本主義の父」と呼ばれていると知っていましたが、「日本経済の父」として紹介されているのには違和感。「日々に新たにして、また日に新たなりは面白い。。。。何でも日に新たの、心掛けが肝要である」。飛鳥山にできた大河ドラマ館、深谷市の記念館なども訪ずれたい。

ーーーーーーーーーーーーーー

「名言との対話」2月14日。岡野雅行「誰もやらない仕事と誰もやれない仕事しかやらない」

岡野雅行(おかの まさゆき、1933年(昭和8年)2月14日 - )は、日本の工業技術者、経営者。

1945年、向島更正国民学校初等科を卒業後、実父が創業した金型工場を手伝い始める。旧制中学校中退。20代の頃に父親に「夕方5時から翌朝の8時まで」工場を貸してくれるように頼み、昼間は工場の仕事を、夜の時間に自ら受注した仕事をこなしながら技術力を磨いた。

1972年に岡野金型製作所の2代目社長に就任して、社名を岡野工業と改める。以後金型生産のみから脱却しプレス加工へ進出、更には生産設備開発で自動化設備開発へと発展する。従業員は数名という少数精鋭の町工場だったが、高い技術カが日本、世界の大企業やNASAなどに注目され、製品が次々に採用された。

針穴の直径が0.08ミリという世界一細い「痛くない注射針」の量産化や、携帯電話の小型化に貢献した「リチウムイオン電池ケース」を開発し、「世界一の職人」「金型の魔術師」として知られる。その功績から2004年旭日雙光章を受章、2005年に第4回日本イノベーター大賞、ジャパンクール賞を受賞。2006年に岡野工業東京商工会議所主催の第4回勇気ある経営大賞の大賞を受賞する。著書20以上。

岡野は言葉がいいので講演も人気があった。以下、語録から。

・人生の目的を間違えちゃいかんよ。「お金持ちになること」「有名になること」「偉くなること」 この三つは人生の結果であって、これを目的にするととんでもないことになる。

・途中でやめちゃうからできないんだ。

・この世のことは、ほとんどこの世で解決できる。

・成功の可能性が6割あれば、たとえ難しくてもその仕事を受ける。

・一流に触れる事。そして感動する事。学ぶ事

・うちは小さいってのが武器なんだ。こんな威力がある武器を手放す気はさらさらない。

・何でも、あえて人がやらないことをやるように心がけないとつまらない。人にバカにされても、自分がいいと思ったことはやってみなきゃ。実際、目の付け所が良ければ、1+1が5になって返ってくる。

・別荘と愛人は持つな

・仕事で、間に人が入ったら利益は折半する

・社会に出たら、わざとはみ出して人のやらないことをやらなきゃ、成功なんてできっこない

・ツイてるヤツと付き合え。ツイてるヤツは努力している

・世の中でモノになりたいんだったら、人と違ったことをやれ

・一生安泰の仕事なんかない。3年を目安に見切り、新しい事に取り掛かる

・色々なことを経験して世渡りを恐れず、楽しむ力を身に付けること

・大きく稼ぎたいなら「仕事の腕を磨く」こと。そして、情報

・仕事の1番の決め手は、「情報」。それを持って来てくれるのは、人

・頭というのは無限なんだよ。これでいいということはないんだよ。人と違うことやっているんだからね、うちでしかできないことがあるんだから、それができていれば仕事はどんどん来るからね

・とくに仕事がなくても、話をしに行ったり、一杯奢ったりする。情報網はそうやって作るしかないんだよ

・俺の仕事の特徴は「誰もできない仕事ができる」ということにある

・こっちはバイキンだらけの中を生きてきてるんだ、免疫力がパンパじゃない

・隣がクラウンなら俺は戦車だっていう人間になれ

・あいつが来ると面白いよ。何かやってくれるよってってものを身につけることだ

・自分がとても純粋な気持ちでいると、変な人は近くに来ません 

冒頭の言葉の真意は、若き日に岡野雅行が自分に誓った言葉だ。「安すぎて誰もやらない仕事」「技術的に難しすぎて他の誰にもできない仕事」しかやらないが、真意である。

他のプレス屋が。安くて捨てたような仕事や、手を出さない難しい仕事だけ選んでやると決めたのである。「これなら、干そうにも干しようがないだろ。常識的なことだけやっていたら、とっくに潰されていたよ」は実感だろう。人がやらない仕事と人がやれない仕事にチャンスがある。